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本を読む

本を読む。それは凄く贅沢な時間だ。本を一冊読むには場合によったら音楽を聴くよりも映画を観るよりも潤沢に時間を使うからだ。今私はソファーに深く沈み、マドレーヌを紅茶につけながら『失われた時を求めて』を読んでいる。正直言ってあまり礼儀正しい読み方とは言えないであろう。どちらかといえばこの小説の作者が母親に嗜められたようなあまりお行儀のよくない読み方だ。だが私は作者のように、そしてこの小説の主人公のようにマドレーヌを紅茶につけ、口の中に含みながら小説を読みふけるのだ。おかげで服はビショビショで砂糖とケーキの生地でではガビガビになっているがそんなことは私には関係ない。というか私には小説自体関係ないのだ。だって私は馬鹿すぎて字が読めないから、この小説自体がなにかの暗号にしか見えないからである。私はさっきからタイトルとずっと睨めっこしている。『失われた時を求めて』。私はマドレーヌで本をふやけさせもはやページすら開けなくなった本の表紙を見て後悔の念に襲われた。失われた時はあまりにも多い。せめてまともに字が読めるぐらい勉強しておけばよかったと。

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