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嫉妬と偏見

若い頃の恋愛は、嫉妬して泣いたり喚いたり、喧嘩したりとエネルギーに満ちていた。いつから嫉妬しなくなったんだろう。自分に自信ができたというわけでもない。もう若くない、ということだろうか。

嫉妬は、恋愛だけではない。他者が自分より輝いていたり成功したり、能力が優れていたり、仕事ができたり、幸せだったり。

嫉妬に狂う双子の兄弟の兄と、その弟と、偏見と戦う少女の物語です。

愛の妖精(プチット・ファデット) ジョルジュ・サンド

フランス中部の農村地帯ベリー州を背景に、野性の少女ファデットが恋にみちびかれて真の女へと変貌をとげてゆく。ふたごの兄弟との愛の葛藤を配した心憎いばかりにこまやかな恋愛描写は、清新な自然描写とあいまって、これをサンド(1804‐1876)の田園小説のうちで屈指の秀作としている。

岩波文庫

双子の兄のシルヴィネは、弟のランドリーへの愛情が強く、ランドリーが自分だけを見てくれないと嫉妬してしまいます。

その兄弟の中にファデットが入り込みます。村の人々は、ファデットの家に偏見を持ってます。貧しく、みっともない、評判の良くない女の子。

ファデットとは、「鬼っこ」「悪魔の子」「鬼火」そして「妖精」という意味があり、そのファデットがランドリーとの恋で、美しく変貌していきます。この変貌のさまが小気味良く、ある意味シンデレラストーリー的でもあります。

だけど変貌は魔法ではなく、ファデットの知恵と勇気と努力です。自分自身で変わることもできるし、見方を変え話してみれば偏見はなくなります。偏見と戦うファデットは、まさに鬼っ子であり妖精でもあり魅力的です。

嫉妬するのは、愛情が強すぎるから。エネルギーがあるから。そのエネルギーが違う方向にいったとき。

勇ましいのですが、せつなくなります。


多くの男性と恋人関係があったジョルジュ・サンド。ショパン、リスト、アルフレッド・ミュッセ等と名高い恋人たち、華麗なる男性遍歴に、男装の麗人と、派手な浮名があるけど、野生的で、のびやかな田舎で農家のおかみさん、農家の人と暮らしと牧歌的でもあります。

サンドがショパンと過ごしたマヨルカ島に行ったことがあり、この小説は何度も読んでます。

174年前に描かれた小説の中から、現代もある嫉妬や偏見をくみとることができるのが、読書のおもしろいところだと思います。

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