いちばんたいせつなことは、目に見えない、とキツネが言いましたが、ドーナツの穴も、そうなのかもしれません。
村上春樹さんの小説には、ドーナツの穴が重要な役割を持っているような気がします。
それは「羊」であったり、「いるかホテル」であったり、「戦前の満州」であり、「昭和十四年のノモンハンでの戦争」であったり、「井戸の底」であり、「図書館」でもあります。
ひとそれぞれに、ドーナツの穴があるのではないでしょうか。
村上春樹さんの小説の中の「ドーナツ」を探してみました。
羊をめぐる冒険
「僕」が製作したコピーに使われた「羊」の写真に対しての理不尽な成り行きについてウィスキーを飲みながら考え、羊を数えます。
羊男のクリスマス
ドーナツ・ショップで働いている羊男が、聖羊祭日にドーナツを食べた呪いをとくために、穴に落ちます。
ここにも「穴」があり、理不尽なことに巻き込まれます。
不思議な図書館
「ぼく」が、図書館の地下牢に閉じ込められてしまいます。「ぼく」にドーナツを持ってきてくれたのが羊男です。羊男が作った揚げたての『かりっとして中身がとろけるようにやわらかい、ほんとうにおいしいドーナッツ』です。
恐ろしい目にあいますが、おいしいドーナツがあったり守ってくれるものもあります。
ダンス・ダンス・ダンス
札幌の新・いるかホテルに滞在中にダンキン・ドーナツに通い、羊男に会い五反田くんの映画を観ます。
繋がってて、結び目で。
渋谷のダンキン・ドーナツ。ダンキン・ドーナツが4回も!
ねじまき鳥クロニクル
新宿西口で、何日も何時間もただ通り過ぎていく人々の顔をじっと見て、やがて赤坂ナツメグに出会います。
輪の中心。ドーナツの穴。
周りは繋がっていて、くっついているのに、真ん中はあるのに見えない。
ドーナツの穴は、どこか違う世界の入り口なのかもしれません。
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ドーナツ、作ってみました。ホットケーキミックスで、ミスタードーナツのさくさくのオールドファッションを目指しました。
さくさくで、美味しくできました!
村上春樹さんの小説のように、理不尽なことがあっても、穴が無でも存在していても、ドーナツの味は変わらないし、おいしものはおいしい。
カミーノさん、hikariさん、Kikkoさんのドーナツの記事からのオマージュです。
ドーナツの輪。つながってる。