記事一覧
留学日記#84 24.3.26.
久しぶりにフランス人のタンデムに会う。ここのところ帰国を意識するようになった。できることをできる範囲でしよう。二か月ぶりのタンデムは相変わらず愛嬌があった。チュクチュクチュク…という謎のオノマトペを何につけても口ずさむのが可笑しい。一時間話した。最初に話したときと比べてはるかに円滑に話せるようになっている。何せ最初はほとんど意志の疎通ができないくらいだった。朝から就活の落選の通知で落ち込んでいた
もっとみる留学日記#82 24.3.24.
マゾッホ紹介を読んで吉本隆明のオンライン読書会に参加する。会のあとにはメリメ『カルメン』を読み進めた。終始主人公が出来事に対して距離を取っていて、読んでいて心地よかった。何でもかんでも語り尽くせばよいというものではない。今一度自分の文体を見つめ直す必要がある。主にこの日記についてだ。書きたいときに書きたいぶん好きなだけ書いているようではいけない。のかもしれない。わからない。匙加減は日記の捉え方次
もっとみる留学日記#81 24.3.23.
今日から就活をしようと思っていたのに何にも手をつけずに一日を終えてしまった。部屋から出るのが面倒で棚に置いていたりんごを三つすべて食べきった。マゾッホ紹介を読み返しながら批評と臨床について考える。あらゆる医学は結局言葉で書かれ説かれる。ドゥルーズが医学に文学性を見出す所以である。その点においてマゾッホ紹介とは、ドゥルーズが批評家としての医者に比肩し、マゾッホを彼なりに読み替えようとする試みだと言
もっとみる留学日記#80 24.3.22.
日本人二人と旧市街で朝カフェ。誕生日なんだよと言ったら奢ってくれた。一人先に帰ってオンライン家庭教師をしていたら、二人からまた連絡をもらって、午後にも僕の部屋でお茶することになった。わざわざケーキを用意してくれていて、他にもマリアージュ・フレールのアールグレイ、パリのクッキー、スイスのちょっと高い赤ワインにジンとあまりにも贅沢な品揃え。どれも味わいに品があって、フォークを持つ手が自然とゆっくりに
もっとみる留学日記#78 24.3.19.
朝三時から面接で大失敗を喫する。不貞寝。起きても何をするにも億劫でもう一度寝た。気づくと夕方になっていて、人と会う約束を完全に寝過ごしてしまっていた。平謝りして旧市街前へと急ぐ。旧市街前には長い長いベンチがある。世界一長いという噂を耳にしたことがあるが真偽は確かではない。春になって暖かくなってきたからか、ベンチに添うようにしていくつものグループが夕焼けを見に集まっていた。隣の男性たちはビールを片
もっとみる留学日記#76 24.3.16.
近くの川まで散歩する。小さな崖のように切り出ている獣道を通ると橋梁下に着いた。虎のグラフィティアートを背にして川の流れを眺める。鳥が数羽、行ったり来たりしている。橋の裏が青空で挟まれている。似たような光景は日本にもいくらでもあるだろう。それでも今後の人生であと何回ここに来れるかと考えると切ない気分になった。最近、帰国に想いを馳せるようになった。留学も残すところあと三か月と少し。
ある人を小説
留学日記#74 24.3.14.
日本人に誘われて、朝八時からカフェに行く。寮からバスに乗って十数分のところに、駅やレマン湖などジュネーブの中心部がある。今回行ったのはそのすぐ近くにある旧市街。ほとんどの建物が石畳でできていて、空気が歴史を感じさせる。町は侵攻を想定して設計されていて、道があちこちに入り組んでいたり、いくつもの傾斜が交錯していたりする。歩いているだけで、近世の街並みを冒険しているかのような気分になる。三軒のカフェ
もっとみる留学日記#73 24.3.11.
コーヒーを淹れにキッチンに行くと、フラットメイトのインド人が朝から手の込んだ朝食を作っていた。こっちに来てから旅行行ったことある? と聞いてみる。英仏問わず教科書の例文程度の質問しかできないが、温和そうな相手を狙って話しかけてみることにしている。ぺらぺらと答えてくれたが、半分くらいはわからない。たぶんフランスとかに行ったみたい。気にせずに今度スペイン行きたいんだよねと返すと、プリンプリン、チュリ
もっとみる留学日記#71 24.3.9.
日本人とお菓子作り。同じメンバーで定期的に寄り合っている。今回はりんごのクッキーを作った。最初はアップルパイを作る予定だったが、パイ生地がどうも手に入らなかったので、手持ちの材料で作れるようにレシピを変えた。何度もお菓子を作ってきただけあって皆基本が板についてきている。気づいたときには誰かが洗い物やらオーブンの予熱やらをすでに済ませてくれている。途中キッチンにモロッコ人が来たのでおすそ分けしてあ
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