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メンバー型、ジョブ型・・・そして第三の案「■■■■■型」 【やむなく前編】

HR関連のポータルや、他社人事コンサルのメルマガからのご案内は振り分けメールボックスにしこたま残っており、ウェビナーのネタや情報収集をする際のキーワードとして流し見できるようにして、200件くらい超えたところでごみ箱行き・・・よく見かけるメールタイトルとしてはやはりジョブ型・メンバーシップ型の対比構造
ジョブか?メンバーシップか?という二元論は、キャッチーで目を引きますし、コロナ禍でのリモートワークへのシフトなどでジョブ型や成果主義についての関心の高まりもあり、「これからの日本の雇用はこれだ!」みたいな流れに行っていますが・・・
中小企業の人事評価制度の構築支援をしている立場としては、「そんなに簡単に割り切れないよ」という思いと、「前職の給与水準を参考にしながら入社時の給与を決めて、給与テーブルに特例を認めて昇給をしてきてるから、そもそも給与と実際のジョブとの間に大きなギャップを抱えている社員が多い中、ジョブと給与を合わせようとしたらミスマッチか、特例での調整給が多くなって仕方ないでしょ?!」という思いやら、ここ数ヶ月、頭の中はずっとモヤモヤしてました。
↓ ↓ ↓  ジョブ型への疑問はこちらの記事にもあります  ↓ ↓ ↓

しかしながら、最近、こと中小企業においては「第三の案」の方が自分なりにはシックリきたので、今回はそれを記事にします。

1.メンバーシップ型と、ジョブ型の特徴をまとめてみよう

そもそもメンバーシップ型とジョブ型って、どんな特徴があるかをまとめてみました。

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2.メンバーシップ型はそんなに悪ですか?

よくメンバーシップ型=就社型、年功型雇用形態という説明をされます。

労働市場において四大卒を採用し、長期雇用に基づいて階層研修やジョブ・ローテーションをしながら人材育成し、採用時は低水準の給与であるが、長期の雇用を約束し、徐々に昇給して職能等級や役職が上昇して、給与が大きく上がり40代~50代でようやく発揮したパフォーマンスとペイ(年収)の帳尻があってきて、退職金で老後資金を賄えるという、終身雇用型の雇用形態の特徴と私は理解しています。

けれども、こんなメンバーシップ型の目論見通りに勤め上げている方々って何割くらいなんでしょう?個人的な見解としては大手の一握りの50代中盤~後半までの社員の方々(いわゆるバブル世代の最後)くらいではないでしょうか?
そういう一握りの層をとってメンバーシップ型と言われても、「非ジョブ型の雇用」だからといって「イコール メンバーシップ型の雇用」とはならないんじゃないかなと思っています。
また「メンバーシップ型=悪」のように取り沙汰されますが、長期的に雇用を安定させることは悪ではないと思います。トヨタの改善活動のように、メンバーシップという構造があるからこそ、連綿と続く良き風土が根付くというメリットもあると思います。
また最近、人材育成にマーケティング発想を取り入れて注目されている、ニトリホールディングスの人財開発では、エンプロイージャーニーマップ(以下、EJM。カスタマージャーニーを人材育成に活用)で社員が個々に定年までのビジョンを考える取り組み、3年をめどに個々の特性やEJMに合わせた人事異動をして、多数精鋭の人材育成に取り組むなど、これも長期雇用やエンゲージメントがあるからこそ、取り組める仕組みだと思います。
個人的な見解ですので、そうでなければ申し訳ありません)

社員の成長や変化が鈍化して、人材育成や等級制度などが形骸化しているメンバーシップ型の企業が問題なんだと思います。よって重要なのは下記のような取り組みではないかと思っています。

① 持続的に社員の成長を支援する人事機能の強化
② 多様な働き方と報酬制度を許容して
③ それを選択した社員も報酬に対して納得(定期昇給で上がり続けるわけではない)して仕事をしてもらうという、社員と企業の新たな関係を作る

また「仕事の幅」の特徴にもあるように、明確に職務型で採用しているわけではなく、ジョブローテーションをしながら幅広く育成するため、業務範囲が流動的で曖昧、役職名やポストで報いてきたため役割や職責が曖昧という点についても、組織マネジメント上の問題点です。

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3.ジョブ型雇用って言われるけど何?

ジョブ型雇用は、職務内容に基づく雇用で、職務の幅とアウトプットの評価で報酬が決まる制度と理解しています。

キャリア採用がメインで、職務スキルをベースに明確な業務範囲・役割に基づく雇用契約で、ジョブサイズ(職務の幅)で報酬が決まります。
例えばマーケティング企画、運用でリードを生み出すことにコミットする等、職務と役割・範囲・期待成果を労使ともに明確にした雇用です。よくメンバーシップ型で揶揄される「部長の仕事ができます」などの企業特有のスキルではありません。
企業特有の職務ではないため、より評価してくれる会社や、自分の職務を活かせる仕事がある会社を選ぶ傾向にあります。よって専門人材をつなぎとめておける魅力が企業にとっては重要です。

たまにHR関係のウェビナーを受講しますが、テック系企業のあるあるで、「あれ?あの人、何年か前はCRM系のマーケにいなかったっけ?」とか、自己紹介を聞くと「過去、某HRテック企業のカスタマーサクセスで、3年前に現在の会社にジョインしました」みたいな話で、これがいわゆるジョブ型の転職だと思います。(Join、言ってみたいなぁ。ちょっと鼻につくけど)

ニュースでは日立製作所、富士通、ソニーなどがジョブ型に移行などのニュースを拝見しますが、タニタの取り組みは先進的で注目しています。社員を個人事業主としてジョブの内容で契約をする「日本活性化プロジェクト(=個人事業主制度)」に2017年より取り組み、2019年9月の記事の段階では約20名がその制度を活用されているようです。

↓↓↓ 下記をご参考下さい ↓↓↓

興味深いのは、従来の仕事を「基本業務」としてジョブ型の個人事業主にスライドし、担当部署や他部門からの依頼でジョブが増加すると、個別に交渉して「追加業務」として報酬に反映されるという、正社員とフリーランスを併用したような働き方に取り組んでいる点で、お互いにジョブへのコスト意識や時間・工数意識や、外部市場との比較などから、役割・責任・仕事のアウトプット(期待成果など)をお互いに意識しながら働ける点です。


4.【ジョブ型の課題①】 ジョブと給与の整合性

タニタの例のように、確固たる変革の目的、方針、具体的制度があり、移行するのは素晴らしいことだと思いますが、一過的な社会的風潮に乗っかるのは危険です。
過去に、ジョブ型の人事評価制度への移行を図るべく取り組んだ例があり、下図のように役割ごとの職務を決め、それに人を当てはめ、誰にどのような職務を担当するか、給与テーブルを決めて人にあたはめてみると・・・
給与が人によってバラバラなんです。同じ職務内容だけど、バブル前後に就職した人、会社業績が厳しい時期に入社した人、リーマン前後に入社した人・・・数万円昇給または降給しなければならない事例が多く出て、結局、役割等級制度にスイッチし、これらの表は昇格の際の基準となる必須ジョブという形で活用方法を見直しました。

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5.【ジョブ型の課題②】 社風や組織マネジメントとの適合性

課題は①の他にも、職務型はタニタの事例のように、自分たちで追加ジョブを交渉したり、オープンかつ自律的な社風がある会社は適合すると思いますが、風土を無視した導入では、おそらくジョブのなすり合い、または見て向ぬふりという懸念も無きにしも非ずです。
あとはジョブ型のキャリアは専門職になりがちなので、キャリアの広がりは狭く、エキスパート職など専門人材の人件費の高止まりになりはしないだろうか?会社のビジョンや中期計画など、組織戦略における人材開発、教育と個々のジョブ型でのキャリア形成との整合性を、どうするのかまさに組織マネジメントの腕の見せ所となります。

6.ジョブ型に移行するフェーズとは?

ジョブ型にも一長一短ある訳ですが、移行をする場合には、下図のようなフェーズで企業の規模にもよると思いますが、1~2年位かけて取り組むのが一般的です。(ジョブの定義が明確な企業は半年くらいで移行できると思われます)

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【フェーズ1】社内のジョブ(職務)を、職種ごとにリスト化、標準化
【フェーズ2】組織の階層を明確化
【フェーズ3】階層に合わせて役割・職責・期待成果を明確化
【フェーズ4】職種・階層ごとにジョブの難易度と基準を設定、職種間調整
【フェーズ5】ジョブをヒトに当てはめ、報酬に連動させる
【フェーズ6】役割・職責・期待成果の遂行評価(毎年の給与改定や賞与で繁栄)

上記のような6つのフェーズで構築、導入、運用をすることになります。

【第1のハードル】
まず一手目が結構ハードルが高いわけです。職種ごとにジョブ(職務)をリスト化する・・・。
中小企業での導入の場合、これまで人に仕事が帰属していることが多く、標準的な業務の流れ、手続きなどを標準化することと、ドキュメントなどに言語化することは非常にハードルが高いです。どのくらいの粒度でジョブを明確にするのか、職務と作業の違いは何なのか、職務のアウトプットとは何なのか?
おそらくジョブリストがなければ、この策定に3か月~半年くらいはかかると思います。

【ジョブリスト 作り方のコツ】
作業レベルから積み上げてはダメです。本社管理系を例にとります。

1) 人事、総務、経理、財務、・・・と大分類でとらえます
2) 「人事」であれば採用、オンボード、安全衛生・労務管理、評価、教育研修、タレントマネジメント、人件費管理、規定整備・・・など中分類に分解していきます
3) 中分類の「採用」を、採用計画、キャリア採用、新卒採用、媒体選定・効果検証・・・など小分類へと細分化します。
4) おそらく4階層目になると作業・手続きになるので、大中小の3階層くらいでジョブリストをまずは整備していきます
5) 必要に応じて再分類・レイヤー変更・更なる細分類をするなど、細かくするなど、まずはガイドライン、たたき台をスピーディに進め、沼にはまらないことが重要です。

「あぁでもない、こうでもない」と検討時間を長くしすぎると、そのうちジョブ型移行に時間を要しすぎて、経営者が飽きてとん挫することになりかねません。ご注意を。

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【第2ハードル】
フェーズ4の「職種・階層ごとにジョブの難易度と基準を設定、職種間調整」するのは、これまでの第1~3フェーズで取り組んだジョブリストと、各ジョブのアウトプット(または期待成果)をもとに、職種ごとに、スタッフ職・上級スタッフ職・エキスパート職・管理職のどの階層に、どのジョブが求められるのか、基準合わせ、難易度合わせをします。
本来ジョブ型はシゴト基準ですが、そもそも基準を設定することが難しいので、少しだけヒト基準を取り入れ、多くの場合は各職種・階層でのモデル人材をピックアップして、議論を進めます。
これまでヒト基準で仕事を割り振っていたという前提があるため、そもそもモデル人材の選定が難しい面や、各部門の責任者の思惑などで仕事をかこっている場合、下位の階層の職務として振りたがらない・・・など、仕事や「思いのヒト基準」がしがらみとなって、すり合わせには時間を要するかもしれません。

よって、ジョブの難易度調整の前に、階層ごとの役割・職責の基準作りに取り組むことをお勧めします。

例えばジョブの大中小分類のうち、スタッフ職は小分類で業務フロー・手順が決まった定型的業務の遂行、上級スタッフ職の監督のもと、または移譲を受け中分類の職務遂行、上級スタッフ職は複数の中分類での業務計画、遂行、アウトプットや期待成果の実現・・・など

階層ごとに役割・責任を決めないと、議論の着地は困難です。

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【最終ハードル】
フェーズ5の「ジョブをヒトに当てはめ、報酬に連動させる」が最後のハードルです。ここでは経営陣、人事部門、そして社員にも決断を伴います。

職種ごとの階層とジョブとの整合性が取れたら、あとは社員1人ひとりにジョブアサインと、組織階層での役割・職責、そして報酬の整合性を取っていくことになります。

職務給にもとづく給与と、ジョブアサインとの間に正のギャップ(給与<ジョブ)であれば昇給・昇格するのか、負のギャップ(給与>ジョブ)であれば調整手当とかで猶予期間(会社によっては1~3年が多い?)を設けて、それまでに間にジョブと給与のギャップを埋めてもらう、または猶予期間の経過後に降給するなど、措置が必要な方も出てくると予想されます。
または先ずは管理職とエキスパート職から導入して、順次他の階層も導入など会社ごとにその取り組みは異なります。

メンバーシップ型で曖昧にしてきたジョブ、役割、職責、期待成果が明確化されますので、昇降格や昇降給の基準もおのずと明確になりますので、どのような処遇にするにしても、アカウンタビリティ(説明責任)が重要です。

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7.ジョブ型人事制度に移行する”目的”は何ですか?

このようなフェーズとハードル、それらの対処をお伝えしてきましたが、ここまで書いてみて思いましたが、「ジョブ型人事制度に移行する目的って何なんだろう?」ということです。

技術的にはこれまで述べてきたようなフェーズと、対処法でどのようなスケジュール感で移行をするかはお伝え出来ます。それはあくまで導入手段の話で、ここまで多くの手間と時間、同意を伴いながら進めるからには、ただ単に一過性の流行でジョブ型に移行するのではなく、「なぜ、ジョブ型人事制度が自社にとって、いま取り組むべき課題なのか?」という目的をはっきりとさせることが重要です。

例えば
社員一人ひとりの特性に基づき、専門性を深める、職務の幅を広げる、新たなことジョブを生み出す、成果にコミットしてパフォーマンスを発揮するなど、多様なジョブやキャリア選択を、社員が自律的に描き成長を促す・・・とか
リモートワークへの移行に伴い、社員のジョブ、役割、職責、期待成果を明確にし、個と組織のパフォーマンスを向上させるため・・・とか

制度の導入を決める前に、目的に立ち返って、それにあった手段としてジョブ型の整備を進めてはいかがでしょうか?

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8.第三の案、それは「■■■■■型」

中小企業では、これらのことに取り組むリソース(人的、時間的)の確保が難しく、なかなか取り組みづらく、下図のように導入への課題は山積です。

①ジョブが流動的、ジョブの明確化にも言語化力・標準化力をもった人材が稀有・・・
②組織の階層を明確にしようにも、組織のレイヤー(階層)が年功的で、再整備が必要
③上記のため、組織階層にいる各責任者やリーダー人材の役割・職責が曖昧
④ジョブがヒト基準のため、難易度や基準が不明瞭
⑤兼任や守備範囲以外の業務が多く、ジョブ(職務)を割り振りづらい

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中堅・大手では「5.ジョブ型に移行するフェーズとは?」のようにステップアップ可能だと思いますが、こと中小になると困難または長期化が予想されます。またジョブ型に移行する目的論より、手段論が先行すると、導入迷子になりかねません。

そこで日々考えていました。そこまでしてジョブ型人事評価にこだわる必要はあるのだろうか?しかしながらメンバーシップ型のままで良いとは100%思っていません。本当にジョブ型一択なのか?!

そこでそもそも、ジョブ型とかメンバーシップ型って、何の型なの?
明確な雇用形態としてメンバーシップ型とは言わないし、雇用契約書に書いてあるわけでもない・・・

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あっ「会社と社員との繋がり方」の種類なんだ!と考えるとシックリきました。いわゆる就社的なつながり方がメンバーシップ型で、就職的なつながり方がジョブ型ではなかろうか?と。そう考えるとジョブかメンバーシップかという選択肢だけではなく、いくらでも社員と会社との繋がり方ってあるじゃないか!!そう思ったときに思考が広がりました。

普段、私たちNBCコンサルタンツで人事評価制度の構築・運用のお手伝いをしているのは、「人と組織の持続的な成長を目指す人事評価制度」で、経営ビジョンや中期経営計画を通じで、社員も自らの将来のビジョン(=キャリアプラン)を描き、成長し、その結果として報酬を高める。

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これって、何で会社と社員が繋がっているのだろうか?

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そう考えた時にそうか私たちの人事評価制度は会社のミッションや役割に求められるミッションを通じて、会社と社員を繋げるお手伝いをしてるんだ。メンバーシップ型、ジョブ型、第三の選択肢があってもいいじゃないか!というこで「ミッション型人事評価」と造語ですが、そう名付けてみました。

だからあくまで私たちNBCコンサルタンツが考える、人事評価制度の呼び名であるため、会社と社員の繋がり方でいうと、様々な会社で多様な考え方はあるかと思いますので、「私たちの考える人事評価とは、〇〇型です!」と自信をもって取り組んでみて良いではないでしょうか。

6900字を超えたところで、ようやく今回のテーマ『メンバー型、ジョブ型・・・そして第三の案「■■■■■型」』の私たちなりの答え「ミッション型」に辿り着きました。

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もっと言うと、皆様の会社にあった第四の案、第五の案があっても良いという、まさかの玉虫色の答えに辿り着くという・・・。一過性の二元論に巻き込まれるより、目的は何か、会社と社員がどのように持続的に成長していける制度が望ましいのかという、そこに行きくと思います。

本当は下記のセクション8,9,10とサクサク記事にしたかったのですが、短くまとめてお伝えできるスキルが足りないので、タイトルにありますように今回は『やむなく前編』ということで、7,000字を超えたところで終わりにします。

『伝えきれるか!?後編』では、おそらく下記のような目次でお伝えいたします。ご関心ある方は、フォロー頂けると新たな記事投稿が表示されると思いますので、月内にはアップできるように頑張ります。ご期待ください。(期待されているのか・・・)

メンバー型、ジョブ型・・・そして第三の案「ミッション型」
『伝えきれるか!?後編』 目次(案)
9.「ミッション型」とは?ミッション型に移行するフェーズは?
10.組織にミッションを落とし込もう!
11.期待できる効果は?

長文になりましたが、記事の最後までたどり着いて頂けた方が、どれだけいらっしゃるか(思ったままに書いているだけなので、一般化されておらず例えや概論ばかりでイメージしづらかったと思いますが)分かりませんが、最後までお読みいただいた方、誠に有難うございました。

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