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南米旅行の記憶、ボリビアにて

学生として最後の海外旅行。
今まで来たことのなかった南米大陸を選んで、サンパウロ、リオ、ブエノスアイレス、ラパス、ウユニ、マチュピチュ、クスコ、サンパウロと廻って帰る。

1年間のパリでの学生生活を経て、ブラジルやアルゼンチンからきた多くの素敵な友達に出会った。このご縁を大切にしたいと思った。
僕が知り合ったような中流〜上流階層とそれ以外の貧富の格差が治安悪化に結びつくのがラテンアメリカの大都市である。

学生という身分を活かし、治安がまだ見通せるうちに、友達が社会人生活を始めて忙しくなる前に一緒に時間を過ごせるのは今しかないと思った。
それで、ラテンアメリカを卒業旅行の目的地に選んだ。

Copacabana

ブラジルの、リオのエモーションは、明るさやサイケデリックな奇抜さの裏に流れる彩り豊かなダークネスだ。経済的な豊かさや情熱的な愛に溢れたこの国の幸せには、どこか底抜けなところがある。支えるものがいつなくなってもおかしくないという不安。

Do nada aquela multidão começou a sumir
E o samba virou blues quando ela me beijou
ふいに周りの人たちがみんな消えて
彼女がキスをしたとき、サンバがブルースに変わった

Ludmilla - Maliciosa

だからこそ、刹那的な愛でも愛さなければならない。
コンタチーニョだけではだめだけど、コンタチーニョも大切にするのがこの国なのではないか。


La BocaにあるChoripan屋

ブエノスアイレスは、ヨーロッパそのものだった。
近代的で外資系企業に溢れるPuerto Madero、お洒落でパリ的気分あふれるPalermo、マドリード王朝時代のスペインの名残を感じるPlaza de Mayo界隈、美しい公園たち。
毎月20%のインフレという深刻な財政問題を抱えている以外は、美しい街。

ここに住んでも良いと思った。


ボリビアに来ると、一気に郊外に来たという感じがした。
日本人と韓国人に大人気のウユニは、鏡になって広い空の全てを映し出していた。

ウユニ塩原、早朝

地球の反対側にある絶景と日本語で話す日本人達に囲まれて、僕はまた居場所を見失った。僕がbelongするのは此処ではない。
スペイン語も英語もわからずにはちゃめちゃをウェイトレスに話して、でも大興奮の同郷者のグループ。私は世界一周でここにいった、僕は何大陸にいく、どこからきた、どこへいく、フライトはこうだ、バスはああだ…日本語でうまく会話もできない僕。ツアー業者のオフィスに日本人が書いた"Uyuni, obligada"の感謝状。呆れてタバコをふかす僕に冷たい目線を向ける日本人の女の子。

こんなに遠くに来たのに、やっぱり居場所がわからない。

青空と湖面に僕の気持ちは板挟みにされて、また遠くにいる好きな人のことを考えた。いつもこうやってはさまれて、息苦しくはないのになぜか浮いているような感覚で、それで心の中に静寂を求めているのだろうか。

今日の午後はボリビアの雨季が雷雨を呼んできたので、ホテルのテラスで居眠りする子猫と一緒にタバコを吸いながら読書をした。こうやってあの人のことを考えている時間は、空虚なのに楽しい。

日本より少しだけあの人に近い異国の地で、それでも遠い地球という距離のことを考えている

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