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奇妙な夜

 奇妙な夜だった。夜なのに太陽が燦々と輝いているのだ。なぜなのだろう太陽はいつの間にか地球に接近して地球を取り込もうとしているのだろうか。いや、そんなことはないだろう。太陽がそんなにまで地球に接近したら僕らなどすでに燃えカスすら残らず消えているからだ。まさか白日夢?僕はいつの間にか夢の世界にいるのだろうか。そうしたら今すぐにでも起きなければならない。目を覚ませ、もう真昼だ!と昔の偉い文芸評論家はランボーの『夜明け』の末尾をこう訳した。だから僕も目を覚まさなければならない。この夢から、この酩酊から、一刻も早く抜け出さなければならない。俺は目覚めるんだ。

 と思ったのだが、よく考えてみれば僕はニートかつ、引きこもりなので目覚めても特に何もすることがないのに気づいた。せいぜい起きてもトイレに行くしか用事がない。スマホはとうとう止められたし、妹は僕をウンコみたいに扱うし、目覚めてもいいことが何もないので僕は起きるのをやめて寝ることにした。

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