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モヤモヤとスカッ 綿矢りさ「インストール」

「あんた、私のこともインストールしてくれるつもりなの?」
綿矢りさ「インストール」(河出書房新社、2005年)
斬新かつ強烈なストーリーと、高校生のモヤモヤを鮮やかに斬っていく、爽快感に溢れた作品でした!!!


あらすじ
主人公は、母親との関係や将来に不満気味な高校生。ある日、思いついたのは、部屋の家具を全部捨てること。ゴミ捨て場で、同じマンションの少年と出会い、一緒に風俗チャットのアルバイトをすることになって…


女子高生と、小学生の少年と風俗チャットという設定自体の面白さはもちろん、高校生の独特の空気感や平日の昼の空気感がとっても素敵な作品でした。最後には「インストール」という意味も腑に落ちて、一気読みしました。

綿矢さんの他の作品、「ひらいて」の時にも思ったんですが、高校生特有の何かしても取り返せるっていう解放感と、それでいてお互いを牽制し合う閉塞感。
小中学生とはちがって現実も見えている。そんな空気感と感情をこんなにも鮮やかに・的確に書けるのか、と圧倒されました。


そして、何よりも言葉に痺れる……。

「バカだねみんなと同じ生活が嫌なんて一体自分をどれだけ特別だと思って得るんだ努力もせずそんな時間だけ惜しんで、大体あんたにゃ人生の目標がない、だからそううだうだと他の何百人もの人間が乗り越えてきた基本的でありきたりな悩みをひきずってんのさ。」

(p.10)

媚としての不器用は軽い笑いを誘う可愛いものだけれど、本当の不器用は、愛嬌がなく、みじめに泥臭く、見ている方の人間をぎゅっと真面目にさせるから。

(p.44)

なんだか、痛いところを突かれたようなそれでいて、ここまで言い切られるとスッキリするような、そんな感覚になりました。人の心やうっすらとどこかで思っていたことを、鮮やかに言語化していて、すごいなーって単純に思いました。

ストーリーはもちろん、こういう言葉たちにぐいぐいと惹きつけられて、一気に読み切りました。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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