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しんしんと降る雪の中――「坂東玉三郎 はるのひととき」

昨年7月、南座で「夏のひととき」の公演があった。
坂東玉三郎さんと春風亭小朝さんとの共演で、お二人の対談にはじまり、小朝さんの落語「一豊と千代」でひと笑いして、玉三郎さんの「由縁の月」で締めくくられる。

玉三郎さん目当てで行ったのだけれど、落語の面白さを知った日でもあった。こうして世界が広がっていくのは嬉しい。

この対談の時に、新春にも二人での公演を予定している、という話があったので、絶対に行くぞ!と楽しみにしていた。


今日は「はるのひととき」公演の初日。
大阪松竹座の入り口には「満員御礼」の札が。平日だというのに、さすがですね~。


前回とは趣向が変わって、一幕目は「越路吹雪物語」。越路吹雪さんをテーマに、小朝さんがテンポよく、笑いあり涙ありの人情噺を繰り広げる。話の合間合間に、玉三郎さんが越路吹雪さんの歌を歌う。ドキュメンタリー映画を見ているような面白さだった。

小朝さんはさすが話のプロ。越路吹雪さんの人生を語りながらも、ところどころ、会場を巻き込んだ落語的笑いが入る。


越路吹雪さんを知らなかったのだけれど、知らなくてもその生き様に魅了されてしまうお話で。ファンの人だったらもっと楽しめたんだろうな。

舞台裏で実はいつもとっても緊張していたこととか、衣装2着で3000万とか(!)、ご主人の内藤法美(ないとうつねみ)さんとの愛情に満ちたやり取りとか。


私も死に際、やり切って、「もういいわ」と言える人生を送りたいものです。


玉三郎さんがシャンソン歌手として公演をしているのは知っていたけれど、今まで聞きに行ったことはなくて。ここで聞けたのは嬉しかった。

歌っているときに、ところどころ歌舞伎の玉三郎さんが見え隠れしていて、ちょっぴり不思議な感じ。

最近のJPOPを聞いていると、字幕見ないと何て言っているのか聞き取れないのだけれど、さすが歌舞伎役者というか、シャンソン歌手は皆こうなのかな?とても聞き取りやすくて、歌詞がすっと心に入ってきた。

衣装もキラキラで、歌のたびに変わるのが楽しい。
立ち姿もさすがの美しさ。


第二幕は小朝さんの落語「芝浜」。奥さんのファインプレーによって遊んでばかりの夫が更生するお話だけれど、夫婦どちらも、お互いに愛情があるんだなーっていうのが伝わってきた。

あの、パッパッと夫婦の話が切り替わるのに、ちゃんと別人に聞こえるのがすごく不思議。声色とか話し方とか、ちょっとした仕草で、一瞬で画面が切り替わるんだなー。


第三幕は玉三郎さんの舞踊「雪」。

この前京都に、雪が降った。しんしんとした静かな雪。
周囲の時が止まって、雪が地面に落ちる音だけがはっきり聞こえてくる。自分だけがゆっくりと時を刻んでいるような、あの感じが、舞台にあった。
息を吐くのも憚られる。
真っ黒な背景が、白の衣装を際立たせる。


この前バレエ公演を見たところだからだろうか、「静」の美しさがより一層感じられた。満開の桜の花を楽しむバレエと、最後の花びらが散ってゆく様子を慈しむ舞踊、みたいな。どちらも、美しい。


今日もまた、幸せなひとときだった。
玉三郎さんの公演を見るたび、じゅわーーっと心が満たされる。そして、自分の身のこなしがいかに粗野かを反省して、姿勢やふるまいを心がけようという気持ちになる。

まぁ、すぐに、いつもの日常に飲み込まれてしまうのだけれど。

日本舞踊、習ってみたいなぁ。



芸術は心の栄養!


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