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【詩人の読書記録日記】リターンズ! 1月8日~1月14日

はじめに

こんにちは。長尾早苗です。もうしばらくやっていなかった読書記録日記なので、なんでこんなに早く読めるの!?と疑問に思われた方も多いと思います(実際にイベントなどで直接聞かれたりします)が、以前図書館に勤めていた経験があって、そこでいわゆる「良い本」を探して読んで図書新聞で紹介する仕事と、図書館内で展示してあらすじを書くポップを作る仕事をしていました。勤務時間中に利用者さんが来ない時間を見計らってバックヤードで読んでいたので、それで早くなったんだと思います。
誰かに本をすすめたい!という気持ちはその頃からあります。今週もよろしくお願いします。

1月8日 日曜日

今日は予定のない休日だったので、家でYouTubeの自作詩朗読の録音作業をする。一月に入ってから結構作ったので、ストックがたまっていい気分。ZINE『USO4』の自由港書店の店主、旦悠輔さんのエッセイを読み、旦さんの活動をずっと応援していきたいと心から思った。自由港書店さんにはまた行ってみたいし、東京に来てくれた時にはまた旦さんに会いたいと思う。

夏目漱石 坪内稔典編『漱石俳句集』岩波文庫

わが恋は闇夜に似たる月夜かな
初夢や金も拾わず死にもせず
我に許せ元日なれば朝寝坊
自分にストイックすぎるほど厳しい漱石。そんな彼は二千もの句を遺していたそうです。その中の848句が掲載されているのですが、すこしのおかしみと夜の暗さとロマンチストさがあふれていて、ああ漱石だなあと思って読みました。

小林聡美『読まされ図書室』宝島社

小林聡美さんが各界の人々に推薦された本を「読まされる」という企画。いやあ面白いですね。井上陽水さんは松本清張を推薦していて、その理由が「こういう不安や緊張は小林聡美さんにはない」と言い切っているところも面白いし、それを読んだ小林聡美さんの真面目さにも感動してしまう。よしもとばななさんの推薦する佐野洋子さんの『死ぬ気まんまん』はわたしもすごく好き。こういうおばあちゃんになれたら最高だよなあと思ってしまう。わたしたちはいずれ死んでしまうけれど、それも自分の中のある一つの通過点のようにとらえていきたいです。

1月9日 月曜日

田園風景のなかを、図書館行きのバスは走っていく。のどかな休日。少なくとも、わたしにとっては。最近はコワーキングスペース行きのバス停で執筆して、コワーキングスペースで推敲したり事務作業をしているのだけど、それもなんだか日課になりそう。
散歩も続けています、体力と気力、どちらも使って考えたいことがあるのです。

リチャード・ブローティガン 藤本和子訳『西瓜糖の日々』河出書房新社

コミューンのような、淡い楽園のような世界「アイデス」は、静かで静謐な死に平穏に憧れているような世界。そしてアイデスと対照的に、「忘れられた世界」がある。この中の「わたし」は詩人なのだけど、小説を紡いでいくうちに詩語が小説となって立ち現れてくる。
人間と同じ言葉をしゃべる虎、甘くて残酷な世界。平和とは、平穏とは、愛とは。静かに見る夢のような世界のなかでの人々を描いた物語です。

1月10日 火曜日

今日はコワーキングスペースで知人からいいことを聞き、作業が捗る。この二日間でたくさん歩いた!

ジョン・マグレガー 真野泰訳『奇跡も語る者がいなければ』新潮社

平穏なはずのいつもの日常も、夕方の凶事が起こるまでは誰もがいつもを暮らしていたこと。ある通り沿いの人々の日常が、細やかに描写されます。その細やかさは時折、うるさいほどに自分の中に声や音を鳴り響かす。そう、夕方の凶事までは。夏の終わりのある一日だけを切り取った三人称視点の物語と、その時に少女としてその通りにいた女の子が三年後に予期せぬ妊娠が発覚して、自分でもどうしていいのかわからなくなるのだけど、その二つの物語が三組の双子たちによって編まれていきます。
日常は時折自分だけではない日常の音が紛れ込んでくると、騒音のように感じたりするけれど、それがわたしたちの生きる道で、生きていく奇跡なんだなと思いました。

1月11日 水曜日

今日は図書館に行き、本を二冊借りてくる。しかし読書のフォースと共にいなかったので、明日こそ読書のフォースと共にあらんことを!

1月12日 木曜日

本を読む時間が取れないなら朝起きて朝食を取ったらすぐに読めばいいじゃないのとアイデアを思いつき、実行。朝起きて作業するまで二時間ある。もうそろそろ週末の予定を立てなきゃなと思うのだけど、バスだけで横浜まで行っている間に詩誌の合評会がGoogleドキュメントでオンライン・リアルタイムあるので、横浜までのバスの車中でコメントをすることにしてみたい。バスの乗り換えの地点などを調べて、楽しみが増えました。

津村記久子『とにかくうちに帰ります』新潮社

他の人と働いていると、誰しも人間関係がおのずとできあがってきて、時折自分や他の人がミスしたり。そういうことって大きな事件じゃないし、取り立てて思い煩うことでもないのだけど、なんだかな、なんだかなともやもやしてしまう。
津村さんはそういう「なんだかな」をきちんと言語化してくれるからすごくスッキリする。
この中に収められている「職場の作法」は「こういうひと、いる!!」と思わせてくれるし、気の合う同僚って不思議と仕事をしていて気持ちがいいと思えるからいいなと思う。「とにかくうちに帰ります」は、ただただ会社から帰宅するだけの物語なのに、なんだか「事件」というほどではないのだけど、その人にとってみたら大きなことだったりすることが面白いなと思う。

小川洋子『密やかな結晶』講談社文庫

ずっと前に読んでいたのだけど、ラジオで紹介されていてまた読みたくなりました。
一日に一つ、その島では何かが消滅する。その記憶も三日たてば忘れてしまう。それにかかわる仕事をしていても、そのものがなくなってしまっても、不思議と次の仕事が待っていて、島民たちはそんなに苦労はしていません。
話者のわたしは小説家で、編集のR氏は記憶をずっと取っておける人。しかし、記憶狩りと言って、記憶を取っておける人のことを収容してしまう秘密警察のようなものができて、最後にわたしが失ったものとは……。
何かがアンバランスで、何かが切なくて美しくて。こんな切ない気持ちにさせる物語が存在するということに、わたしも少しだけ美しいものを見た気持ちになって胸がいっぱいになる。

1月13日 金曜日

今日は一日、家で軽作業をしていました。主にドキュメント作成が多かったように思います。朝読書はかなり良くて、はまりそう。一人の時間ってこんなに捗るんだと思いながら。内田洋子『モンテレッジォ小さな村の旅する本屋の物語』井戸川射子『この世の喜びよ』フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』津村記久子『現代生活独習ノート』を予約。

グアタルーペ・ネッテル 宇野和美訳『赤い魚の夫婦』現代書館

この一冊は二つのラジオを聞いて恐る恐る読みました。
小川洋子さんたちのメロディアスライブラリーでは「夫婦」ということをパーソナリティのお二人が長い年月やっているからでしょうか、子育ても経験している女性二人だったので、わりと笑い飛ばしていました。
ダイチさんとミエさんの文学ラジオ空飛び猫たちでは、若い男性のお二人の語り口で語られていて、メロディアスライブラリーとは違う印象。
あらすじを簡単に言うと、表題作「赤い魚の夫婦」は最初の出産を控えた女性と、その夫の夫婦の物語。家にいて不自由な彼女に友人が赤い魚を二匹プレゼントするのですが、この夫婦は赤い魚たちに暗喩されるように少しずつ関係がこじれていきます。
「夫婦」は繊細な問題ですし、日常の中にきっとありそうな不穏を書かれているので、起こったら嫌だなと思う問題をすくいとるように書かれているので、うーん難しいな。読む人の環境の違いによっても読後感は変わってくるような気がします。他にも日常の中にありそうな不穏が他の短編にも描かれていて、それが動物に仮託されている小説が多いように感じました。

1月14日 土曜日

今日から明日にかけて、Googleドキュメントにて、ある詩誌の合評会!コワーキングスペースで集中して書き込む。デスクトップの隣には『その丘が黄金ならば』がおいてある。時折読もうと思う。
明日は思い出がたくさん詰まった、横浜駅西口にあえてバスのみで行きます!その最中に合評もするつもり。

益田ミリ『スナックキズツキ』マガジンハウス

作業中の息抜きに、コワーキングスペースで知人たちの持ち寄り本棚を見ます。その中の知人の本棚の「今日のおすすめ本」に入っていた漫画です。
傷ついた人しか見られない、入ることができないというソフトドリンク専門バー、「スナックキズツキ」。そんなスナックに来る人々はそれぞれにそれぞれがゆるく関わっているのだけど、その関りさえも気が付かない些細なことで関わっている。それでも、誰かが誰かを傷つけ、そして傷つけた側もまた他の誰かに傷つけられている。でも、自分が「傷ついた」体験をほどいていくように、明日も頑張ろうと思える。
以前テレビドラマにもなったそうですね!
わたしは益田ミリさんの絵のあのゆるい感じと、冷静に物事のストーリーを編んでいく手法が好きです。コワーキングスペースに登録するまでは友人から益田ミリさんの『今日の人生』をおすすめされていました。そちらもスマホの試し読みで読みましたが、読んでみようかな。

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