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胡椒

 時は戦国時代の京である。晴れて天下人となった織田信長の下に南蛮人の商人が訪れた。商人は信長に面会するととある砂のような粉を献上した。信長は首を差し出してこれはなんぞと問うなり匂いを嗅ごうと思いっきり吸ってしまったのだ。そしたらあら大変部屋には粉が舞い信長はじめ一斉にくしゃみをして止まらなくなってしまった。くしゃみが止まらない信長はこの不届きな粉を献上した南蛮人をひとり残らずたたっ斬ってやろうと蘭丸を呼んで刀を持ってこさせようとした。しかし蘭丸もくしゃみが止まらず信長のもとに刀を持ってきたとき思いっきりくしゃみをしてつばを信長の頭にぶっかけてしまったのである。信長はもう大激怒して蘭丸も切ってやろうとそのへんにいた小姓を呼んで刀を持てこさせようと何度もそこの小姓参れ、そこの小姓と呼びかけるが、小姓達も自分がくしゃみをしたら切られるかもと恐れて誰も寄ってこなかった。この事件が京で話題になり、やがて時を経て信長をくしゃみで苦しめたこの粉は小姓ならぬ胡椒と呼ばれることになった。

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