日常の音のかけら
ほのかに明るくなっていく夜明けを、ガラス窓から眺めていた。
一晩中つけておいた明かりを消し
朝起きてからの「おはよう」を言う。
出掛ける時の車の出発音。
帰宅してからの「ただいま」と「おかえり」。
コンビニに向かう足どりの音。
家の扉を閉める音。
テーブルでの「いただきます」と「ご馳走様」。
コーヒーを作る時のポットの音。
布団に入ってからその日一日の最後に聴く声。
全ての音と動きが一つ一つ、ゆっくりと馴染んで
耳に入っていく。
何のわだかまりの無い心の状態で、静かな水を
すくう感覚だ。
静まり返った部屋で、いつかその日常の音の
かけらを拾い集めてみたい。
遠くにただよいながら、そのかけらに溺れて
ゆったりとした時間が欲しいと願う。
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