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『ことばにできない宇宙のふしぎ』

やふぅー٩( 'ω' )و
今回は、積読本の紹介をします。

エラ・フランシス・サンダース『ことばにできない宇宙のふしぎ』 前田まゆみ訳 (創元社、2019)


思った以上に、宇宙についての知識が身につく本です。
エッセイに近いのか?という先入観から入ったせい。
物理をエッセイ調にまとめたら、きっとこんな本になるんだろう。
それが、第一印象。



前置き

著者であるエラ・フランシス・サンダースは、最初に以下のように記している。

私のことを変人と思わないみなさんへ

エラ・フランシス・サンダース『ことばにできない宇宙のふしぎ』 前田まゆみ訳 (創元社、2019)、3頁。

変人?なぜ?
というわけで、海外のAmazonを開いて試し読み。
うーん、分からん。
原題のタイトルが、”Eating the Sun”だから?
やっぱり分からない。
ちなみに、このタイトルになっている箇所は本書の13ページに記載されている。

「宇宙のふしぎ」と、タイトルに持ってくるのは、彼女自身がこの世界には不思議がいっぱいだと思うことを書き連ねているからだ。

訳の分からないことの説明を見つけ、「無秩序」をなんとか整理しようとすることに、私たちは多くの時間を使っています。お互いを結び付けている限界からなんとか逃れようとし。避けられないことや無惨なことは、めでたく無視しながら。また、私たちは、自分自身を過去、現在、未来に分けて考えようとします。それは自分が変化したとか、もともとわかりきっていたことより理解したと思えるように。また、過去を終わらせ、振り返ることなく新しいことを始める線引きのために。

前掲書、6頁。

可愛らしい惑星のイラストを挟んで、結構きついことが書いてある。
でも、実際そうなんだ。
この短い文章の中に、様々な思いがぶつけられる。

繰り返しになるが、本書は、宇宙や物理、科学について書かれている。
知識が身につくと同時に、でもこれってなんだろうね?と改めて考えさせられる。

「不思議」を追いかけていく、その時間。
私は、この時間が好きだ。
好きだというより、呼吸をするように行っている。

ある人は、分かりもしないそんなことを考えるのは時間の無駄だから、もっと有意義に過ごせと言う。
ある人は、考え込んでいると言う。
ある人は、塞ぎ込んでいると言う。

確かに、こんな難問について答えは出ない。
それでも、時間の無駄だとしか考えず、決めつけてくるような人とは、関わりたくない。
可能であれば。

宇宙というのは、本当に不思議でしかない。
また、宇宙や惑星の均衡の美しさ。
それらが成り立つことにより、我々の生活が今あること。
当たり前のことが、当たり前じゃない。

これらについて、もっと専門的に教えてくれるのが本書である。

本当に、生活のすべての中に物理がある。
呼吸をしてみる、水を出したり、植物を見たり、生き物を見たり…
私自身の身体について考えてみたり。
あらゆるものの中に、物理法則がある。
物理の公式を解くには、数学の知識が必要となる。

私の感知する世界が、すべて公式や数字になりそうだ。
それでも、やっぱりそんな世界が美しい。

本書の中で特に気に入った話

10 今日、あなたはもうあなた自身ではない

これは最近、私がよく考える、人がいかに人を認識するかに似通っている。

サンダースは、ここでいくつかの哲学者の提示したことを紹介している。
そして、最後にこう纏めている。

ーーこの大変こんがらがった問いの中で思考停止していたとしても、「自分」、「私」、「私自身」、「私たち」と考えるときに、そこにいろいろな意味が含まれているということを気にとめておくと、多少なりとも安心できるかもしれませんね。

前掲書、37頁。

人は、分からないときに整理しようとする。
そういう時に、ある程度こういうものかとしていれば、確かに少しばかりは楽になるかもしれない。
偉大な哲学者たちも、結局のところは1つの答えに留まらなかった。
明言しなかったのは、理解の範疇を超えたところに何かを見出していたかもしれない。
人が人を認識することについて考えるのも、この考え方に似ているのかもしれない。

16 月はなぜ空にあるの

月と地球の物理法則の話。
地球の求心力と、月の遠心力。
慣性の法則によって、この均衡が成り立っている。

ーー月は、毎年3.8cmずつ地球から遠ざかっているーー

前掲書、55頁。

いつか、このバランスが崩れたら、月と地球は想像もつかないほど遠くにいくのかもしれない。
または、どちらかの力によってぶつかるか。
驚くほど不思議なこの均衡は、人間関係の距離と似ているんじゃないかと思った。
遠くても近くても、ぶつかる人とはぶつかるけれど。


30 日が昇ったあとで寒くなる

夜が明ける直前が一番暗くて、一番寒いと言われています。

前掲書、95頁。

この言葉ほど、希望を抱ける言葉を見たことがないかもしれない。
今は真っ暗かもしれないけれど、どん底だと思う時はもうすぐ夜明けがくるということなのだから。

もちろん、本箇所の現象についても、丁寧に説明されている。
なぜ起きるのか、どういう原理でこの現象が起きるのか。
太陽が昇ったら、もう寒さも薄らいでいくだろうということも。


まとめ

世界は、不思議で満ちている。

分からんねー。
不思議だー。

これだけだと、考えることをやめてしまったように思われる可能性がある。しかし全てを理解しようとするなら、たちまち苦しくなる。

分かりたい思いと、不思議でたまらんと頭の中で考え続けること。
これらのバランスが、ある程度取れていれば少しは楽になるのだろうか。

すべての答えなんか、出せないだろう。
だから美しいんだ。
不思議だと考え続ける楽しみがある。

膨大な宇宙の不思議の中、小さな惑星の地球に住む私。
私の頭の中にも、宇宙がある。
なんだろう、これって。
分からないけど、とてもワクワクする。

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