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こんな気持ちでマックを食べた奴はムッタと私ぐらい

 小学生4年生の頃、よくある大人の事情により児童養護施設に行く事になった。兄弟3人で。
 真っ黒のスーツを着て怖い顔をした、50代ぐらいの男性が運転する車に乗せられた。
多分児童相談員の方と思うが、もの凄く素っ気なかった。
 しかしあの時の私は細い橋の上を進まないといけないのに、左右に体を揺らしバランスを取ることでいっぱいいっぱい。つまりギリギリな心で窓の外の景色を眺めていた。同情で優しくされようものなら泣き叫んでいただろう。

 車で1時間程走り、「昼休憩をしよう。このお金で好きなものを買って来なさい」と財布を渡された。
着いた場所はマクドナルド。
え、財布を渡すって不用心じゃないか?
まず私が思った事はそれだった。立派に疑心暗鬼な子どもが完成していた。
 テリヤキバーガーを頼んだ。
何年振りかの外食。
食べたい物を選ぶのもいつぶりだったか。
その時、悲しみだけに覆われていた私の心に自由が追加された。
大人が喜ぶ正解な選択を考えず、周りの目も気にせず選べた事が久しぶりで久しぶりで。
注文したものを待っている間、頭が妙にすーっとして周りが青暗く見えた。まるで映画の中にいるような不思議な感覚だった。

 車へ戻り窓の外をぼーっと眺めながらテリヤキバーガーを食べた。
「これから私の人生はどうなるのだろうか」
「私は無力な人間なんだ」
そう思いながらもテリヤキバーガーは死ぬほど美味しくて涙が出た。
どんどんどんどん口に入れて、紙に残ったタレもフライドポテトでディップして全て食べた。
 なんだかよく分からないが食べ終わった後、細い橋を私は進み始めれた気がした。

 自分のこれからの人生に思い巡らし、涙滲ませながらハンバーガーを食べていた人が他にもいた。
 宇宙兄弟に出てくる主人公の南波六太(ムッタ)
大人になりアニメでこの映像を見た時、私の記憶がフラッシュバックされた。
ムッタは私の大好きな人物だ。
 人は涙を流しながら食べる時、口いっぱいに詰め込みながら咀嚼する。
あの時の私と私の心にそっくりだ。
今となっては少し笑えて、いい思い出だ。
食べるという行為自体に、何か一歩前に足を踏み出せたり振り切れたり切り替えれたりといったパワーがあるのかもしれない。

たまに夫に言われます
「いいから食べろ」

#元気をもらったあの食事

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