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豊臣秀吉の逸話集 その3

 猿の藤吉郎とその家族は再会を喜んでウキー!としばし鳴きあった。そしてお互いの近況をウキー!と話したのだった。両親は猿狩りに襲われたあと、小猿の妹を抱えて離れ離れになった猿の藤吉郎を探していたが、見つからず仕舞いだったのでウキー!と諦めてその辺の柿を食べていたら三猿とも小六に捕まってしまったという。三猿とも死を覚悟したが、小六は猿回しがしたかっただけだったので三猿とも助かって小六と一緒に暮らしているという。猿の藤吉郎も自分の身の上話をしたが、さすが藤吉郎の親というべきか猿にしては知性のある家族だったので藤吉郎の近況を聞くとびっくりしウキー!と吠えて飛び跳ねたのだった。そして猿の藤吉郎がここ墨俣に一晩で城を作るれと命令されたと聞くと、ウキー!と興奮し自分たちにも手伝わせろと言ってきた。猿の藤吉郎は自分が命令されたんだし自分でやりたいと言ったのだが、それを聞いた猿の家族はウキー!ふざけんなと猿をぶん殴りウキー!これは親孝行だ!手伝わせろと吠えたのだった。

 さて一晩でお城をどうやって作るのか。猿の藤吉郎と家族は小六も交えて考えた。ウキー!ウキー!と泣き叫んでも答えは出てこない。とうとうじれて猿の藤吉郎が思いっきり吠えた。するとあたりからウキー!と猿の声が響いてきたではないか。なんだか足音まで聞こえてくる。もしかしたらと猿の藤吉郎はウキー!考えた。この猿たちに吠えさせて更に遠くの猿を呼べば一万匹以上は猿を集められる。その猿たちを使えば一晩で城を作るのは容易いこと。そう考えた猿はウキー!と日本中の猿を呼び寄せるために思いっきり吠えたのだった。

 そして翌日の晩に墨俣に集まった一万匹の猿たちはたった一晩で城を造った。これがあの有名な墨俣一夜城の逸話であり、逸話の語るところによれば猿の藤吉郎がその城の建築のために呼び寄せた猿の大移動はゲルマン民族大移動に匹敵するものであったという。この猿たちを使って猿の藤吉郎、のちの猿の秀吉は天下を取るのだが、それはまた後のはなしである。


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