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夜中詩

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こぼれ落ちるのをすくってゼラチンで固めたやつ
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#少年

◆詩◆思い出さない

◆詩◆思い出さない

住宅街は雨の染みを残して
水分を含んだ空気の中を漂っていた
僕だけが溺れるように生きている

昔、君とかくれんぼしたマンションが
立ち入り禁止になっていて
もうすぐ解体されるらしい

君はもうこの街には帰ってこないし
僕のこともマンションのことも可愛がってた猫のことも拾った漫画のことも失踪した先生のことも廃墟にいた「あれ」のことも忘れてしまっただろう

虫を採っては羽をちぎった
その罪が僕の肉に打

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小さな劇場

小さな劇場

空洞のふちをなぞる指は水色
少年と青年はピアノの前で瞬きする
深い呼吸を試してみる
少年の白い襟、青年の黒い釦

「夢にあなたが出てきました。馬車に乗っていて、花を抱いていました。ベルベットのような偽物のようなすべすべの花びらのうえを一滴の雫が滑って、」
「昨日のテレビの話をしよう。君によく似た豹が出ていた。獲物を捕え、口に血を滴らせていた。……ねぇ、私たちは同じ話ばかりしているね」

伏せられた

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はしきうるわしき

はしきうるわしき

少年少年少年、
少年、
菫色の瞳の少年、
菫色の瞳の中の少年、
安酒を飲み笑い出す少年、
フリルとレースに溺れる少年、
漂白する少年、
漂白し漂泊する少年、
漂泊する少年の中を泳ぐ少年、
コンビニ、ホットスナック、油にまみれし薄紙、てらてらと輝ける、唇、
入れ子構造の少年、
少年の中には高密度の少年、
もしくは夢の中の少年、
少年少年少年少年、
傷に当てしカットバンぐずぐずたらむ少年、
なお愛しき

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