【絵本】「今夜、降るでしょう」
*
「ねじちゃん。今年もあともう少しでクリスマスツリーが降るよ!」
「クリスマスツリーが降る??」
おやおやおふたりさん。
さも当然のように言うではありませんか。
あ。でもそういえば
おふたりさんお気に入りのラジオ「こびとの世界」でも
この前そんなことを言っていたっけ。
もともとこびとの世界ではクリスマス前になると
「ツリーがないお家にクリスマスツリーを届ける」
というイベントが行われます。
そしてここ人間の住む世界でも最近では
自宅にクリスマスツリーがないお家が多くなってきているとか。
でもみんな本当はツリーを飾って楽しみたいはず…
そこで、そんな人々のためにも今年から
人間界にもクリスマスツリーを降らせよう!
ということになったそうです。
ここでみんな気になるのが「いつ降るのか?」ですよね。
実はそれを知る唯一の方法がなんと
ラジオ「こびとの世界」なんですって。
しかもそれがまた、毎年その当日に突然
「今夜、降るでしょう」と告知するらしいんですよ!
ですからこの時期こびとの世界ではみんな
ドキドキしながらラジオを聴いているんでしょうね。
もちろんこのふたりもみんなと同じく
毎日ドキドキしながらラジオを楽しみにしておりました。
そしてついに…
「ねっ、ねじちゃん大変っ!今日だってーー!!」
「おっ、とうとうだね!じゃあ今夜はしっかり暖かくしないとね~」
おふたりさんはこの日のために用意していた
お揃いのコートと帽子を身につけ、急いで屋根に上っていきました。
それからふたりは冬の寒い夜空の下
屋根の上で空を見上げながら
今か今かとじぃっと待っておりました。
すると…
「あっ!向こうからクリスマスツリーがやってきたよー!」
夜空に突然一本のクリスマスツリーが現れたと思ったら
次から次へとたくさんのクリスマスツリーたちが
流れ星のようにぴゅーんと降ってきたではありませんか!
それらはまるで流星群のようにキラキラと輝いていました。
「わぁ~!きれいだねぇ!」
これにはおふたりさんも大興奮!!
空に向かって拍手をしながら喜んでいます。
すると今度は急に静かになり、そっと目を閉じました。
ふたりはキラキラと輝くクリスマスツリー群に向かって
心の中でこんなお願い事をしました。
今夜ふたりが本当にしたかったこと。
それは、クリスマスツリーがみんなのもとへ届くその瞬間に
「みんなの幸せを願うこと」だったのです。
もしかするとおふたりさんは
「流れクリスマスツリーに願い事をすると願いがかなうかもしれない」
そう思ったのではないでしょうか。
みんなのことが大好きなふたりはいつだって
みんなのことで頭がいーっぱい!
そんな「おふたりさん」なんです。
それからふたりは
クリスマスツリーが消える最後のその瞬間まで
お願いし続けたのでした。
*
「ねじちゃん、ただいま~」
流星群のようなクリスマスツリーが降る時間も終わり
お家の中へ戻ってきたおふたりさん。
ずっと外にいたのですっかり体が冷えてしまいました。
そんな夜は温かいココア風呂に入るのが一番!
クリスマスツリーが降った素敵な夜に入るココア風呂は
そりゃあもう格別です。
幸せな心地に包まれたおふたりさん
今夜はなんだかいい夢がみられそうです。
そうそう
おふたりさんのところにもちゃーんと
キラキラのクリスマスツリーが届いてましたよ。
おふたりさん、よかったですね。
それからふたりは
そのキラキラと輝くクリスマスツリーを眺めながら
ゆっくりと眠りについたのでした。
(おしまい)
この記事が参加している募集
最後まで読んでいただきありがとうございます🐨! いただいたサポートは創作の為に大切に使わせていただきます🍀