緊急事態
三人は全速力でモンスター逃げていた。リーダーの山本は先頭にたち、その後を直美がついていた。だが、一番後を走っていた新人の岡田が足を滑らせて倒れてしまった。二人は立ち止まりうずくまる岡田に大丈夫かと声をかけた。しかし岡田はもう立ち上がる事はできないと呟き、続けて二人に向かって言った。
「俺、もうダメだ。山本、直美、俺を置いて二人で逃げろ!俺なんかに構ってちゃ三人ともモンスターの餌だぜ!」
山本は岡田の言葉に表情すら変えず背中を向けて言った。
「お前の気持ちはわかったよ。じゃあその通りにさせてもらうぜ」
「ちょっと山本君、その言い方はないんじゃないの?あなたはそんなに冷たい人間だったの?今まで一緒に戦ってきた仲間を見捨てるような人間だったの?」
「だってコイツが俺なんかに構うなって言ってるだろ?さっさと逃げないと俺たちもモンスターの餌食になるんだよ!」
直美は拳で山本をぶん殴った。その拳は彼女の涙で濡れていた。
「あなた、なんでこんな時まで岡田君を嫌うのよ!どうして彼に俺の背中におぶされって言ってくれないのよ!」
その時突然岡田が叫んで争う二人を止めた。そして彼は二人に言った。
「やめろ直美!山本を責めるな!確かに山本の言ってる事は正しいんだ。俺なんかに構ってたら三人ともモンスターに食われちまうぜ。だから逃げろ。ああ!俺だってこのまま死にたくないよ。だけどもうしょうがないんだ。たった一年の付き合いだったけどお前たちと一緒にいられて楽しかったぜ。出来る事ならもう少し一緒にいたかった。あの夏の訓練覚えているかい?俺その時初めてレーザービームを的に当てたんだ。直美、お前凄い喜んでくれたよな。俺嬉しくなってさ。思わず川に飛び込んだよ。そして川の中から星空を見たんだ。綺麗だった。星空ってこんなに綺麗なんだなって思った。それと俺が隊員に合格した日だよ。山本お前も喜んでくれたよな。やればできるじゃないかって。直美、お前泣いてくれたっけ。俺もあの時泣いたよ。お前らは一生仲間だって……」
「話してる最中悪いけど、俺らもう行くから……」
「おい、まだ話は終わってないぜ。まだ話したいことが山ほどあるんだ」
「おい、直美!あそこにいるのはモンスターだろ?もうこんなバカ放っといて逃げるぞ!」
「うん、早く逃げよ」
「おい、お前ら待て!まだ話は終わってないんだあ~!」
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