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「アイツは親友でライバルだった。」今、鈴木太郎について語ること ゴンザレスウーマン岡町涼介インタビュー text椹木克美

あの日のこと

椹木「いきなりだけど岡町君は鈴木が亡くなった日何してた?」

岡町「あの日はずっとレコーディングしてた。なんか全然調子が上がらなかった事だけは覚えているんてますよね」

椹木「俺も家で原稿書いてだんだけど、岡町君と同じような状態だったね。何度もコーヒー飲んだりして集中したんだけど全く落ち着かなかった。やっぱり予兆見たいのはあったんだな」

岡町「俺、超常現象とかあまり信じない人間なんですけどあれはあれは明らかになんかの知らせだと思いました。それでTwitter見たら事務所の方の『当事務所所属の鈴木太郎は本日3時に心不全で亡くなりました』って報告があっで……」

椹木「俺も全く同じだ。それ読んでほんとびっくりした。完全に青天の霹靂だったよね」 

岡町「それで俺いろんな奴に電話したんですよ。みんなホントびっくりしてた。だけど今から考えるとなんかいずれこうなってたんじゃないかってのはやっぱあるんですね」

椹木「うん、俺も全く同じこと思った。晩年のアイツを見ていたらね」

岡町「そうとはわかっていても死んだらやっぱり辛いですよ。俺いまだに喪失感を抱えてますもん。やっぱりアイツは親友だったし、そしてこっちが勝手にだけど一生のライバルだって思っていたし」

出会ったころ

椹木「ところで岡町君はどこで鈴木と出会ったの?」

岡町「アイツも俺たちもまだアマチュアだった頃かな。たまたまライブハウスでイベントの企画があってそれに俺たちゴンザレスウーマンと鈴木が出てたんです。そのイベントにソロはアイツしかいなかったから目立ちましたね。正直に言ってライブはそれほどよくなかった。多分アイツも当時は場慣れしていなかったんじゃないかな。だけど曲は良かったし、これはひょっとしてすぐにメジャーデビューするんじゃないかと思ってた。それで気になって俺たちみんなでアイツに話しかけたんですよ。まぁ俺は嘘つけないんでライブの出来はオブラートにくるんで曲だけは褒めた。そしたらアイツはにかんだ笑顔で君たちもすごいなぁとか、自分も本当はバンドやりたかったんだとか言って俺たちを羨ましがってたましたね」

椹木「実際鈴木はすぐメジャーデビューしたよね。凄い大宣伝されてさ。俺アイツのファースト雑誌のレビューでボロクソに叩いたんだけど」

岡町「あああれ俺読みました(笑)すげえこと書くなって思ってましたよ。未完成の美って言葉があるけどこんなアルバムにそれを使うのは言葉に対して失礼だって書いてましたっけ?あれ読んで鈴木すげえ怒ってましたよ。こんなバカライターは百円ライターで火炙りにしてやるって駄洒落まで言って」

椹木「でも俺の言う通りだったでしょ?やっぱり全然売れなかった。やりたいことはわかるんだけど基礎が全然できてないから曲とアレンジが全然チグハグでどうしようもなかった。それから鈴木のことは全然忘れてたんだけどさ。あの『花火』が出てきだんだよね』

花火のこと

岡町「俺、アイツと一緒に『花火』のマスター聴きましたよ。たまたま俺たちと隣同士でレコーディングしてだんだけど、その頃俺とアイツは何となくだけど互いを避けてたんです。俺たちはアイツの一年後にデビューしたんだけど、ドラマとかのタイアップであっという間に武道館やるようになっちゃって、一方アイツは契約切られる瀬戸際のような状態だったみたいで。俺は何となく会いにくいなって思ってたし、アイツもメジャーになった俺を避けてた。だけどあの日アイツはいきなり俺たちのスタジオにやってきていきなり自分のアルバムが完成したから一緒にマスター聞こうぜって誘ってきたんです。多分早く誰かに聴かせたかったんでしょうね。で、俺たちいきなりどうしたなんて軽く挨拶して時間とってアイツと一緒に『花火』聴いたんです。正直に言って完敗だって思いましたね。俺最初のうちはやっとまともなの作ったななんて舐めたこと思ってました。だけど聴いてるうちにこりゃとんでもねえぞって思って思わずメンバーの沢木と三越と目合わせてガックリ肩落としましたよ。アイツは自信に溢れてたな。自分の生涯の代表作を作り上げたって顔してました。聴き終わってからアイツ俺にどうだったってはにかんだ笑顔で聞いて来るんですよ。だけどこっちとしちゃすげえって答えるしかないじゃないですか。俺そんなアイツを見てウサギとカメの童話思い出しましたよ。アイツは直感の天才型のウサギで俺たちはただの凡庸で堅実なカメなんだって事を見せつけられてすごいショックでした。それで『花火』された時やっぱりみんな一斉にベタ褒めしてた。椹木さんもなんか俺たちと比較して褒めまくってましたよね。『このアルバムは日本のロックに数少ない本物だ。ゴンザレス・ウーマンのような典型的なJ Rockとは違うとか言って」

椹木「あれは本当に申し訳ない(笑)あの時はホント興奮状態で『花火』の魅力を伝えたい一心でついいらんことまで書いちゃったんだよ。あれだけ腐していた鈴木がまさかあんなとんでもないもの作るとは思わなかったから」

岡町「俺もそうです。実際うちも一時期あれに影響されまくりでしたし。鈴木のやつも俺をパクリやがってって冗談めかして俺に言ってましたね。あれからですよね。また鈴木と付き合うようになったのって。フェスでも共演したし、一緒に地方も回った。その時まぁここじゃ話せない事をたくさんしたんですけどね」

椹木「鈴木が花火ツアーの最終日に演った赤坂ブリッツのライブはホント凄かったよね。あれ多分ミュージシャンの観客が一番多いライブだったんじゃない?昔のストーンズの初来日ぐらいはいたよね」

岡町「確かにみんないましたよね。普段は近寄れない大御所たちがそばにいるんだから。ライブは唖然とするぐらい凄かった。あんな下手くそだったアマチュアの頃が信じられないぐらい良かった。もう俺ライブ中はただの観客でしたもん。他のお客さんと一緒にステージの鈴木に歓声送ってたましたね」

椹木「俺そのライブのレビュー書いたんだけど纏めるのに大変だったな。なんか書いてると勝手にいろんなものが溢れ出してきて文章が止まらなくなるのよ。なんか全然関係ない自分の思い出話まで延々と書いちゃっててさ。ホントすごいライブだった」

ラストシングル『 X X X』について

椹木「それで、最後にあのラストシングルの『X X X』について聴きたいんだけど』

岡町『椹木さんはあのシングル評価してないですよね。ハッキリ最低だって書いてましたね。だけどやっぱり椹木さん間違ってますよ。俺はあのシングルは鈴木太郎の最高傑作だって思ってまず。鈴木が短いキャリアであそこまでいけたのは俺素直にすげえって思うんです。あれ出して鈴木は完全に超えたんですよ」

椹木「超えたっていってもあんな形で超えられたくなかったね。アイツは『花火』を出したのをきっかけに傑作を立て続けに出したじゃない。『一週間』『ひまわり』とかさ。もう桃源郷じゃないけどそんなサイケデリックの極地みたいな世界作ったじゃん。その後に何でこんなもの出したのかって俺は思うわけよ。やっぱり売れなきゃっていうプレッシャーがアイツをあそこまで追い詰めたのかなって可哀想になるのよ」

岡町「そんなことはないですよ。鈴木は売り上げとかにこだわる奴じゃないんですよ。アイツは本物のアーチストなんです。俺たちみたいな商業ミュージシャンとは違うんですよ。あのシングルはそんなアイツが最期にたどり着いた境地なんです。椹木さんもアイツの最期のライブ絶賛してたじゃないですか。『ステージでギターを抱えてライブの空気と一体化して歌い演奏する鈴木を観て、ボクはもしかしたら彼が消えてしまうような錯覚を覚えた。演奏される曲はどれも凄まじく、あの『 X X X』さえ震えるほど圧倒的な出来だった』って。とにかく、俺はあのシングルを鈴木の汚点だなんて思いません。あの曲はやっぱりJROCK史上最高傑作だと思います」

椹木「お前らみんな鈴木が亡くなったショックでおかしくなってるんだよ。俺は誰が何を言おうとあのシングルが最低の駄曲だって評価は変えないね。今から鈴木太郎のラストシングル『X X X』流すから冷静になって曲聴いてほしいよ」


鈴木太郎ラストシングル『 X X X』

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