連載小説『ネアンデルタールの朝』⑪(第一部第3章‐1)
第3章
1、
「ビール飲むか?」
冷蔵庫から500ミリリットルの缶ビールを2本取り出してきた父は言った。
「うん」
民喜は頷いた。父はすでに飲み始めていたようで、幾分顔が赤い。
この度の帰省で父の民夫(たみお)とは7か月ぶりに顔を合わせたが、少々疲れた顔をしているのが気になった。目の下には微かにくまもできている。父は今年でちょうど50歳であるが、実年齢よりも幾分老けて見えるかもしれない。短髪の髪の毛には白髪が目立ち始めている。
父は缶のふたを開けて民喜のグラスにビールを注い