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2018年12月福島、避難指示解除された高線量地帯を歩く

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<続き>

国道114号より1本南の道を歩くことにしたのは、比較的交通量の多い道(といっても10分に1、2台)を避けたかったのと、加倉スクリーニング場の職員に好奇の目で見られるのを避けたかったから。あえてそこに向かって、そこで働く職員から話を聞くのもいいかと今は思う。

結果的に、ここを歩いたことによって、今の避難指示解除されたエリアの現実を知ることになった。

(加倉スクリーニング場が見える)

柿はあちこちで見た。本当にいい色をしている。しかし食べようとは思わない。残念だが。これは風評でもなんでもなく事実だ。このエリアの汚染は酷い。この写真の右側は小山になっている。

ふと手元の線量計に目をやると思わず仰け反った。画像では2.06μSv/hだが、見た瞬間は2.3マイクロを超えていた。
避難指示が解除された場所で。

左が駅方面。この先の小山の斜面は除染されていないと思われる。だからこの道は線量が高い(山から降りてくる)。

(あの山々は帰還困難区域だったはずだ。綺麗な風景だが実態は汚染されている)

見ての通り、家がある。しかしここは、常に1マイクロ以上の空間線量がある(震災前の25倍以上)。

避難指示解除の基準は、毎時3.8μSvとなっている。1日8時間外出し、16時間家の中で暮らしたとして、それで年間20mSvは超えないという計算だ。除染などに関わる作業員が線量計を身につけて被曝量を管理しなければならない基準は、毎時2.5μSv以上と法律で決められている。それに従うならば、3.8μSvで避難指示解除されてしまった土地の住民は、全員が線量計を身につけて管理しなければならない。しかし線量計を身につけて歩いている住民など1人もいない。

富岡や浪江を歩いていると、とにかく頭が混乱する。人体実験が行われているとしか考えられない。

(どこもかしこもいずれは解体されるのだろうか)

浪江中学まで来た。この辺まで来ると空間線量は0.5μSv/h程度まで下がる。
この少し手前でマスクをしたおばあさんとすれ違った。どこの家に戻ったのだろう。放射線管理区域よりもはるかに汚染された家で、しかしあのおばあさんはふるさとを選んだ。

前回エアーカウンターSで1.4μSv/hを出した正門前のホットスポットへ。このあと1.6μSv/hまで上がった。

(まだ時間は15時だが、この季節の昼は短い。既に夕焼け)

この辺りで家から犬の散歩に出かける家族を見かけた。子供もいる。空間線量は0.2〜0.6μSv/hで推移していた。昼に駅前で行われていたイベントに合わせて一時帰宅したのか、ここに帰還したのか、どちらかはわからない。
富岡では復興公営住宅が建ち、そこに帰還者とともに移住者も入居している。さくらモールとみおかでは、幼児を連れた若いお母さんを見かけることも多い。しかし浪江で、帰還あるいは移住したと思われる子供を見たことは、僕は一度もない。

(駅到着。昼に行われていたイベントは既に終わっていた。旗が虚しい)

富岡行きの代行バスが出る1時間以上も前に着いてしまい、カフェであったまりたかったが、中は浪江の人たちで溢れており、つい気後れしてしまう。

ここでふと、これまで浪江に来た時と風景が違うことに気付いた。

<続く>

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