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虹乃ノラン
2024年5月14日 02:07
第一章駁論(1) 黒いアスファルトにこびりつく、汚いガムさえ流し落とすような大雨の降るある夜に、俺にこんな言葉をくれた奴がいる。「悪夢を食べると言われる獏って生物を知ってるだろ。俺たちの仕事は、獏みたいなもんだ」 毎日、毎日人間どもの欲望の抜け殻を拾っては集め、そして金を貰い、俺たちは生きている。「キツイ」「キタナイ」「クサイ」 昔、3Kなんて言葉があったが、考えてみれば、地球上で幸せ
2024年5月16日 21:37
駁論(2) 俺らは電話を繋ぎっぱなしで作業することが多い。 ワイヤレスのイヤホンを使い、通話状態のまま作業する。今ではスマホも便利になって、複数通話が可能だろう? あの機能はきっと俺たちみたいなさみしがり屋のためにある機能なんだと俺は思う。「あぁっ、クソ! こんなところにコンビニ建ててやがる!」 俺のイヤホンからよく声の通る男が呟いた。 こいつは『ジャスティス』。正義感が強いって意味
2024年6月2日 19:53
駁論(3) 俺たちはこうして複数通話をしながら退屈をやり過ごしている。 幸いにも五人の勤務時間はだいたい同じ深夜だからだ。 だが以前の俺たちは、電話をするような仲じゃなかった。回収中に繋ぎっぱなしでイヤホン通話するなんてもっての他。こうして結束するに至ったのは理由がある。 どこの組織にもいるだろうが、『吊るし上げられる者』の存在だ。共通の敵と言ってもいい。俺たちに関して言えば、それは会社
2024年6月12日 10:35
第二章莫迦(1) 翌日、といっても日付は変わらない深夜、俺はパッカー車に乗り込んでエンジンを掛ける。こんな真夜中から仕事を始めるなんて、ゴキブリかコウモリか強盗くらいのもんだ。 強盗で思い出した。――俺たちの回収先はそのほとんどがコンビニだったりする訳だが、店舗によっては〝ゴミ庫〟と呼ばれるコンテナに御丁寧にも鍵をかけ、わざわざ店内で鍵を借りさせる店がある。 パッカーを停める、鍵を借り