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ワープ装置

「大変なことが起こったぜジェフ。見ろよ、ワープ装置を」
 とアランはハワイ諸島からニューヨークのジェフに向けてワープ管理コンピュータの数値を見せた。それを見たジェフは唖然とした。明らかにワープ装置が異常をきたしていた。数値が狂い0〜200の間を暴れまわっている。なんてこった。肉体再現装置の配分がなんでこんなにおかしくなったのか。ジェフはこの状態を見てもはや全てが修復不可能と悟った。そして自らがハワイへワープさせたものの悲惨な有様を見た。ハワイのアランはプロジェクターの向こうで助けを求めるかのような目でジェフを見ていた。今までこんなことはなかったのにどうしてこうなったのだ。今までずっと成功していたじゃないか。なのによりによってこんな大事な時に!ジェフは叫び出したい衝動を抑えようと爪が食い込むほど手を握りしめた。そして心の中でこう叫んだ。俺たちはもう終わりだ!
 ジェフがニューヨークからハワイ諸島へワープさせたのはモデル兼女優のセレブのキャロライン・コネリーだった。とうとうワープ装置が完成したとのニュースを見て、目立ちたがり屋のキャロラインすぐさまワープ装置の開発者のジェフにコンタクトを取り、セレブ最初のワープ旅行者になることになった。ジェフはに動物はすでに成功させ、人間もそのへんのホームレスを実験台にしてすでに成功させていたが、いきなりのセレブからの依頼に驚いてしまった。しかし彼は慎重に慎重を重ねて彼女を確実にワープさせる準備をしていたのだ。何の問題も無ければキャロライン・コネリーは今頃はハワイの海でそのゴージャスな肌を太陽に晒して日焼けでもしていただろう。なのになぜこんな事に!
 キャロライン・コネリーはワープでハワイに旅立前、ニューヨークのワープ施設からSNSで、「Hey guys!私、今からハワイまでワープするのよ!ニューヨークからハワイまでのたったの5分の短いフライトだけど存分に楽しむわ!」とワープされる直前まで書いていた。ああ!キャロラインはこの時が人生の絶頂期だった!

 ジェフとアランは今ニューヨークからハワイへワープしてきたキャロライン・コネリーの変わり果てた姿を見ている。どうやら彼女は眠っているようだ。その旅立つ前の、モデル顔でセクシーボディでツルンツルンの肌をした、憧れのセレブは何処へやら、今ハワイにいるのはブヨブヨした太り過ぎたブタそっくり化け物である。ああ!もう5分経ってしまった。「おい、アラン!豚が動きはじめたぞ!なんとかできないのか!」とニューヨークのジェフが発狂したかのように叫ぶ。しかしアランには目の前のブタをどうすることも出来はしない!このまま豚が起きるのを止めることもできず、ただ見ていることしか出来ないのだ。そしてああ!キャロラインが目を覚ましてしまった。しかし彼女は自分が豚に変貌してしまったことにはまるで気づいていないようだ。彼女は目を覚ますなりスマホを手にとって、インスタにアップするために自撮りしようとそれを顔に近づけていく。それを見ていたジェフとアランはキャロラインに向かって必死にこう呼びかけた。

「このブタ!自撮りなんかするな!」


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