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紙の本はうつくしくやさしい

好きな本はたくさんあるけど、それを書いた人がどういう人か知りません。会ったこと、話したこともないし、会いたい話したいとは思わない。読みたいだけ。書いたその人を好きなわけでなく、書いたその物語の世界が好き。

書いた人と、その本とは別で。
いいものを書くからその人がいい人だとは限らない。

その人が透きとおっているわけではない。
『世界でいちばん透きとおった物語』というタイトルの本を書くような大御所のミステリ作家でも。

世界でいちばん透きとおった物語 杉井 光

大御所ミステリ作家の宮内彰吾が死去した。宮内は妻帯者ながら多くの女性と交際し、そのうちの一人と子供までつくっていた。それが僕だ。「親父が『世界でいちばん透きとおった物語』という小説を死ぬ間際に書いていたらしい。何か知らないか」宮内の長男からの連絡をきっかけに始まった遺稿探し。編集者の霧子さんの助言をもとに調べるのだが――。予測不能の結末が待つ、衝撃の物語。

新潮文庫

電子書籍化不可能 紙の本でしか読めない、ネタバレ厳禁と話題の本で気にはなっていて、noteでもこの本を紹介されている方々がいらっしゃいました。おふたりとも読んでみたいと思わせる文章で透きとおった世界に導かれました。

おふたりが書かれているように、この本を語るのは難しいです。

くなんくなんさんも書かれてましたが、この小説の中の大御所ミステリ作家は、親として、夫として、男としてはサイテーの人だけど、書くものは素晴らしいという方で。

『世界でいちばん透きとおった物語』というタイトルは、その大御所の幻の遺作なのに、人物像とはそぐわない。

大御所先生、全然透きとおってないぢゃん。

だけど、えっ?えっ?えーっ!!
透きとおってる?
だんだん透きとおってくるから不思議。

世界が透きとおっていると、うつくしくやさしくなれるのに。

紙の本はうつくしくやさしいと思いました。