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幸せのピアス スナックすっぴん物語

 街にはクリスマスのイルミネーションが輝いている。きらきらと輝く光をみつめていると、頭の中に山下達郎のクリスマス・イブが流れだした。
なりゆりちゃん世代はこの曲知ってるかな…そんな事を考えながら看板のスイッチを入れた。
スナックすっぴんの白い文字が点滅し浮かび上がる。クリスマスの雰囲気を出したくて100均で買ってきた飾りを看板に貼り付けた。

カランコロン…コロン
「いらっしゃいませー。スナックすっぴんへようこそ〜」
20代後半くらいの男性が扉から顔だけのぞかせ遠慮がちにこちらの様子を伺っていた。
「あの、もう開いてますか?」
「どうぞ〜遠慮しないで。食べたりしないから(笑)」

「今日は冷えますね。」
そういって紅白が客のコートを受け取りハンガーにかけ、あたたかいおしぼりを手渡す。
「何飲まれます?」
「じゃあ、ビールで」
「お仕事帰りですか?」
「そうです。今日は妻が実家に帰ってるんで」
「そうなんですか。じゃあ今日は家に帰っても寂しいね。」
「…半年前に子供が産まれて。女性って強いですね。すっかり母親っていうか。僕全然父親になれてないなぁって。」
客は困った表情で少しの微笑み、ビールを口に運んだ。
「昨日も奥さん怒らせちゃって。2人の時は仲良かったんですけどね。」

「奥さんも同じ事を思ってるかもね。」
「いや…きっと頼りない旦那だって思ってますよ。」
「それって奥さんがそう言ったの?」
「いや、何となく…最近不機嫌だし。」
「人ってすぐ悪い方向に考えちゃうから。奥さんの気持ちをちゃんと聞いてみたらどうかな?」

親しい間柄ほど言わなくてもわかるだろう、そう考えてしまう。しかし自分以外の他者の気持ちはそう簡単には分かり合えない。そして相手は簡単に変えることはできない。
怒りをぶつければ怒りで返してしまう。
まずは自分が柔らかく相手に接することで、相手も柔らかさを取り戻すかもしれない。 


「これってピアスですか?」
カウンターの片隅にはなりゆりが作った手作りのアクセサリーが並ぶ。客は物珍しそうに見つめていた。

「そう、私が作ったんです。それはタッセルピアスっていうんですよ。」
「なりゆりちゃんのアクセサリーは幸せを呼ぶってお客さんの間で有名なんですよ。」
「へーすごいなぁ。そういえば最近、奥さんアクセサリーしてないな…。」
そうつぶやくと男は深いグリーンのピアスを手に取った。クリスマスツリー、もみの木の色。
「これ、いただけますか?」
「わぁ、嬉しい。ありがとうございます。」
なりゆりが丁寧にラッピングをし、客に渡した。

「ごちそうさまでした。」
「メリークリスマス!」
華やかな光の中を歩いていく客の背中を3人で見送った。


25日。今日がクリスマスだというのに、もう世間は正月に向けて衣替えを始めている。
そろそろ開店の時刻だ。
紅白が看板のライトをつけようと外に出ると若い男女が階段を登ってきた。
「こんばんわ!」
「あ、この間の。いらっしゃいませ!」
「こんばんわ。」
隣の女性が会釈する。
「もしかして、奥様?今日は2人で?」
「久しぶりに2人で出かけようって。子供は実家に預けてきました。」
「素敵じゃないですか!さあ、寒いからどうぞ。お客様ご来店でーす。」
カランコロン…コロン♪

「いらっしゃいませ〜スナックすっぴんへようこそ」

微笑む女性の耳にはグリーンのタッセルピアスが揺れていた。


スナックすっぴんメンバーなりゆりのハンドメイドアクセサリー
タッセルピアスが大好評です(*´ω`*)

作業を通して幸せを届ける。
作業療法士として働くなりゆりちゃんが心を込めて作ったアクセサリー達。

クリスマスプレゼントに
自分へのご褒美に

要チェックですよっ!!!



皆さんにクスっと笑ってもらえるような、文章を綴っていきたいと思います。