火曜日

 火曜日はまだ週のはじめだ。火曜日は初日の月曜日をどうにか乗り越え、そして水曜日という山のてっぺんへと登っている最中といった曜日だ。私は満員の電車の中でそう考えて身を引き締めた。だが今日の一日はまだ始まってすらいない。私は自分が座っている席の前で疲れた調子で立っている人を見ながら彼らの事を想像した。この人達も私と同じように水曜日という山を乗り越えるために、火曜日の今日という日を歩いているのだろうか。私はアルプスを登る彼らを想像し彼らにエールを送りたくなった。頑張れ!水曜日はあともう少しだ。アルプスの冷たい風が私に向かって吹いてくる。私は吹き付ける風に向かって一歩一歩頂上へと昇っていく。時折鼻歌混じりで歌謡曲なんか「はぁーん」と歌いながら大地を踏み締めていく。頂上はあともう少し……。

「ちょっとお客さん!いつまで寝てるんですか!もう終点ですよ!」

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