見出し画像

保育園看護師のお仕事紹介シリーズ ②「保健日誌」

こんにちは!現役保育園看護師のチロです。

保育園看護師の仕事の楽しさや専門性を発信していく『保育園看護師のお仕事紹介シリーズ』

第2弾は、「保健日誌」について解説します!

ちなみに、第1弾は「ラウンド」について解説しています。ぜひチェックしてみて下さい!


「保健日誌」は、監査(一般指導検査)で必要となる記録のうちの一つです。認可保育所であれば必ず作成しています。看護師が配置されている園であれば、主に看護師が記録を担当していると思います。

ちなみに監査(一般指導検査)は、認可保育所であれば「認可の基準を満たしているかどうか」を区や都の担当者が定期的にチェックにくるイベントです。監査前は、必要な記録をすべてそろえるためにしばらくの間職員が地獄絵図のようになりながら働きます。

「保健日誌」には特定のフォーマットがあるわけではないため、各園独自の書式で書いているケースが多いです。これから紹介する保健日誌の内容や書き方についても、これが正解というわけではありません。しかし、以前受けた監査にて「丁寧によく書けている」と評価された内容ですので、ぜひ参考にしてみて下さい!


保健日誌の内容

「保健日誌」は、クラス毎の保育記録とは異なり、園児のケガや体調不良時の経過と対応等に特化した記録です。

保育記録に記載する内容と重なる部分もありますが、保健の記録としてまとめて記載することで、園全体の感染症流行状況やケガの発生数、園児1人1人の体調の経過等が分かりやすくなります

「保健日誌」に記載する項目は、大きく分けると下記の7つです。

  • 日付

  • 天候(天気・気温・湿度)

  • 記録者

  • 特記事項(保健に関する特記やケガの対応や通院の記録等)

  • 病欠児の情報

  • 出席人数

  • クラス毎に体調不良、ケガ等の個別記録

各項目について、簡単に解説します。

日付

年月日と曜日を記載します。保健日誌は日ごとに記録をまとめるため、基本的には開園日の日数分作成する必要があります。

天候(天気・気温・湿度)

記録日の天候を記載します。気温と湿度は、毎日決まった場所で測定しています。また、自園では熱中症リスクが高いシーズンには暑さ指数計を用いて暑さ指数(WBGT値)を計測し、その数値と対策についてを特記しています。

記録者

記録を作成した人の名前を記載します。保健日誌を作成するために特別な資格は必要ありませんが、多くの園では主に看護師が担当しているかと思います。看護師不在の園では主任や保健担当の職員が記録するケースもあります。

特記事項

記録日に特記事項がある場合は記載します。特記する内容は、通院を伴う事故発生時の経過や通院に関する詳細な記録(別途事故報告書も作成します)、感染症流行時の対応(消毒薬の濃度を切り替える等)、健康教育や乳児健診など保健看護に関するトピックスを幅広く記載する箇所です。

病欠児の情報

病欠している児の理由や経過、人数を記載します。保健日誌内でクラス毎に記録をまとめているケースもありますが、病欠児のみをピックアップして別枠で記載しておくことで、感染症の流行状況が視覚的に分かりやすくなるメリットがあると思っています。特に、感染症流行初期のタイミング(病欠人数が微増してきたり、地域で流行している感染症と類似した症状で欠席する児が出てくるなど)で違和感に気づくことができると、早期に園内の感染症対策を強化することにつながります。保健日誌を効果的に活用するためには必要不可欠な項目です。

出席人数

記録日の出席人数を記載します。昨今、園バスでの置き去り事件や家庭内虐待による死亡事故など、乳幼児に関する切ないニュースを目にする機会が増えています。保育所は乳幼児の命をお預かりする場所であり、保育者には乳幼児の命を守る責務があります。保護者から事前にお休みの連絡がなくて登園していない場合は、安否確認の意味も込めて保護者に連絡して登園の有無を確認しています。保健日誌に出席人数を記載することは、全園児の安否を確認するためのダブルチェック機能を果たしているのです。

クラス毎に体調不良・ケガ等の個別記録

保健日誌のメイン作業が、体調不良児の情報やケガの対応等について記載することです。主にクラス毎にまとめて記載しています。一般的な看護記録とは異なりますが、ケガの経過を簡潔に記録したり、アセスメントした情報をまとめたりする作業には共通点があるかと思います。「ラウンド」でキャッチした情報をまとめたり、都度発生するケガや体調不良児への対応を記載するため、単純に人数が多い園の方が記録量が多くなります。

保健日誌の記録方法

保育業界にも、記録をICT化しようとする動きがあります。補助金等を活用してICT化を進めている園もあれば、まだできていない園もあります。

保健日誌も同様で、手書きの園と電子化している園とありますが、体感的にはまだ手書きの園の方が多い印象です。

手書きにも良さはあるとは思いますが、デメリットの方が多く非効率的だと思います。ただ記載するだけなら手書きでも事足りるかもしれませんが、後述するように分析したり個別にまとめたりしようと思うと、電子化されている方が圧倒的に有利です。保健日誌のポテンシャルを発揮するには、電子化することをお勧めします。

また、電子化している場合でも、アプリを使用している園と、ワードなどに打ち込んでいる園とあると思います。個人的な感想ですが、病院で使用している電子カルテのように使い勝手がいいアプリはまだないように思います。そもそも、保育記録のICT化がもっと進まないことには、保健日誌も変わっていかないのだと思います。

実際に記録する際は、「ラウンド」時にとったメモを元に作成したり、対応の都度追記したりします。業務時間内に記録する時間が取れないときは、翌日すぐに書くよう心がけていますが、時間とともに忘れてしまうことも多いため注意が必要です。「その日の記録、その日のうちに。」が理想ですが、なかなか難しいですよね。

保健日誌の活用方法

保健日誌に記録した情報は、分析をかけたり個別にまとめたりすることで、より有益な情報へと生まれ変わることができると考えています。

事故やケガの記録を統計的に分析をかけることで、園内の事故やケガの予防にも役立てることができます。例えば、木曜日の午後に怪我の発生数が多い場合、その時間の職員配置が本当に適切かを見直す必要性に気が付けるかもしれません。また、雨の日に事故が多いという結果が出れば、雨天時の保育内容について改めて考えるきっかけを提供できるかもしれません。

さらに、保健日誌に記録している内容を個別にまとめることで、「個人看護記録」を作成することも可能です。園児一人一人の経過や既往歴等を確認できると、例えば感染症流行時にリスクがどれだけあるかを確認出来たり、小学校への接続時に作成する「要録」という記録に役立てることもできます。

また、個別に情報をまとめることで「この子はよく柱や友達と頭をぶつけるケガをするな…。もしかして視力が出ていないのかな?」という気づきがあれば、もしかしたら弱視の早期発見にもつながるかもしれません。

「保健日誌」は、園児の健康と経過を見える化するためのツールにもなりうるのです。

まとめ

今回は「保健日誌」について紹介してみました。

「保健日誌」は、園全体の保健情報と園児一人一人の看護記録が合わさった、まさに保育園看護師が専門性を発揮しうる業務のひとつだと思っています。

ただ記録するだけではなく、統計的に分析をかけることで「保健日誌」の真価が発揮されると考えています。しかし、日常業務の中で分析まで丁寧にできる時間はあまりとれていないという課題もあります

保健日誌に記録したことを、ボタン一つで簡単に分析できるような記録ツールがあったらいいなぁと思う今日この頃です。

最後まで読んでくださりありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?