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作品をわかりやすくするには

引き続き、大学で創作の講義中です。

「ちゃんと設定を考えましょう」と言い過ぎたせいか、かなり難しい設定の話をちらほら見かけます。

今回は作品をわかりやすくしようという話です。



難しい話とは

世界や登場人物の設定を考えていると、だんだん複雑になり、気がつくと、かなり難しい話になってしまうことがあります。

ごく単純に言って、読者は難しい話を好みません。

読むのに苦労するからです。


ところが、作者の中では明快に理屈が通っているので、「そこまで難しくないはず」と思っていることが多いのですね。

すると「これだけ説明してるのにどうしてわからないんだ!」と作品の難しさは棚に上げ、読者の理解力のせいにするといったことが起こります。

生徒さんの中にも、こういった(独りよがりな)不満を抱えている人がいたようです。


ここで、難しい話とは何なのか、改めてわかっておきましょう。

難しい話とは、

  • 理解するためのコストが高い話

です。


コストというのは労力と言ってもいいですし、エネルギーと言ってもいいでしょう。

コスト(労力、エネルギー)を掛けないと理解できない話というのは、要するに、読みにくい話です。


読者にコストを負担してもらうなら、作者はより多くのベネフィット(利益)を読者に与える必要がありますが、今回はコストを下げることだけを考えてみましょう。

  • 理解のコストを下げる = わかりやすくする

ということですね。


単純に言うと、理解のコストを下げるには以下をすればいいです。

  1. 情報量を少なくする

  2. 伝え方を適切にする


それぞれ簡単に見ていきましょう。


1.情報量を少なくする

1つ目は情報量を少なくすることです。

わかると思いますが、図にするとこうですね。

情報量の大小


理解するというのは、情報の山を登ることだと考えればいいです。

情報量が大きければ大きいほど、山は高くなり、登るのに苦労します。

一方、情報量が小さければ小さいほど、山は低くなり、簡単に登れるようになります。

ですから、そもそも設定を複雑にしなければ、情報量は小さくて済み、わかりやすい話になるわけですね。


とは言え、そこまで情報量を少なくできない場合もあるでしょう。

その場合は、次の2を考えます。


2.伝え方を適切にする

2つ目は伝え方を適切にすることです。

伝えるとは何かというと、これも図にするとわかりやすいでしょう。

伝える=階段をつくる


伝えるとは、情報の山に登りやすくするために階段を作ることです。

階段を作っていないなら、そもそも伝えようとしていません。

左のような状態で「理解しろ(登れ)」と言っても無茶なことがわかるでしょう。


一方、適切に階段を作れば、右のように、読者は楽に情報の山を登れます。

物語を理解するには、前提となる知識(情報)がどうしても必要ですから、情報の山は必ずできます。

ですから、常に階段を作って、読者が楽に登れるよう配慮しなければなりません。


ところで、階段を作る際は、次の2つを適宜調整する必要があります。

  1. 情報のサイズ

  2. 提示のタイミング


1.情報のサイズ

情報のサイズは、階段で言うと段差です。

どれくらい情報を小分けにするか、ということですね。


これが大きすぎれば(段差がありすぎれば)、読者は階段を登るに苦労します。

ですが、小さすぎると、物語がどんどん長くなることがわかるでしょう。

段差を小さくすれば、階段自体(物語)を長くするしかないからです。


ですから、ここは、想定読者の多くが登れる段差(情報のサイズ)を見極める必要が出てきます。


2.提示のタイミング

提示のタイミングは、階段で言うと一段の長さです。

情報をいつ提示するか、ということですね。


情報提示の間隔を長く取り過ぎれば、階段は長くなり、物語も長くなります。

一方、提示の間隔が短すぎれば、階段が急になることがわかるでしょう。

階段が急すぎれば、読者は登るのに苦労します。


ですから、ここでも、適切なタイミングに調整することが望まれるわけです。


情報量と伝え方

情報量を少なくしたい場合は、こう考えるといいです。

物語は基本的に、

  1. 設定、アイデア

  2. ストーリー

  3. 登場人物

  4. 表現(小説なら文章、マンガなら絵、映画なら映像)

くらいの要素で成立しています。


これらの要素のどこかを複雑にするなら、別の要素は単純にすると考えるとバランスをとりやすくなります。

トータルで複雑度を下げるわけですね。

ストーリーが複雑なら、登場人物は少なくするとか、表現をシンプルにするなどするといいです。


すべてが複雑だと、かなり読者を選ぶ作品になってしまいます。

それも戦略の一つかもしれませんが、初心者なら、まずは総合的に複雑度を下げた方が無難でしょう。


また、伝え方に関しては、サイズとタイミングは可変なので、細かい調整も可能です。

多くの情報を伝えたら、しばらくは新情報を出さずに話を進め、落ち着いたところでまた情報を与える、など工夫すると読者に負担が掛かりません。


ちょっと高度な話ではありますが、読者を必要以上に疲れさせないよう、休ませながら物語を進めるのがベターです。

長編は特に疲れますから、読者の疲労度も考えてあげると、より読みやすい話になります。


今回のまとめ

「作品をわかりやすくするには」でした。

  1. 難しい話 = 理解するコストが高い話

  2. コストを下げるには

    1. 情報量を少なくする

    2. 伝え方を適切にする

  3. 情報量を少なくする場合は、トータルで複雑度を下げることを考える

  4. 伝え方を適切にするには以下を調整する必要がある

    1. 情報のサイズ

    2. 提示のタイミング

初心者のころは書くだけで精一杯でしょうが、少し慣れたら、読者に配慮してあげましょう。

読者が読んでくれなければ、作品は存在しません。

ですので、常に読者に親切にすることが重要なのです。

それではまたべあー。

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