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橙は、半透明に二度寝する(阿部洋一)を読んだので感想

久しぶりに阿部洋一さんの漫画を読んだ。

メロンブックスかジュンク堂においてあった、羊の女の子が先輩のこと大好きすぎて、世界滅んじゃった的な、そんなお話が初めての出会いだったかな。ディストピアを先輩とどうやって生きていくのかみたいな、でもその世界は実は……。てな感じのお話だったかな。とにかく世界観が今まで読んできたマンガのなかでは比較できないほどに、ぶっ飛んでいて個人的に衝撃を受けたのを覚えていている。

阿部洋一さんは、漫画でしかできない表現をとことん追求している、そんな作家さんなのではないかなと個人的には思っている。

これは多くの漫画に共通していることかもしれないけど、阿部洋一さんは、そのなかでも群を抜いてすごい。トップオブトップ。少なくも私はそう思っている。

読み終わって、結局なにがこの漫画のテーマなのだろうと。阿部洋一さんの漫画はそういった読後感をもつものが多い。

それはたぶん、究極までに抽象化されたメッセージを、一度や二度でもは私たちが読み取れないからなんだと思う。

さらっと読んでしまうことがとても勿体ないようなそんな漫画。その独特な世界観にどっぷりとハマったあとは、じっくりとそのメッセージ性をくみ取りたい。

別に変に評論家気取りになろうと言っているのではなくて、そうならざるを得ないマンガというか。

普通に共感をさそうような、ありふれた漫画であれば、深く考えるようなことは必要ないかもしれない。登場人物の誰が好きとか、あのシーンがじーんときたとか。そういう楽しみ方のレベルをしていればいいだけだから。

深く考える漫画っていうのは、その楽しみ方に加えて、自分にとっての学びというか、今後の自分の人生のために何かを吸収してやろうとか。そういう態度でもって読んでいくもののことを指すんだと思う。

少なくとも私はそういう読み方をまだ阿部洋一さんの漫画ではできていないような気がする。

読んでいて、するっと、どこかから、抜け落ちていくような感覚が、ずっとある。

なんか感想っぽいことが書けていないような気もするが。

もう一度マンガボックスを掘り返してみて、阿部洋一さんの漫画作品をじっくり読み返してみよう。そうしてまた書くことが決まったらnoteに書いていけたらなと思う。

しかし、このままでは一つも「橙は、半透明に二度寝する」の感想を書けていないことになってしまうので、少しだけ書いてみる。

一言だけ。

思春期の若いやつらが悩み、苦しみ、怒り、恋をして……

そういったありふれた感情をコミカルに、誇張して、なかには若いやつらがあっけなく死んでしまうときもあって……

でもその死もなぜか、この世界のなかでは自然に溶け込んでいて。死という存在が私たちの世界とは違うベクトル空間にあって。その方向がどこに向いているのかなと思ってみたりして。

大人という視点から、傍から、そんな感受性豊かな彼らを眺めたとき。

本当に大人という存在は、いつのまにか、こんなにもつまらないものになってしまうんだなと。大人は自分の都合のいいように、気持ち良くなるためだけに、感性をすり減らしてきたのだろうな、とか。

そんなふうなことを考えてみたり。別にこういうことはマンガを読まなくても、日常的に呟かれている何気ない一般論なのかもしれないけど。マンガを読んでそれを感じることとは、とても大きな差があるわけでして。

今回はこのくらいにしておこうかな。

また読もう。


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