【エッセイ】旅動画を作ろう③─予算問題─(『佐竹健のYouTube奮闘記(45)』)
6月の終わりにメールで予算の話が出た。
予算は、相方との兼ね合いで、10万円と決まった。
「ふぁーっ、一人あたり10万だって!?」
メールでこの事実を聞いた私は、企画にかけられた「一人あたり10万」という巨額の予算に驚いた。沖縄や北海道、九州のような遠隔地に行くわけでもない。かと言って、東京や名古屋、京都、大阪で豪遊するわけでもない。なのに、一人あたり10万円というのは、あまりに高すぎやしないか?
高すぎる予算の内訳について、私は聞いた。
「あー、これはまあ、もしも何かあったときに備えてって感じかな」
「ほう」
私は納得した。もしもの時なら、少し多めでいいかもしれない。だが、それでも10万円というのは多すぎやしないか?
「普段金使わないから貯まる一方でさ」
「うん」
「あ、あと、予定も決まったよ」
「どんな感じ?」
「まず、関川村で鮎釣りしたりとか、村上で遊覧船に乗ったりしようかなと思ってる。あと、サントピアワールドでゴーカート乗ったり、新潟駅前のビックカメラでミニ四駆とかもやったりしようかなと思ってるかな」
「ははあ……」
人の趣味にあれこれ言うのも少しどうかと自分ながらに思うのだが、やはり金持ちのやることは違う。少ない予算を何とかやり繰りして現地調査をし、図書館で資料を探して調べ、原稿を書いて、出来上がったものを作り声で読み上げる。もしくは図書館での文献調査を先に済ませ、現地調査や日々の生活の一部を撮影し、動画を作る。そんな自分の動画制作の努力が、とても虚しく見えてくる。
(そういえば、自分の旅動画どれだけお金かかってるんだろう)
私の旅動画の予算についても、少し見直してみた。
6月の中頃に中止した関東城めぐりだが、そこまで予算がかかっていない。
初回の常陸編では往復2700円くらい、一番金のかかった下野編では、5000円も使っていなかった覚えがある。ちなみに東京と埼玉の話をしている武蔵編に至っては、数百円しか使っていない。おそらくだが、合計は2万もいっていないだろう。
これに関しては、単純に行き先が城跡という無料で入れる場所であることが大きい。交通費に関しても、特急を使わず、快速や各駅停車の列車に乗ったり、バスをほとんど使わず歩いたりするなどの努力で、何とか成功している。また、金を使うことがあったとしても、飲み物やおやつ、寺社のお賽銭くらいなので、大した額にはならない。
また、鎌倉遠征では2000円、川越遠征では1500円ぐらいしか使っていない。
ここまで遠征費用を安く済ませられている理由としては、鉄道会社が発行している切符を上手く利用しているからだ。鎌倉の場合は、小田急電鉄が発行している鎌倉・江ノ島フリーパスという切符を、川越の場合は東武鉄道が発行している小江戸川越フリーパスという切符を使って移動している。
前者は、切符を買った駅と藤沢の往復、そして江ノ電乗り放題という特典がついている。後者は切符を買った駅から川越からの往復と、東武のバスに乗るときに運転手さんにその切符を見せると、一定の区間ならタダで乗ることができる。
どちらも片道分かそれより少し高い料金設定なので、お得に鎌倉や川越を巡ることができる。
そんなお得な切符を上手く利用して、私はいつも東京から川越や鎌倉を行き来している。
川越や鎌倉以外の遠隔地の場合は、途中の駅まで自転車を使ったり、新幹線や特急ではなく快速や急行の列車に乗ったりなどして、交通費を削減している。
自転車を使うのは、最寄り駅より遠くの駅で電車に乗れば、交通費が浮くからだ。快速や急行を使うのは、各駅と同じ料金で速く目的地へと着けるからだろうか。
貧乏隠士である私の旅は、工夫に工夫を重ねた上で何とか成立しているのだ。
同時に、昔友達と出かけていたときのことを思い出した。
4、5年前まで、私は年に2回友達とどこかへ行っていた。季節としては、ちょうど、今の恒例企画である川越や鎌倉への遠征をやっている時分だろうか。当時は今ほど夏が暑くなかったし、私自身が抱えている問題が今以上に悪化しているわけでは無かったから、お盆時も密かに来ていた。
友達と観光するときの期間は、大体一泊二日。
1日目は、友達とあらかじめ待ち合わせしていた駅で合流する。そして、遠くの街にあるイオンやアピタへと向かい、友達のやりたいことを済ませる。
友達のやりたいことは、大体そのときによって変わる。あるときは映画観賞、またあるときはおもちゃコーナーの物色といった感じで。ついでに、中にあるレストランでランチを済ませる。ランチが済んだら、必要な物の買いだしなどをする。そして、私のやりたいことをするべく出発する。
ちなみにイオンやアピタでのショッピングは、友達の都合でやらないこともある。
私のやりたいことをするための道の途中で、ブックオフかハードオフに立ち寄る。というより、私の昔暮らしていたところでは、大体ブックオフかハードオフが一緒の建物の中にあるので、どちらも寄ることになるのだが。
ブックオフかハードオフでは、読みたい文庫や漫画本、CDを見たりするのが定番になっている。私はそこでいつも、スピッツかDo as infinityのCDを買って、友達の車のCDデッキを使わせてもらい、音楽を車の中で聴かせてもらっている。
私のやりたいことは、現地でしかできないことをやることが多い。山で紅葉が見たいとか、海が見たいとか、車を出してくれた友達以外の友達に会いたいとか。全部私のわがままだ。
そんなわがままに付き合ってくれる友達が、とても尊い。そして、いつもありがとう。
私のやりたいことを済ませたあとは、道沿いにあるココ壱でディナータイムになる。
ディナータイムを済ませたら、近所のネトカフェもしくは友人宅に降ろしてもらい、ここで一旦お別れとなる。
ネトカフェでは、ずっと漫画を読んだり、動画を見たりしながら一夜を過ごす。友人宅の場合は、話したりアニメを見たりしながら過ごす感じだろうか。
二日目は、事前に待ち合わせした地点で友達と合流。スパ銭に行って温まり、その後少し遅めのランチタイムが終わったら、新幹線の通っている駅まで行って、お見送りタイムとなる。
行くのは、昔暮らしていた町から少し離れたところにあるスーパー銭湯、もしくは隣町にある小さな銭湯だ。
前に挙げた方の銭湯は、私のよく行くスパ銭の半分くらい、後に挙げた町の銭湯の方はその4分の1ほどの値段だ。そこで丸々2時間くらい湯に漬かり、その後は少し遅めのランチタイムに充てている。
ランチタイムが終わったら、お見送りタイムとなる。そこで別れの言葉を言って、私は東京へ、友達は自宅へと帰る感じだろうか。友達二人、いつもありがとうございます。
ショッピングとかブックオフめぐりは、私にとっては日常の一部分でしかない。ショッピングをしたければ、電化製品なら池袋か秋葉原、古本なら神保町、衣類や靴とかは上野や新宿に行けば大体事足る。映画館へ行くのも同じだ。ブックオフに行きたければ、地下鉄を数駅乗り継いだり、自転車を走らせたりすればいつでも行ける。スパ銭もカラオケもそうだ。
紅葉だって、巣鴨の六義園とか音羽の肥後細川庭園、大宮の氷川神社へ行けば立派なものをいつでも見ることができる。少し足を延ばせば、鎌倉の円覚寺や鶴岡八幡宮、東京の紅葉の代名詞高尾山にも行けるのだから。
でも、私は普段一人でいるから、仲のいい誰かとどこかへ行ったりするようなことが滅多に無い。なので、日常の延長線のような行程でも、両手で数えられるくらいしかいない友達の一人がいるだけで、特別感があるものになるから、楽しく感じる。
このときにかかった一人あたりの予算についても考えてみたが、来る側である私ですら5万を超えたことは無かった。2泊3日の時でもだ。
ランチタイムではそこまで食べないから、せめて使っても、数百円か1000円札を1枚消費するくらいだ。ブックオフやハードオフに行っても、漫画本のまとめ買いやそこそこ新しい本、人気のCD、玩具などを買うわけでは無いので、そんなに使わない。
友達に関しては、私以上に使っていないのではなかろうか? 推測ではあるが、5000円も使っていない気がする。
(でも、例外もあるんだよなぁ)
例外もある。鳥さんに会いに熊本まで行った時のことだ。このときばかりは、6万くらいは使ったような覚えがある。
この場合は無理もない。行きは飛行機と特急を使って1万円かかった。宿代は1万3000円かかってしまった。帰りの羽田行きの飛行機に関しては、2万3000円というかなりの高額料金であったのだから。食事代はなんとかコンビニとかで済ませていたから、わりとどうにかなった。
今度もし熊本へ行くことがあったら、博多で飛行機に乗って帰ろうと思っている。
私は久しぶりに当時よく遊んでいた友達2人に連絡を取り、このことを話した。
よく遊んでいた友達は、
「さすがに多すぎる」
と答えていた。
(やっぱり、使いすぎよね)
使い過ぎだ。いくら金が余っているとはいえ、近場の旅行で10万かけるというのは少しどうなのだろうか?
「君ならどうする?」
「サントピアワールド削るかな」
「まあね。遊園地って、遊ぶだけでも一日潰れるからね」
もう一人の友達にも同じことを聞いたが、やはり同じ答えが返ってきた。
(続く)
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