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産後うつチェックリストがキライ。

昨今、産後うつという病が大分認識されるようになり、妊産婦だけでなくそのご家族もしっかりどういった危険性を持つのかご理解されているものと思います。

※産後うつのメカニズムについては以下の記事に書きました。

しかし、分娩直後(入院中)の産婦に対し、産後うつに該当するか、またはこれから発症するかを判断するのは大変難しいことです。人手が足りず不可能なことですが、仮に心療内科の先生が産婦全員にカウンセリングできたとしても全員見つけ出すのは困難でしょう。そこで、産後うつかどうかを診断するための指針として、こんな点数票があります。

エジンバラ産後うつ自己評価表(EPDS)

産後うつのスクリーニングを目的として作られた10項目の質問票です。1987年に英国の精神科医たちから発表されてから、世界中で導入されているそう。そんな昔からあった割には日本が産後うつに注目し始めたのはここ10年前後の話な気がします。やっぱり日本は自己犠牲の精神が強いから、こういったものは浸透しにくかったんでしょうか。

❶笑うことができたし、物事のおかしい面もわかった
(0)いつもと同様にできた
(1)あまりできなかった
(2)明らかにできなかった
(3)まったくできなかった

❷物事を楽しみにして待った
(0)いつもと同様にできた
(1)あまりできなかった
(2)明らかにできなかった
(3)まったくできなかった

❸物事がうまくいかなかったとき、自分を不必要に責めた
(3)はい、たいていそうだった
(2)はい、ときどきそうだった
(1)いいえ、あまりたびたびではない
(0)いいえ、そうではなかった

❹はっきりとした理由もないのに不安になったり、心配した
(0)いいえ、そうではなかった
(1)ほとんどそうではなかった
(2)はい、ときどきあった
(3)はい、しょっちゅうあった

❺はっきりした理由もないのに恐怖に襲われた
(3)はい、しょっちゅうあった
(2)はい、ときどきあった
(1)いいえ、めったになかった
(0)いいえ、まったくなかった

❻することがたくさんあって大変だった
(3)はい、たいてい対処できなかった
(2) はい、いつものようにはうまく対処しなかった
(1)いいえ、たいていうまく対処した
(0)いいえ、普段通りに対処した

❼不幸せなので、眠りにくかった
(3)はい、ほとんどいつもそうだった
(2)はい、ときどきそうだった
(1)いいえ、あまりたびたびではなかった
(0)いいえ、まったくなかった

❽悲しくなったり、惨めになった
(3)はい、たいていそうだった
(2)はい、かなりしばしばそうだった
(1)いいえ、あまりたびたびではなかった
(0)いいえ、まったくそうではなかった

❾不幸せなので、泣けてきた
(3)はい、たいていそうだった
(2)はい、かなりしばしばそうだった
(1)ほんのときどきあった
(0)いい、まったくそうではなかった

❿自分自身を傷つけるという考えが浮かんできた
(3)はい、かなりしばしばそうだった
(2)ときどきそうだった
(1)めったになかった
(0)まったくなかった

30点中9点以上で陽性評価。

出典: 東京都福祉保健局

これを、簡単な産後アンケートなので気負わずやってみてくださいね〜と助産師さんに渡され、のちほどそれについてカウンセリングされます(病院によると思うけど)

一人目の産後も結構何度かやらされた気がするので(入院中以外にも一ヶ月訪問とか)私自身は慣れてしまった感もあったんですけれども
入院中同室の女の子が言ってました。
「日本語分かりにくくないですか?こんなまわりくどい言い方されても意味わかんないんですけど…」
確かに。医療カウンセリング系の質問票って基本的に点数評価なのでこういう書き方が多いんだけれども、不慣れな人には解読しにくいですよね。

陽性だった時の対応。

陽性=産後うつ及びなんらかの精神的問題を抱えている可能性あり、と診断され、別室でカウンセリングを受けることになります。
この質問票は自己評価であり、評価結果だけでは信頼性に欠けるので(というか助産院とかだとまず医師がいないし)助産師がカウンセリングを行い、ハイリスクの判断された場合に心療内科へ紹介される仕組みになっていることと思います。

私は一人目の時に陽性でした。24時間母子同室育児の母親は大概引っかかるのでは…?と思うのですが、別室に呼び出され、かなり執拗に質問されました。カウンセリング相手の助産師が威圧的だったわけではないですが、個室であるということも含めた圧迫感が強く、返答を翻して、産後直後はこうだったけれどもう大丈夫、的な回答を繰り返したように思います。それで問題ない判断をされてしまうのだから、ほんとに産後うつだったとしてもこのアンケート結構ザルなのでは、と疑問に思ったのもこの時です。

それでも陽性だったという記録は残っているからなのか、その後の授乳室での助産師さんの対応は腫れ物扱いでした。寝てないので同じことを何度も聞いてしまうのですが、そのたびに指摘されて自分がおかしいことを自覚させられたり、必要以上に精神状態を確認されたり。私にはかえってそれが辛かった。普通の産婦と同じように扱ってほしい。授乳室でそんな目立つような対応しないでほしい。アンケートに正直に答えたことをとても後悔しました。今後、この手の質問票で問題と思われる回答はしないようにしよう、と心に決めました。

自己評価に対する信頼性。

そもそも自己評価なので、例えば軽度の産後うつであればそれを隠そうとします。
「子供を可愛いと思えない、なんてダメな母親だ。隠さなくてはいけない」
という理性が働いていたら正確に回答しないでしょう(私が前述した通り)
逆に重度のうつ病であれば、もはや自分のことを正しく評価ができないのでこの質問票自体が無意味な気がします。

エジンバラ質問票に関して、定期的に正当性の調査報告はされており、妥当と判断されて導入されているのはわかります。でもなんか、ないよりマシ、という使われ方をしてるような気がしてならないんですよね。確かに最初の評価の時点で産婦全員に毎回精神科や心理カウンセラーの人員を割くことは難しいし、そもそも助産院だった場合、物理的にも精神科の介入は難しいと思います。ただ、自己評価のアンケート一枚ではなく、例えばそれを助産師と対面の質問形式にするとか。ベースがエジンバラだとしてももう少し深層心理がわかるような、患者自身の自己評価ではなく客観的にみれるようなシステム作れないのかなと思いました。

単純に、この質問票質問わかりにくいですしね。回答が点数性だったとしても、エジンバラをベースにもう少し分かりやすい書き方できないんでしょうか。まあ、できないんでしょうね。その分評価に時間を取られるし、そのアレンジに対する正当性をまた調査する必要がでてきますか。でもちょっとモヤモヤ。

今回の産院でのエジンバラ。

ちなみに私は今回のエジンバラは満点で出さず、いくつかは点数をつけました。娘がNICUに入って一番落ち込んでる時に配られたので、これで満点だったら逆におかしいかな、と思ったためです。

結果として助産師さんに
「今の環境でいうならこの点数は妥当だと思うので、アンケートの内容は全然問題ないです」
って言われて内心ガッツポーズしました。
やったーーーちゃんと正しい答え書いたぜ。
もはやこの時点でアンケートの意味って感じですが、もう腫れ物扱いは嫌だったのです。
エジンバラ質問票以外が自体が悪いわけじゃないですが、もう少し正しく使えるといいなあと思っています。欧米ではもう少し柔軟に使われてるのかしら(でも米国ではそもそも妊婦健診が3回、産後3日で退院とか聞いた)引き続きもう少し調べてみようと思ってます。何もできないけれど、ママとして考えることはやめたくないからね。

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