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猫乃ひろば
2024年5月27日 17:07
らしくない言葉だ。 本当に言うつもりなんてなかった。伝わるとも思っていなかった。ほんの、古いおまじないのつもりで呟いたのだった。「『月が綺麗ですね』」「あれは人工月よ、西野くん」 前を歩いていた彼女は振り返って、いじわるそうな笑みを浮かべながらこちらを見てきた。僕が何か間違えると、彼女はいつも手を口元に当ててからかうように笑う。「こっちが本物の月」 彼女が指す方をよくよく見ると、