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#0006 真の目標管理のヒント ティール組織・ソース原理・編集工学の視界から

こんにちは、「人事千壺」編集の島居慶美しまいよしみです。

誤解されやすい目標管理において、”個人と組織がともに勝つ「真の目標管理」が広まるにはどうしたらいいのか。今回は、2024年2月に開催したセミナーから、そのヒントを探っていきます。


「個と組織がともに勝つための目標管理」セミナーの概要

2023年10月より”坪谷邦生×SmartHRの共同企画”として、11名の専門家をお招きし「個と組織がともに勝つための目標管理」というタイトルで全5回のセミナーを開催しました。

5回目のテーマは
「『ティール組織・ソース原理』と『編集工学』の視界で考える目標管理のこれから」
登壇者に
ティール組織の解説者 嘉村賢州さん
・ソース原理の翻訳者 山田裕嗣さん
・編集工学研究所 安藤昭子さん
そして
・『図解 目標管理入門』著者 坪谷邦生さん
と4名で、既存の枠を超えた広い視野でMBOの未来についてお話しいただきました。1.5時間があっという間に感じる充実した内容でしたが、その一部より「真の目標管理のヒント」に触れていきます。

第5回目鼎談の様子。皆さんの知が泉から次々に湧き出るように紡がれる豊かな時間となりました

各専門家からの「真の目標管理」のヒント

当日、鼎談の冒頭は、坪谷さんより以下の投げかけから始まりました。

「真のMBOとは、個と組織、主観と客観の4象限を動的にスパイラルアップし続けていくものである」。これが、これまで4回のセミナーを実施してきた一旦の答えです。形骸化した人事制度としてしまうのではなく、個と組織がともに勝つための「真のMBOはどうすれば実装できるのか?」。この問いからトークセッションをスタートしたいと思います。(坪谷さん)

セミナー投影資料より

「ソース原理」の翻訳者であり、様々な新しい組織運営を目指す企業のサポートもされている山田さんからは次の通りでした。

ソース原理の提唱者であるピーター・カーニックは、「ソースは必ず『1人』である」と主張しています。彼は実証主義的と言える人物で、「複数の人がソースを担っていながら真にクリエイティビティを発揮できている事例を見たことがない」という経験からそれを語っています。これはすごく理解できる一方で、根本的なところで西洋的な捉え方ではないか?という感じもします。

私はクリエイティブな発想は、誰のものでもなく、場から立ち現われて浮かんでくるような感覚をもつことがあるので、ソースが「1人」ではない可能性は考えられると思っています。(山田さん)

【Point1】クリエイティブな発想は、誰のものでもなく「場」から立ち現われて浮かんでくる≒ソースが「一人」ではない可能性

続いて、「ティール組織」の研究者である嘉村さんからは、以下の視点をいただきました。

今までは、カリスマ性をもつリーダーに共感して物事が進んでいくのが、よくあるケースでした。しかし、「働いている人が疲弊する」「リーダーの想定以上の成果を得られない」といった課題があります。そこで、逆の考え方である集合知やティール組織への注目が高まりつつあるのです。

個々に主体性が生まれると、組織として思いもよらない外の気づきや発見があるし、相互に関係性が築かれます。図にあるグリーン組織のモデルは素晴らしい力学ですが、ティール組織の実現には左側のオレンジ・アンバー・レッド組織のよさでもあるPOWERの存在も欠かせません。(嘉村さん)

セミナー投影資料より

【Point2】POWERとLOVEどちらも必要。力と愛を一つの如く扱う「力愛不二」≒葛藤克服型の目標管理に通ずる視点

そして、編集工学研究所の安藤さんから「編集」という観点でヒントをいただきました。

編集は相互編集が重要です。複数の人物・お互いの編集が影響し合っている状態が理想で、「場」はそうした相互編集のもとにつくられていくものだと思います。そのためには、弱みや不足などの「穴」をあえて隠さないことが大事です。自分の側に穴がなければ、他者の見方も編集の可能性も入ってこられません。近代以降の組織のあり方の苦しさという話がありましたが、理想的な人物像を目指すばかりの取り組みは、編集の可能性を狭めてしまうように思います。穴が空いていたら面白がる、ぐらいがよいのではないでしょうか。(安藤さん)

【Point3】「場」は「相互編集」のもとにつくられる=人がもつ弱さ(穴)こそが創造にきっかけ

本シリーズセミナーは初回から非常に高い満足度でしたが、第5回もまた極めて高い満足度でした。知識が得られることに留まらず、すべての示唆が関連しあい、このセミナー自体がまさに「相互編集」の時間となっていたこと、そうした場づくりを登壇者の皆さんが愉しまれている状況だったからだと感じました。

また、「相互編集」という考え方は、とてもしっくりきました。以前在籍していたリクルート(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)のブランドスローガン「個と組織を生かす」は今も大切にしています。「個をあるがままに生かす」、心理学的経営を提唱した大沢武志さんのとても偉大で大切なお言葉です。そして当時の私にとっては「個と組織が生かしあう」、同様に「個をあるがままに生かしあう」がさらに自分の価値感にフィットする言葉でした。それは「相互性」を求める世界観が自身にとって重要だったためで、今も私のテーマの一つです。そうした背景もあり、当日のお話から「相互編集」は目標管理のパラダイムシフトに大きな役割を果たすと感じました。

あらためて、いただいた示唆から
葛藤の先に、統合する編集力
自律した個人と組織による健全な相互依存
弱さの共有からなる創造性
がこれからの時代に真の目標管理に近づくためのヒントであるというメッセージを受け取りました。皆さんはどのようなヒントを受け取られるでしょうか。全体の流れは、是非セミナーレポートにてご覧ください。

「真の目標管理」を実現するための動き

セミナーの最後には、「どうすれば真の目標管理を実装できるのか」の問いに対して各々一言ずつアイデアを出し合いました。そこで、坪谷さんは今後の動きの一つとして、「体験」の必要性とその方法について次のように話しました。

やっぱり、働く従業員がワクワクしていないとダメなんです。

そこで、実は「目標管理のボドゲ(ボードゲーム)」をつくろうかと思っていますゲームのよさは代理経験です。この方法なら目標管理のワクワクと失敗を、短い時間で「体験」できるのではないかと考えたのです。

いろいろな企業の人と話をしていると、新入社員の頃から失敗することができない環境で仕事をしている方が多いようです。それでは防衛的になりますよね。失敗体験をどう積ませるかがすごく難しくなっています。「目標管理のボドゲ」を使って失敗体験の機会をもたせられないか、そして目標を自ら立て、追いかける楽しさを味わってもらえないか、と。今日の皆さんのお話しを伺って、やはりこの方向でいくべきだと確信しました。(坪谷さん)

体験した店舗運営の研修で使用されているボードゲーム

当日は、意外性からか場が湧いたこのアイデアですが、実際に動き出しました。”個と組織がともに勝つ”真の目標管理を実現に向けて想いをともにするメンバーで先月「目標管理パラダイムシフトプロジェクト」を発足、そして「体験」機会のためのボードゲームを創る目的でクラウドファンディングが進んでいます。

概要はニュースリリースにてご確認いただけます。

これらの取り組みを通じてあらためて思い出したのは、松尾芭蕉の「不易流行(いつまでも変わらない本質的なものを大事にしつつ、新しい変化も取り入れる)」という言葉です。敬意とともに先人たちの知・原理原則を大切にしながら、新たな変化を創り、また次の世代に繋ぐ。「目標管理」に変化を起こしたい、そうした想いをともにして一緒に変化(うねり)を創る当事者なっていただける方は、是非「目標管理パラダイムシフトプロジェクト」へのジョイン、真の目標管理が体験できるボードゲームを創るクラウドファンディングへのご参加もお待ちしています。

本シリーズセミナーは、SmartHR社よりアーカイブ動画、冊子、レポート記事と展開いただきました。レポート記事は、以下よりご覧いただけます。このnoteの記事では、セミナーの一部のみしか触れられていません。全体感は是非セミナーレポート記事にてご確認ください。

▼第5回はこちら

▼全5回はこちら

セミナー特設サイトにて、各回の「セミナー概要はこちら」の「レポートを見る」よりご覧いただけます。

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