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全員マスク! 第13話:13日の金曜日にやってきた黙示録

第12話 連載小説『全員マスク!』 第14話

 そういえば今日は13日の金曜日であった。突然の不幸を事前に察知することは賢人に必要とされている能力の一つだ。賢人は不幸を察知し、事前に不幸から身を守る。しかし予知不可により不幸を察知出来なかった場合、賢人たちは被害を最小限に抑え逆にチャンスに変えることを考える。前者はそれこそノストラダムスほどの天才的な能力がなければできないものだ。だが、後者は逆に全ての現代に生きる賢人たちに必要とされている能力だ。イーロン・マスクも亡きスティーブン・ジョブスもこの能力を身につけている。彼らはその能力で会社の被害を最小限に食い止めチャンスに変えた。

 ノストラダムスの予言は遅れてやってくる。黙示録、終末論、千年王国、アポカリプスインナウ!陰毛の如く茂り切った黙示録後の世界。ジョニーとキャロラインは『全員マスク!』のマスク工場からの一報を受けてタクシーで向かう。大勝利から一転して黙示録へと落ちてゆく。奢れる平家は久しからず、光GENJIはブレイクしたが平家組はさっぱりだった。ジャニーズ王国の終焉。日本アイドルの終焉。未来のアイドルはキムチの香りを纏ってやってくるだろう。

 マスク工場の大惨事。キャロラインとジョニーは鼻を摘んで惨状を見る。酷い有様だ。とはいっても建物が燃えたわけではない。マスクが盗まれたわけでもない。だがこのあたりをつく激臭はなんだ。一体誰が、一体誰がこんなに工場でいっぱいおしっこをしたんだ!


 その数時間前のとある別荘。一ノ瀬エリカ、ジョニー風に言えばエリーはいつものとびきりの老人介護を終えて部屋から出た。すると早速黒服の男が声をかけてきた。

「エリカ君。あのじいさんはまだ死なんのかね。君はあのじいさんと本当に毎日セックスしているのかね。あんな心臓病抱えたじいさんを立て続けに攻めればぽっくり逝ってしまいそうだが」

「しょうがないでしょ!あのジジイ何故かエッチするたんびに元気になっていくのよ。私は早く死んでくれるようにバイアグラとか興奮剤を大量に飲ませてるんだけど全然死なないどころか、素直に効能が効いちゃってるみたいなの。あのジジイ、最近はセックスでこんなに元気になるなんて思わなかった。お前のおかげじゃなんて感謝する始末なのよ。あれは当分死なないわ。私の後継者への道もしばらくはお預けよ」

「そう能天気に構えないでほしいな。君は今自分がどういう状況に置かれているのかわかっているのかね?君がそうやって老人と遊んでいる間に『全員マスク!』一派に逆転されてしまったではないか。君は我々アンマの指令で動いているのを忘れてないか?このまま『全員マスク!』が日本国民に発表されたとしたら君の命はもうないんだぞ!」

「うるさいわね!あなた達私が何もしていないと思っているの?この一ノ瀬エリカが、このヨーロッパの広告業界を夜から支配した女王が、あんなヤンキーの豚女に負けるわけないでしょ!見てなさいよ!今夜水晶がアンモニア色に染まるのが見れるわ!」

 水晶と聞いてマスクアノンの面々は思わずたじろぐ。我々は正義なのだ。ナチスを例えに出すものではない。しかし熱狂につかれたエリーは闇の中で半裸を晒してけたたましく笑う。まさにヨーロッパの黒魔女。宗教裁判、大審問官、最期の誘惑。ああ!エリーは大審問官のバナナを咥えてしまった。

 エリーは予告を実行しようと突き止めていた『全員マスク!』の工場の前にガスマスクにぴっちりした黒いボディスーツ姿で立つ。そこに現れたのは同じようにガスマスクとピッチリしたボディスーツを着たジョニーの同僚のマーティンこと宮島とその部下たちだ。エリーは準備はできたのかと聞く。OK。そうただ一言マーティンは答える。大惨事の前触れ、ナチスの襲撃、ヨーロッパの最も暗い夜が今始まる。

 エリーの号令。トラックで工場に突っ込むマーティンたち。山と積まれた『全員マスク!』のマスクにぶっかけられるアンモニア!ガスマスク越しでも臭う激臭!もっとぶっかけろ!あのブッチャーの悔し泣きが目に見える!エリーは興奮のあまり乳首を立たせてしまう!ああ!ボディスーツはボンデージ。くっきりと乳首が浮き上がって!マーティンたちは興奮のあまり下半身を勃たせてしまった。ギリシャへの回帰。ヌードビーチ。ビーチクさえ見れたら死んでもいいのに!それを見たエリー。ガスマスクの下で微笑んでジッパーを胸元まで下ろす。闇の中にクッキリと浮かんだ谷間。ああ!マーティンたちは熱り勃つ下半身の痛みに悶え狂う!エリーはそんな彼らに悪魔の微笑みで言う。

「なに?エレクトしてんのよ。そんなに苦しいならジッパー外してペニスを出して直接マスクにゴールデンシャワーぶっかけたら?ついでにミルクも出していいのよ?ほら、私を見て?感じるでしょ。あなたの中の欲望が突き上がって来るのが!」

 ああ!そう言うとエリーは自らのバストを掴んで揺らし始めた。もうこうなっては理性など太刀打ちできない。マーティンたちはジッパーを外して小便を放出し、そしてエリーの前でしごき出した。アンモニアの激臭の中、エリーの高笑いと男たちの喘ぎ声が鳴り響く。アポカリプスインナウ!まさに陰毛の繁る地獄の黙示録。


 ジョニーとキャロラインこの惨状を見て倒れそうになる。夢の崩壊。THE END。ジムモリソン。アンモニアの激臭。何故かマスクにこびりついている白きもの。倒れまくるキャロライン。ジョニーは慌てて支える。誰がこんな事を!その時二人の後ろからガスマスクを外したエリーたちが現れた。

「残念ねえ、あなたたちの『全員マスク!』がこんなになっちゃうなんて。これはみんなアンモニアの運送会社が悪いのよ!私たち運転手を捕まえて交番に突き出してやったわ!」

 唇晒しのエリー。何故かぴっちりとしたボディースーツを着て。その後ろに控えているのはやはり同じボディースーツを着た何故か艶のいい顔している部下のマーティン御一行。なんか知らんが男たちは湯気までたたせていた。マーティンは言う。

「沢村、気の毒だな。これで全員マスクのプロジェクトは続行不可能になった。国民にマスクをばら撒こうとも肝心のマスクがなきゃどうしようもないからな。お前たちはもう終わりだよ。あとは俺たち『いいよもうマスク』が引き継いでやるから」

「ファック!なにがアンモニアの運送会社だ!テメエらが全部やったんだろうが!許せねえ!ファック!警察に訴えてやるぜ!」

 このジョニーの言葉にエリーは悪魔の微笑みで答える。

「人聞の悪いこと言わないで沢村君、いえジョニー。私たちはあなたたちを心配してここに駆け付けたのよ。いくら対立していようが私たち同じカンパニーの仲間じゃない。特にあなたが心配だったのよ。だって私あなたが好きなんだもの。……ところでカオリはどうしたの?なんであなたの胸に顔を埋めたままうんともすんとも言わないの?」

「ベイビーは気を失っているんだ」

「ふ〜ん、そうなの。意外ね。あんなに強がっていたカオリがこんな事でぶっ倒れるなんて!本当にびっくりするわ!」

 そう言うとエリーはその晒した唇を大口に開けてけたたましく笑い出した。もう本音剥き出しの大笑いだ。ざまあ味噌漬け!家康には味噌の代わりにウンコを食わせろ!マーティンたちも釣られて笑い出す。夢の崩壊。浴びせられる嘲笑。気を失ったキャロライン。ナチスの惨劇の後。割れた工場ガラスは水晶の輝きを見せるだろう。

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