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たったひとりのロックフェス

みんな、聞いてくれ。もううんざりするぐらい聞かされてみんなイヤになってると思うけど、俺も出る予定だった今年のロックフェスも例のコロナのせいで中止になった。みんな勿論ネットやニュースでとっくに知ってたと思うけどさ、やっぱりファンには直接俺の口から言いたかったんだ。ロックフェスが中止だって言われた時、俺すっげえ悔しくてさ、その場でマジ泣きしたんだよね。でも俺さ、やっぱライブやりてえよ。やっぱフェスしてえよ。そんなわけで俺はこの場所をお借りして、たったひとりのロックフェスを決行する事にしました。俺の歌がみんなのハートに届くように声を限界まで張り上げて歌うよ。声がデカすぎて警察呼んじゃうかもしれないぜ!じゃあ歌います!最初から『夜の徘徊者』をぶちかまします!いくぜ!

夜のぉ〜!

徘徊者はぁ〜!

君のぉ〜!

家のぉ〜!

前でぇ〜!

叫びぃ〜!

すべてをぉ〜!

さらしてぇ〜!

ニッコリぃ〜!

ほほえむのさぁ〜!

ああぁ〜!

「ちょっとお前、夜中にこんなとこで何やってるんだ!近所から苦情が出てるぞ!」
「ロックフェスです」
「はぁ〜?ロックフェスってお前しかいないじゃないか!いわゆるリモートってやつか?なんかネットでも繋いでるのか?」
「いえ、ネットなんかこの間料金滞納でスマホ切られて以来使ってないです」
「じゃあ誰がお前の歌聞いてんだよ!」
「俺の中のファンです。俺の心の中にいる大勢のファンのために歌っています!だから邪魔しないでください!」


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