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#11  やりたいことが見つかっても、大企業内定がゴールになっていた...「感情を解放」させてたどり着いた、福島から平和への挑戦〜野地 雄太さんのケース〜

アート思考、システム思考、認知行動療法など、学術的アプローチで「本当のやりたいこと」「人生を通して追い続けたい問い」を見つけ、深め、広げるためのプログラム「NCS(Narrative Career School)」。NCSを卒業し、自分らしい人生を歩み始めた若者たちが語る過去の私、今の私。
https://bit.ly/3wczFSH

■NCS受講のきっかけ:夢だった国際協力を断念。漠然とした不安の中、自分がやりたいことを探したい

中学の時は、社会に名を残す仕事をしたいと思っていました。政策作りや、政治に関わるなど、何か人の記憶に残るようなことがしたいと考え、そのために勉強をして偏差値の高い高校にいくと決めていました。

ところが高校入学目前に、東日本大震災が起こりました。今までは漠然と、世の中にインパクトを残したいと思っていましたが、それを機に取り組むべきものが明確に。震災という目に見える社会課題に対し、福島の高校生だからこそできることに取り組みたいと考えました。

具体的には、農家さんと一緒に、福島の特産品である桃の風評被害をなくしていくためのPRを行いました。SNSで桃の成長や、農家さんが手間暇かけて育てる様子を発信。夏には地元の小学生を集めて収穫祭を開き、地元の魅力や誇りを感じてもらうワークショップも開きました。

一方、高校2年生でベトナム戦争について知ってから、将来は国際協力に携わりたいと思うようになりました。生まれながらに平和に暮らせない人たちがいることにとてもショックを受けたことを覚えています。立場の弱い人たちが戦争の被害を受けてしまう現実に対し、自分の努力でマイナスの状態から大きな変化をもたらしたいー。以来、日本の外の世界に目を向けるようになり、アメリカの4年制大学への進学を決めました。

もともと本を読むだけじゃ満足せず、興味を持ったものに対して自分の五感で確かめたいという性格の自分。大学3年終了時に休学をし、途上国でのインターンや、ソーシャルビジネスの起業家にコンタクトをとり、お話を聞いていました。国際協力の華やかさの裏側で、事業の泥臭さや苦労を知り、自分が将来途上国とどのように関わっていきたいかイメージしていきました。

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(バングラデシュの街並み)

そんな中、あることがきっかけで国際協力の道を断念することに。2018年11月、起業家にインタビューすべく、バングラデシュに滞在していた時の出来事。Uber降車後、ドライバーから高額なチップを要求されました。交渉がうまくいかず、本気で走って逃げていたところ、現地の大勢の人に囲まれ、泣く泣くチップを払うことに・・・。

その時、「バングラデシュのために何か役立とうとしているのに、自分はどうしてこんな目に合わないといけないんだろう?」という怒りにも近い感情が湧き上がりました。それと同時に、「途上国のために」と自分の心を犠牲にしても私は続かない、ということにも気付かされました。もっと自分が思い入れの持てる場所で、自分が素直にやりたい!と思えることをしていきたいと考えるようになりました

大学4年生が半分が終わった頃、2度目の休学を決意しました。当時自分がやりたいと思っていた、日本でのインバウンドや在日外国人向けのサービスで起業をしようと思っていたからです。しかしちょうどその頃、コロナが蔓延してきて。このまま起業しようか、それとも就活しようか・・・漠然とした不安がある中で、NCSの「やりたいことを見つける」というフレーズが目に止まり、2020年2月から受講し始めました。


■NCSにて:やりたいことを言語化でき、大企業からのオファーも!

ワークを通して自分の価値観を掘り下げ、前からぼんやりと思っていたことを言語化することができました。その中で出てきたたくさんの「やりたいこと」を、自分のライフプランの中に落とし込み、自分の向かいたい方向を決めることができました。

私が見つけた「やりたいこと」:
①子供たちが多文化に触れ、世界に関心を持ってもらえるようにするための「ファシリテーター
②様々なバックグランドを持つ人がコラボレーションできるようになるための「コーディネーター
③世界を身近に感じ、違いを受け入れ、楽しめるような人材を増やす「教育者
④疲れた人に最適な温泉を提案する「温泉マイスター

ワークの結果見えてきたことは、自分の根底には「平和で誰もが楽しく生きられる社会を作りたい」という軸があるということです。インバウンドや在日外国人向けのサービスで起業したいと思ったことも、国際協力に携わりたいと思っていたことも、一見違うようにみえるけれど、実は全て自分の軸に通じるものがありました。アメリカという多様なバックグラウンドをもつ人々が集う社会で生活したことも影響しているのかもしれません。

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(日本に住んでいるムスリムの方とのランチ会)

目の前の相手に対し、想像力や思いやりを持つことができれば、立場の違う人にも優しく接することができるのではないか。そうすれば、社会の分断や争いごとも解消されていくのではないか。誰もが相手を受け入れ、幸せに暮らせるような教育や社会の仕組みを作っていきたいと考え、私は就活することを決めました。その結果6月には、外国語関連の教育事業を手がける有名企業から、めでたく内定をもらうことができました!

■NCS箱根合宿:本気の仲間たちが、本音に従うことの大切さを教えてくれた

ところが、内定をとった後も、心の中にわだかまりが残っていました。その企業は、英語教育を通して、子供たちの異文化理解や価値観を広げていく事業をしているから、自分のやりたいことと合致しているはず。それなのになんとなく「このままで良いのだろうか?」という気持ちが消えませんでした。そこでもう一度自分の感情と向き合うため、NCSの箱根合宿に参加しました。

同じような意識をもつ若者と一緒に過ごす合宿は、一言でいうと「ガチ」でしたね。わざわざみんな時間とお金をかけて箱根まで来るんですから。

特にコミュニケーションのグループワークでは、「氣(イメージや意識を言葉にのせること)」を使いながら自分のやりたいことやキャリアを伝える練習をしました。私が話した時、ある参加者に「本当にそう思ってる?」と聞かれました。その的を射た発言に、正直ドキッとしました。

思い返すと、NCSでやりたいことは明確になっていたはず。でも就活の途中から「企業から内定をもらう」ことが目的になっていきました。リクルーターと面談しながら作った自分史も、企業に内定されることをゴールに、そこから逆算したストーリーに変わっていました。

自分の純粋な感情に従って、本音で話すことを忘れていた私。それに気づいた瞬間から、自分一人で考えるのではなく、本気の参加者との対話によって、「もっと自分の感情に素直になり、今後のキャリアを描きたい」と感じるようになりました

人々が多文化に触れ、その違いが受け入れられる社会を作りたいという軸はぶれていない。ただ、ビジョン実現のために、できるだけ裁量が大きく、いろんなステークホルダーと関われる仕事に就きたい。東京ではなく地元・福島のコミュニティに入り込み、地域から社会を変えていきたい。優良企業からの内定を蹴り、リスクを冒してでも、自分はやりたいことに挑戦したいーー。

箱根の大自然と美食に英気を養われ、自身の五感を解放しながら、心の奥に追いやられていた自身の声に耳を傾け、とことん向き合っていきました。そして合宿後に就活を再開し、納得のいく就職先に巡り会うことができました。


■NCS卒業後:「やりたいこと」の実現に向け、まずは地域社会を変えていく

現在は、VENTURE FOR JAPANというプログラムを利用し、福島県相馬市で働いています。社長の右腕として、イベントのプロデュースや、中高生向けの教育プログラム、福島県産品の販路開拓事業などの取り組みを通して、相馬市や周辺地域の課題を解決し、持続可能なまちづくりを行っています。

なぜこのプログラムを選んだかというと、社会を変えるには、社会にいる人々の心を動かすことが必要だと考えたためです。行政や議員、商工会議所、民間企業など、「様々なステークホルダーを動かし、ムーブメントを起こしていくには何が必要か?」その力学を知る必要があると考えています。地域にはそんなステークホルダーが身近にいます。ベンチャー企業で小回りがきくからこそ、柔軟な働きかけができ、社会を変えていくことができると考えました。

入社して1年が経とうとしていますが、実際に様々な業務に携わらせてもらっています。目の前の仕事に一生懸命になりすぎるあまりに、マクロ的に自分のキャリアを考える視点を忘れてしまう時があります。でも、福島というフィールドで、自分のアイデア次第でなんでもトライできる環境にワクワクしながら、いろんな人に出会ってスキルを身につけることができています。

将来的には自分の留学経験を活かして、東京にはないものを海外から福島に持ってきて、ローカルなのに世界とつながるような、注目される地域にしていきたいです!

■NCSを受講しようか迷っている方へ:人生に対する本気度が高まります

最後になりますが、NCSに入って一番大きな収穫は、メンターや同じ受講者との出会いだと思っています。生きることに対して真剣に向き合い、本音で語り、誠実であることを大切に思っている、そんなコミュニティの中で、深く繋がれた人がたくさんいました。

例えば、僕についてくれたメンターは、僕の悩みを引き出して傾聴し、グラレコを通じて心の葛藤やモヤモヤを整理してくれました。また、受講生の中には社会人や転職経験者もいたため、いろんな視点から1on1で就活のアドバイスをもらうことができました。本気で自分に向き合ってくれる人が身近にいることで、悩みを打ち明けることができ、心が楽になり、等身大の自分でいられることができました。

やりたいことを探すことって、1人でもできるかもしれませんが、限界があると僕は思います。NCSには、悩みを傾聴し、自分では気づかない・知らないことを教えてくれる人がたくさんいます。

自分も人生に対して正直に向き合おうと思えたし、それが今の充実した日々に繋がっていると感じています。誰と接するか、誰とつながるかで、その人の人生は決まってきます。迷っている人にこそ受けてほしいプログラムです。


野地 雄太(のじ ゆうた)
福島県福島市出身。ミネソタ大学卒。在学中はジャカルタでのインターンや、世界各国でソーシャルビジネスの現場を視察するなど、グローバルなキャリアを模索。一方で、日米学生会議へ参加し、福島の現状と県外に住む人々の認識の間にあるギャップを痛感し、スタディーツアーを2度主催。現在は株式会社ミライクリエイツにて、地域コーディネーターとして福島県の地域創生や教育などの課題解決に取り組んでいる。
周りがやらないことにトライし、予想を外すことが快感。ずば抜けた行動力を持つグローカルなコーディネーター。

インタビュアー・ライター:鈴木美朝

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