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二極の宇宙に見る普遍の法則

前回までの記事では恒星、ブラックホール、クエーサーなど宇宙の天体について解説してきました (*1, *2, *3)。宇宙は科学的な進歩によって多くの真実が解明されつつあります。科学的な証明というのは「観測できる事象」によって「存在を証明する」ことを意味しています。観測できる世界とは「形のあるもの/見えるもの」で形而下学的な世界を意味しています。これに対して観測できない世界とは「形のないもの/見えないもの」であり、形而上学的(けいじじょうがくてき)な世界と言えます。

形而上学は例えば「意識 (Consciousness)」や「魂 (Soul/Spirit)」というものも含めて「計測できないもの/存在が証明されてないもの」を幅広く扱う学問です。形而上学(非物質的世界)と科学(物質的世界)は交わらないものと考えられがちですが、形而上学的な法則は物質世界にも例外無く適用されます。今回は科学的に捉えた宇宙から形而上学的な法則を見出していきたいと思います。


まずは下のFigure 1を見てみます。これは左側に宇宙の起点である“ビッグバン (Big Bang)”があり、右に行くにつれて時間が経過し、一番右側が“137億年経過した現在の宇宙”を表した宇宙の縮図です (*4, *a)。現時点で科学的に解明されている最も有力な説に基づいて作成されたイラストレーションです。


このFigure 1の(1)の部分、つまり「ビッグバンの前」を想像していきます。この領域はまだ“物質も光も時間も空間も何もない状態”です。科学では恐らく観測する手段の無い領域です。まさに想像する以外に描写する手段はありません。一つの想像としてはFigure 2のようであったかもしれません。そこには“光”も“闇”もなければ、“時間”も“空間”もありませんでした。“何も無かった”と言えるかもしれません。もしかしたら“別の宇宙 (Another universe/ Multiverse)”があったかもしれませんし、それ以外の何かがあったかもしれません。


そしてある時そこに“ビッグバン (Big Bang)”が起こりました。「なぜ起こったか」「なぜ何も無いところに爆発が起きたか」「誰が起こしたか」「どうやって起こしたか」は科学的には解明されていません。

この時初めて“時間”と“空間”が創られ、急速に膨張しました(*5)。この時宇宙は10^30度K (ケルビン: 推定温度)という超高温で光とエネルギーしかない状態でした (*6, *7)。Figure 1の図では(2)の期間がこの状態に該当します。

ビッグバンから約38万年後までは宇宙の状態は太陽よりも高温状態で太陽と同じような“プラズマ (Plasma) 状態 (*8)”であり、電子 (Electron) も陽子 (Proton) も中性子 (Neutron)も原子を形成せずにバラバラに存在していました(詳細は過去記事参照*9)。光子 (Photon)もこれらの粒子と混在している状態だったので宇宙全体が太陽のように発光している状態でした。

このときの宇宙は“光”しかない状態でした。“光を遮るもの”が何も無いため、“闇”や“陰”は存在していない状態でした。

そして宇宙誕生から約38万年後に宇宙の温度が3000度K程度になると、陽子や電子や中性子が結合して原子が形作られます。それと同時に光子が他の粒子から干渉を受けずに解放されて直進できるようになりました。それによって宇宙は晴れ渡り、遠方まで光が到達するようになりました。この現象を“宇宙の晴れ上がり (*10)”、粒子が結合した時期 (Recombination epoch)と考えられています。

この“宇宙の晴れ上がり”の時期はFigure 1の(3)の時期に当たります。このとき宇宙には陽子や電子、水素やヘリウムといった物質が豊富に存在していました。しかし宇宙の温度も下がっていたため“光を発するもの”や“光を反射するもの”が全く存在しておらず、宇宙は暗闇の状態でした(Figure 4)。

しばらくは宇宙は暗闇の状態でしたが、数百万年の経過とともにガスが重力によって集まり星が形成されます。星の引力がさらに周囲の物質を引き寄せ、重さが現在の太陽ほどの重量になると自然に内部で核融合反応が起こり始めます (*11)。

この時期がFigure 1の(4)に相当します。星の中心で核融合が起き始めるとその星は太陽のように光を放つ恒星 (Fixed stars)になります。このようにして真っ暗闇だった宇宙のあちこちで光を放つ星が誕生していきます(Figure 5)。

そして星が次々と誕生していき、この銀河だけでも1000億〜4000億個の恒星(*12)があると言われていますが、宇宙は数えきれないほどの星々で満たされていきます (Figure 6)。

Figure 1の(5)の時期では成熟して質量が大きくなった星々が増えていきます。そして星が大きくなりすぎるとどうなるかというと、太陽の質量の約30倍以上の恒星は自重に耐えられなくなり、ブラックホールになります (*13)。

ブラックホールはその強すぎる重力のために、あらゆる粒子も形を保てずに中心へと落ち込んでいきます。その重力は空間をも歪めてしまうため、光すら脱出することはできません。そのため直接観測することができず、周辺の光すら吸い寄せられてしまうために観測すると文字通り“黒い穴 (Black hole)”のように見えます (Figure 7, *e)。

このブラックホールの性質は非常に強力です。惑星であろうと、恒星であろうと関係なく近くにある天体を“暗黒”の中に吸い込んでいきます。では巨大なブラックホール同士が近づいたらどうなるでしょうか? (Figure 8)

答えは「さらに大きな巨大なブラックホールが誕生する」です。惑星同士の衝突の場合は粉々に砕けて消えてしまうことも考えられますが、ブラックホール同士が衝突しても破片も重力を超えて外部に出ることは不可能です。そのため質量は単純に加算されていきます。故に、ブラックホールは原則的に“消滅することのない”、“一方的に増大し続ける暗黒”と言えます。

しかし、無敵の暗黒とも思えるようなブラックホールにも変化が起こります。あらゆる天体を飲み込み続けて太陽の1億倍以上の質量となったブラックホールは、一つの銀河を回転させるほどに大きな重力場を持つことになります。

渦のように回転させられた周囲の物質はブラックホールの周りに降着円盤(こうちゃくえんばん:Accretion disk)という構造を作り始めます。この円盤上の物質は引き寄せられる強力な重力と回転する遠心力でお互いに衝突し強い光を放ち始めます(Figure 9)。

この天体は中心にブラックホールを持っていますが、太陽の何億倍あるいは何兆倍もの光を発することができます。少し前の記事を読んだ方はもう知っていると思いますが、この天体は“クエーサー (Quasar, *2, *14)と呼ばれています。

Figure 10は地球から約14億光年離れた場所にあるPG0052+251というクエーサーの画像の一部です (*15, *h)。このクエーサーの見かけの明るさが15等級ほどなので絶対等級を計算すると太陽の数千億倍以上の明るさで輝いていると推測されます。

現時点の宇宙はFigure 1の(7)の段階にあり、この先は未来の宇宙(8)へと向かっていきます。

これまでの宇宙の成り立ちを振り返って分かるように“光”も“暗闇”も互いに反対向きの両極端として存在してきました。宇宙が創造されてから“光と闇”は常に表裏一体のものとして存在し続けています。

この法則は科学の法則ではなく形而上学的な法則で“極性の法則 (The Principle of Polarity, *16)”として知られています。

すべてのものには極性があり、すべてのものは対をなす。すべてのものには反対の性質のものが存在する。反対のものは同じ性質の程度が違うだけである。反対のものも本質は同じである。すべての真実は半分の真実にすぎない。両極端は出会う。すべての反対のものは調和する(*16)”

さらにこれまで論じてきた宇宙のあらゆる天体も、恒星であろうとブラックホールであろうとクエーサーであろうと、光であろうと闇であろうと実は「見えている側の宇宙の側面」に過ぎません

すでに知っている人もいると思いますが、ブラックホールの比ではなく「全くつかみどころのない、観測の手がかりすらつかめないダークマター(暗黒物質, *17)」というものも存在だけは知られています(詳細は過去記事参照 *18, *19)。しかも驚くべきことに、「観測可能なもの全てよりも未知のダークマターの方が多い」ということも分かっています。

人類が進化を遂げて太陽系を知り、はるかに大きな銀河の一部であることを知り、天文物理学や重力についても知識を得てあらゆるものを光で見渡せると思った頃に、全く予想もつかない巨大な暗黒が出現しました。

しかしこれはこの宇宙の普遍的な法則である、と言うことができます。

光が大きくなると、光の中に闇が生まれる。同様に闇が大きくなると、闇の中に光が生まれる。光が闇を凌駕すると闇が光を凌駕しようとする。同様に闇が光を凌駕すると反対に光が闇を凌駕しようとする。これらは一時的に不均衡であるように見えながら、不均衡の中に均衡を保っている。そしてこれらの均衡を保った不均衡の繰り返しは永遠に終わることがない

これらは陰陽 (Yin Yang, *20)の思想と同じであり、律動の法則 (The Principle of Rhythm *16)も含んでいます。この法則は“昼と夜”でも“光と闇”でも“見えるものと見えないもの”でも“知られているものと知られていないもの”でもすべての事象に当てはまる普遍的な法則です。なぜなら、“この宇宙がそのようにデザインされて創造されているから”です。

その一つの例としては“一つの謎が解明されると、より多くの新たな謎が増える”といったことがこれまでの人類の進歩からも分かっています。この普遍の原理を理解することが「形のある世界」と「形のない世界」の両者の世界への理解を深めることは間違いないでしょう。光と闇のせめぎ合いのサイクル、謎の解明とともに新たな謎の発見というサイクルは永遠に終わらないかもしれません。しかしそのプロセスを止めないことに人間の進化と次の次元への鍵があると言えます。これまで解明された宇宙の真実を振り返りながら瞑想を行うと見えてない部分も想像できるかもしれませんね。

(著者:野宮琢磨)

野宮琢磨 Takuma Nomiya  医師・医学博士
臨床医として20年以上様々な疾患と患者に接し、身体的問題と同時に精神的問題にも取り組む。基礎研究と臨床研究で数々の英文研究論文を執筆。業績は海外でも評価され、自身が学術論文を執筆するだけではなく、海外の医学学術雑誌から研究論文の査読の依頼も引き受けている。エビデンス偏重主義にならないよう、未開拓の研究分野にも注目。医療の未来を探り続けている。

引用:
*1. 無限の恩恵:太陽のエネルギーシステム https://note.com/newlifemagazine/n/n19ba0f093c00 
*2. ブラックホールとクエーサー:暗黒が光に転じる https://note.com/newlifemagazine/n/n451cf6260fd5 
*3. 宇宙一の高温/“火”の瞑想 https://note.com/newlifemagazine/n/nb535247ccc77 
*4. Chronology of the Universe- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Chronology_of_the_universe 
*5. Jonathan Allday, "Quarks, Leptons and the Big Bang" Second Ed., The King’s School, Canterbury, Institute of Physics Publishing Bristol and Philadelphia, 2002
*6. Ferreira PG and Magueijo J. (2008). Observing the temperature of the big bang through large scale structure. Physical Review D, 78(6), 061301.
*7. Big Bang-Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Big_Bang 
*8. プラズマとは?京都大学. https://p-grp.nucleng.kyoto-u.ac.jp/plasma/index.html 
*9. 宇宙の始まり:“宇宙創造のアルケミー”. https://note.com/newlifemagazine/n/n724aead9b9a4 
*10. 宇宙の晴れ上がり−天文学辞典. https://astro-dic.jp/clear-up-of-the-universe/ 
*11. 無限の恩恵:太陽のエネルギーシステム. https://note.com/newlifemagazine/n/n19ba0f093c00 
*12. How Many Stars in the Milky Way? NASA Astrophysics Science Division. https://asd.gsfc.nasa.gov/blueshift/index.php/2015/07/22/how-many-stars-in-the-milky-way/ 
*13. Black hole-Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Black_hole 
*14. Martin Elvis, A STRUCTURE FOR QUASARS, The Astrophysical Journal, 545:63È76, 2000
*15. Zhang, XG. Evidence for the Intermediate Broad-line Region of Reverberation-mapped Active Galactic Nucleus PG 0052+251. The Astrophysical Journal, Volume 741, Issue 2, article id. 104, 12 pp. (2011).
*16. Three Initiates (1908). The Kybalion: A Study of the Hermetic Philosophy of Ancient Egypt and Greece. Chicago: The Yogi Publication Society.
*17. 暗黒物質(ダークマター)–Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/暗黒物質 
*18.存在しているはずなのに科学的に観測できないもの https://note.com/newlifemagazine/n/n594654ee1eb3 
*19. 私達の周りにもあった、未知の物質:ダークマター(2)https://note.com/newlifemagazine/n/ned28052f0b6b 
*20. 陰陽-Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/陰陽 

画像引用:
*a. NASA/WMAP Science Team. https://en.wikipedia.org/wiki/File:CMB_Timeline300_no_WMAP.jpg
*b. Image by Geek3. https://en.m.wikipedia.org/wiki/File:Sphere_wireframe.svg
*c. Image by pradanchaju21 on Vecteezy. https://www.vecteezy.com/png/26548551-galaxy-overlay-space
*d. Image by NASA Goddard. https://images.nasa.gov/details/GSFC_20171208_Archive_e000282
*e. Supermassive blackhole by NASA, ESA, D. Coe, G. Bacon (STScI). https://en.wikipedia.org/wiki/File:Artist’s_concept_of_supermassive_black_hole_within_M60-UCD1.tif
*f. Credit: NASA's Chandra Discovers Giant Black Holes on Collision Course. SciTech Daily. https://www.youtube.com/watch?v=D0zrbM22kYU
*g. Image by NASA/JPL-Caltech. https://d2pn8kiwq2w21t.cloudfront.net/original_images/jpegPIA16695.jpg
*h. Credit: Quasar PG 0052+251. John Bahcall (Institute for Advanced Study, Princeton) Mike Disney (University of Wales) and NASA/ESA. https://esahubble.org/images/opo9635a1/

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