「求める学生像」のホンネが書かれている場所とは?
❖アドミッションポリシーは建前,ホンネは・・・
前回の記事で大学のアドミッションポリシーについて書きましたが,実のところ,本当の「大学の理念」や「求める学生像」は,大学の公式ウェブサイトには載っていません。ではどこに?
入試問題が雄弁に語っています。饒舌すぎるほどに。
たとえば首都圏にあるZ大学(名前を聞けばほぼ全員知っている)の【日本史B】の入試問題(2022年度)を見てみましょう。
❖ホントだ~,ちゃんと書いてある!!
以下は大問のリード文です(アルファベットの空欄は漢字で解答)。
これのどこが「求める学生像?」と思われるかもしれませんが,次に引用した教科書の記述と見比べてください。
「似てる」どころの次元ではありません。ただ,たまたま何万分の一かの確率で文章が酷似してしまった可能性がないとは言えませんので、もう少しだけ続けて比較します。
もう明白です。教科書記述をほぼそのままパクっています。文末に付け足した「なお【 C 】は,戦国期,一向宗寺院・道場を中心に形成された」は教科書記述にはありませんが,用語集にこうあります。
つまりどういうことかと言うと,これぞまさに超具体的な「求める学生像」なのです。早い話が「日本史は山川の教科書と用語集で学習して来い」と。
❖大学にお願いしたい2つのこと
ある意味,清々しいほどのパクリです。
誤解してほしくないのですが,私はこの件でZ大学を批判するつもりは全くありません。教科書の記述(日本史に限らず)を入試問題のリード文として使う,もしくはパッチワーク的につなぐだけの大学は,「難関校」と呼ばれるところも含めて,私の知る限りかなり存在しています。
もちろん,理由があってのことでしょうし,ある程度はやむを得ないとも考えています。ただ,こうした大学に2つだけお願いしたいことがあります。いずれも簡単なこと,すぐにできることです。
《お願い1》アドミッションポリシーに明記してください
前述した入試問題のように,特定の教科書の記述をほぼリード文に使うのであれば、その旨をアドミッションポリシーに明記してください。
たとえば次のように。
そうでないと,入学者選抜における公平性を担保できません。
特に,山川出版社の『詳説日本史B』や『詳説世界史B』は他社の教科書に比べて用語の網羅性が高く,山川にしか記述されていない用語がたくさんあります。そんな用語を問われたら,他社の教科書を採択している高校の生徒が著しく不利になるのは明らかです。
《お願い2》すべての教科書に目を通して作問してください
「お願い1」ができないのであれば,せめて他社のすべての教科書に目を通し,どの教科書にも記載されていることを問うてください。これも「公平性の担保」のためには当然のことだと思います。
私からのお願いは以上です。
❖受験生は過去問研究で志望校を丸裸にしよう!
受験生にとって,志望校の過去問は志望校突破のための最良の教材であり,過去問を本番直前の「力だめし」のためだけに使うのは,あまりにも勿体ないというか,宝の持ち腐れです。
入試問題を分析すれば、その大学が教科書のどのあたりのレベルのことを,どういう形式で問うているのかが一目瞭然です。
たとえば日本史や世界史では,
・太字よりもむしろその前後の記述に下線が引かれやすい。
・教科書欄外の注釈や用語集もしっかり見ておく必要がある。
・事件の背景や因果関係,意義などを60字程度で記述させられる。
・・・・・・等々。
設問で問われている用語や記述が,教科書のどこに書かれているかを見つけてラインマーカーで色を付けていくと,その大学独自の出題傾向,いわゆる「ヤマ」が視覚的に見えてきます。
陽菜:あ、なるほど~。こういう部分が狙われやすいのね。
大輝:だったら,それに合わせて勉強法を変えればいいんだ!
そう,それができる受験生こそ,その大学が「本当に求めている学生像」に他ならないのです。
以上は和田秀樹著『赤本の使い方』(ブックマン社)に書いてあることの受け売りです。「受け売り」と正直に書いたからにはパクリではありませんので,そのあたりのことは,どうかご理解を賜りたく 。