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真・光る君へ

 今日本で最も有名なダイエット講師村崎志木子は運命に導かれるように紫式部へと転生してしまった。貧乏貴族藤原宣高はある朝この月の世界の住民かと思えるほど珍妙な格好をした女にお父様おはようございますと言われ、腰が抜けるほど驚いた。娘なんて昨日までいなかったはず、だがこの女の言葉には無理やり信じざるを得ないほどの説得力があるし、この女を女御にでもすれば出世の道も開けると確信し、この女を娘と認め、早速朝廷に売り込んだ。

 朝廷に出仕した途端に紫式部は大変な評判になった。年寄りたちは肌を露出しまくり、くびれまくった腰を振らせた女に眉を顰めたが、若者たちはみんなこのダイエットの成果を晒したボディに夢中になった。藤原道長などの大貴族はこぞって彼女に歌を送り、それだけにとどまらず夜這いまでしようとした。

 だが紫式部は彼らの求愛を全く受け入れなかった。それは道長などの平安男子が彼女の好みでは全くなかったからだ。式部の前世でたっぷりしゃぶり尽くした男たちに比べたら平安男子はまるでダメだった。彼女は自分に交際を迫る貴族たちを見て憐れみ、そして彼らを心配した。式部は交際は出来ないと返歌を送りその中に交際出来ない理由と、彼らへのメッセージを込めた。しかし貴族たちは彼女の断りやメッセージを理解できず、いや理解しようとせずに相変わらずしつこく歌を送った。

 式部はこの貴族たちの態度にとうとう堪忍袋の尾が切れた。彼女は自分に迫ってきた貴族たちに文を出し全員を家に呼び寄せた。そして部屋に集まった道長以下の貴族たちに猛然と説教を始めた。

「あなたたちね、人に恋歌を送りつけるのは確かにこの時代の常識だしそれは許しますよ。だけどね、あなたたち歌を送る前にまず自分の姿を鏡で見なさいよ。いい?私はね、別にあなたたちが不細工だとか非モテだとか身の程知らずとかそういう事言ってんじゃないの。私はね、あなたたちが太りすぎる事を心配しているの。なにそのブヨブヨした豚以下の体は!そんな腐りかけた脂肪いつまでもぶら下げているととうにょうびになって死んでしまいますよ!いい?糖尿病ってのは気付かないうちにいつのまにか罹ってしまっているものなの!あなたたち自分の命が惜しいとは思わないの?私を口説く前にまずダイエットして健康体になりなさい!いい?これから一ヶ月断食よ!痩せるまでお家にかえしませんからね!」

 というわけで道長たち貴族は紫式部に拘束されて断食を始めたが、今まで甘やかされて育ってきた道長たち貴族はそれに耐えられずみんな餓死してしまった。こうして平安時代は終わり武士の時代が来るわけだが、紫式部はそのずっと前に平安時代に飽き果てて元の現代に戻っていた。彼女は再び村崎志木子に戻ってダイエット講師として活動を再開したが、村崎は再活動する前に平安時代に転生した経験を本にして残しているが、その本のタイトルは『光の君も道長もみんなデブだった 〜驕り高ぶった貴族に未来なし。糖尿病にならないための侍ダイエット』である。

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