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「共感」を引き出すために必要なこととは? のんとwithnews奥山編集長が語る、情報発信のヒント

11月28日、朝日新聞社が運営するニュースサイト「withnews」の5周年記念イベントが都内で開かれました。ウェブ全盛の時代における新しい報道の形を模索し、月間平均5000万PVのサイトに成長したwithnews。情報があふれる現代において、人の心をぐっとつかむ情報発信を行うにはどうすれば良いのでしょうか。イベントで語られたヒントの数々をご紹介します。

登壇者

のん さん
女優、創作あーちすと。
withnewsと朝日新聞で2016~2017年、映画コラム「“のん”のノンストップ!女優業!!」を連載。

奥山晶二郎 さん
2000年、朝日新聞社に入社。
2011年に現在のデジタル編集部新設に伴い異動。「withnews」立ち上げに携わり、編集長を務める。

伝わりやすい“器”で、伝えたいメッセージを届ける

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第一部では奥山晶二郎編集長が登壇し、withnewsの5年間の歩みを実際の記事や具体的な取り組みを挙げながら振り返りました。

例えば、ユーザーからのリクエストに記者がダイレクトに答える「取材リクエスト」は、媒体発足当初から力を入れてきた取り組みのひとつ。

リクエストで生まれた札幌の特大キャベツの記事では、実際に取材してみると、特大キャベツのこれまでの歴史や、生産量が減り消滅の危機にあることなど、リクエストをきっかけにさまざまな物語が見えてきたといいます。

「記事を作る際には、なぜ今そのトピックを取材するか?にこだわってしまいがちですが、最初のきっかけは、リクエストがあったからという単純な理由でもいいのではないか。そこから先でメディアの取材力・編集力を活かして、記事に価値を生み出していくという形もありなのではないか」と奥山編集長は語ります。

これまでを振り返った上で、“次の5年に向けて”という問いに対しては、 「届けたいメッセージは紙でもネットでもあまり変わらないが、届けやすい形は変わっている。伝わりやすい“器”に伝えたいものを入れて届けることを大事にしていきたい。 また、つながりを生むというネットの良さをこれからも活かして、広大なネットの海の中で“憩いの場”になれるように、これからの5年、withnewsを育てていきたい」と話しました。

スペシャルゲスト・のんさんとのクロストーク

第二部では、のんさんがスペシャルゲストとして登場。奥山編集長は「ネットで何かに挑戦する・新しい世界を切り開いていくという点で、withnewsに近いものを感じて声をかけた」といいます。

ここからは、奥山編集長の質問にのんさんが答えるというスタイルでトークが展開されていきました。本レポートでは、印象的だった部分を抜粋してご紹介します。

自分から発信していく方になりたい

奥山
のんさんはInstagramやブログなどネットでの発信に力を入れていると思いますが、 テレビや映画の活動と並行してネット発信を始めた理由を改めてお聞きしたいです。

のん
私、“のん"になってから、インスタとTwitterとブログを同時にばーっと始めたんです。 自分から発信していく方になりたくて。ものをつくるのが好きで、主体的に活動していきたいなと思っていたので、 自分の思いや活動を伝える場所をつくりたくて。 そういう“のん”を知ってもらいたくて、一斉に始めました。

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素直な感情を乗せることを大事にする

奥山
ネットの発信だと、顔が見えない相手とのやりとりが基本になっていきます。誤解が生まれやすい環境でありながらも、全然接点がなかった人と出会える可能性もあって、 だからこそ「共感」というのが大事だと思いますが、「共感」を引き出すために必要なこと・考えていることはありますか?

のん
状況や説明も大切なんですけど、自分自身の「思い」をすごく入れるようにしています。感情の部分。
どういうテーマで、どういうアプローチでこういう風に取り組んでいます…みたいなことももちろん伝えたいことなんですけど、 そこにちゃんと「楽しい」とか「うれしい」とか「興奮した」とか。そういう素直な感情を乗っけるようにしています。

奥山
結構、本質だと思います。テクニックが重要に見える世界ですけど、一周回ると、面白いことを面白いといったり、そうでないものをそうでないという(そういうことが大事)。 あまりテクニックに走っちゃうと、どうせバレちゃったりとか、こんがらがっちゃう。それはある意味自浄作用というか。ネットの良さでもある気がします。 withnewsでもその辺は見出しをつける時とかに大事にしていたりしますね。

のん
ニュースとかでも、見ていて「これって記者の方の気持ち入ってない?」みたいに感じると、すごい食いついちゃいますよね。

ネガティブな気持ちの時は、SNSを開かない

奥山
のんさんのメッセージって、すごくポジティブなことが多いなと思っていて。例えば舞台終わった後に色んな関係者と写真を撮られていたり、見るだけですごくハッピーになるというか。
SNSってなかなかネガティブなところもあったりする世界ですが、ポジティブなメッセージを伝えるために必要なことや、アドバイスをお聞きしたいです。

のん
ネガティブな気持ちの時は、SNSを開かないようにしています。

奥山
おお、わかりやすい! じゃあ開くときはポジティブな時だけ?

のん
ポジティブな時ですね。気持ちが高まっている時とか、楽しい気持ちでつぶやいたり投稿できる時に開いています。

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炎上もその後の対応をセットで考えて、ポジティブな流れに変える

――「バズる」ことが重視される空気の中で発信される情報が偏ったり分断を生んだりしていることについてどう感じていますか?(会場からの質問)


奥山
バズればいいや、みたいに思っちゃうところがもったいないんじゃないか、という問いかけだと思うんですけど。 リツイートが多いとうれしいところもあると思いますが、 多いことが目的ではないような気もします。どのように感じられますか?

のん
私自身が「バズる」という言葉を知ってから、すごく気を付けている部分はあります。 やっぱり本当に楽しいことで、皆でそれを共有できて広がっていくのが一番うれしかったり気持ちいいことで、 その方が自分は好きだなって思います。

奥山
数字って単なる数字のようで「一過性で終わる数字」と「定着する数字」があったりして。
記事の場合も、めっちゃ読まれる記事ってあるんですけど。その後もう一回(ユーザーが)来ないような形の読まれ方と、 それがきっかけでどんどんフォロワーが増えたり企画名を呟いてもらえるような読まれ方とがあって。例えば同じ1万PVでも、結構違っていたりするのが面白いなと思います。

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のん
これはもう成功だったなという記事ってあるんですか?

奥山
成功だったのは、炎上したように見えて実はそうじゃない形で着地できたことがありました。

のん
ええ、なにそれ?

奥山
シェアハウスってあるじゃないですか。そこで子育てをしている家族がいて、“保育のシェア”みたいな取り組みをしようというのを取り上げた記事があったんです。
それを最初に書いた時に「子供を家族じゃない人に預けるのはどういうことだ?」といったわりと偏った声が集まって。
取材に協力してくれた人と話して、じゃあそういった疑問に答えようと。記事についたコメントに丁寧に全部答える形で「保育のシェアってそんなに変なことじゃないのでは?」という記事をもう一本書いたんですよ。
例えば、昔の日本のご近所づきあいで隣のおばさんが面倒を見てくれたのも、シェアハウスで一緒に住んでいる人に面倒を見てもらうのと、そんなに変わらないんじゃないか?とか。
そのように丁寧に答えていくと記事の反応ががらっと変わって、すごいポジティブな流れになって。もしかしたら最初の記事のビューと、2本目の記事のビューって、質が違ったのかなという気がして。

のん
なるほど。ドラマチックですね。

奥山
炎上も、見え方やその後の対応をセットで考えると炎上じゃなくなることもあるんですよね。

のん
やっぱり、明るいことや前向きなことに昇華できるとすごくいいですよね。

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