腰痛改善サービスのリスク

腰痛改善を謳うサービスは多いですが、落とし穴があります。

腰が痛いのと内臓の痛みの区別がつかず、治療が遅れたり死んだりするからです。

具体的な事例をもとに解説します。

基本的に医師以外が医療行為をすると違法です(治療したりとか)。

最近はなんだかよくわからない雑居ビルのマッサージ店やリラクゼーション、パーソナルトレーニングジムまで腰痛改善を謳っているところがあるようです。

接骨院でも謳っていますが、国家資格である柔道整復師も筋骨格系の痛みならなんでもやっていいわけではありません。

柔道整復師が医師の指示なしで行えるのは捻挫と打撲という明らかに受傷機転がわかっている場合で、骨折や脱臼に関しては、応急処置を除き、医師の指示が必要です。

指示が必要ですが、実際に指示を出したという整形外科医に話を聞いたことがありません。本当はどうなんでしょう。

これらのサービスは、筋肉や筋膜や靭帯や骨のように、筋骨格系と呼ばれる腰痛であることが前提となっています。

落とし穴があるのはここです。

この連中は、腰痛のように感じるやばい病気があることを知らないでやっています。(なぜ教科書を読まないのでしょうか、訴えられたらどうするんでしょうかね。)

例えば以前こんな患者さんを経験しました。高齢の男性ですが、腹部の動脈の一つの総腸骨動脈にコブができて、そこが感染しているという状態でした。(感染性総腸骨動脈瘤)動脈壁が感染で破壊される痛みだったんですね。本人は腰痛で病院きましたが、主治医もまさか動脈の病気とは思わなかったようです。

関連痛といって、動脈の痛みと腰の痛みを同じように感じることがあります。痛覚の神経の経路が同じ箇所を通っているからです。

これを治療するには、抗菌薬と手術が必要です。痛みが出てるってことは動脈の壁が破壊されつつある可能性が高いです。ほっとくと、破裂して死亡する可能性があります。

こういう例が腰痛をみているといくつか混じります。
ストレッチや筋トレして治るわけがありませんが、それを筋骨格系の腰痛と言い切ってしまうところに問題があります。

関連痛のこともあり、精密検査をしないとわからないのです。

だから、病院に行かずに雑居ビルの一室で、腰痛を治すのはリスクがあります。

そもそも、痛みを治したいと思ったら、何も考えずに治す技術を得ようというマインドセットがイカれてます。

痛みはどのように起こるのか、
痛みとはそもそもなにか、
痛みの原因は確実に突き止められるものなのか、
もし突き止められなかったらどうするのか
痛みを見極められるようになるにはどれくらいの経験が必要なのか
それはどこに行けば経験できるのか

こういった無数の疑問が湧いてくるはずですが、
自転車のパンクを治すみたいに、治し方(と呼ばれるもの)をやればできると思ってしまうのでしょう。

お客さんは施術者に気を遣いますから、
「どうですか?」「治りました!」みたいな会話をそのまま受け止めてしまうんじゃないでしょうか。

病院に行って別な病気がないとわかったあとに、各々好きにすればいいと思います。

一方で、全てが金儲けで腰痛を治したいという動機が連中にないかというと、僕は否定できないと思います。

なぜこういうリスクのあるサービスが出回っているかというと、医療機関に腰痛を治すやる気が感じられないことが多いからではないでしょうか。

腰痛は整形外科に行くと、痛み止めと牽引の通院を勧められるか、リハビリをしたり、手術をしたりすることになると思いますが、
これもよく紐解くと、

サブスクリプションといえる通院、理論も何もないリハビリ、効果の不確かな手術と思っていて、あんまり信用していないという市井のかたの話を耳にすることも少なくありません。

僕が実際聞いた話では、
患者「手術しても腰痛が治らないです」
医者「今手術室のスケジュール空いているからもう一回手術してみる?」
という会話があり、開いた口が塞がらなかったと言います(看護師談)
こんな体たらくなので、病院に行ってもやることは同じだし、それなら民間療法に頼りたいとなるのは自然です。

腰痛は原因がわからない場合も多いですが、おそらく生活様式の詳細な聴取や、細かい癒着(筋肉や膜のひっつき)があったりで、熟練したセラピストなどによる丁寧な触診が必要で、姿勢や座位による何十年も蓄積され器質的になっている変性(ガチガチに固まってしまった感じ)を矯正する困難さ、筋骨格系の腰痛自体は致死的でないことから、コスト的にも積極的でないと思います。

となるとどっちもどっちという感じがします。

以下機能性腰痛のケースですが、
腰痛改善サービスの人たちは病院に行っても治らないといい、
病院では腰痛改善サービスは医療ではないといい、
困っている人はそこでたらい回しにされて途方に暮れているという構図なのでしょう。

でも、自分自身に原因はなかったのでしょうか、全く体を動かさず、自分の心地いいことだけ美味しいものだけ食べていて、座ってばかりの生活を何十年も続けていたのはだれでしょうか。

いよいよ体にガタが来て、治して欲しいと思っても、サービスや医療を提供している人も、所詮は他人ごとで、自分のために何かしてくれるわけではないことに気づくのかもしれません。