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夜の探偵

「これが奥様の調査結果です。非常になんと言ってよいか。まあ、つまりですね…」

 探偵が調査結果の証拠の写真をテーブルに並べながら妙に言葉を濁して喋っている中、男は無言でずっと写真を見ていた。写真の中で男と手を組んでいるのは確かに妻に似ている。しかしである。男は顔を上げて探偵に言った。

「探偵さん、確かに妻に似ていますが、別人でしょう。妻にしては顎のラインが丸っこいし」

「それはカメラのせいです。私達は家からずっと奥さんを尾行していたんですから。それは背景からわかるじゃないですか」

「いや、だけどこのひとは妻じゃない。全くの他人だ。妻を知っている私がいうんだから間違いないです」

「いや、どう見ても奥さんです。だって私達は奥さんの声だって録音してるんですよ」

 そういうと探偵はICレコーダーを取り出してスイッチを入れた。男は聞き慣れた声を聞いてはっと顔を上げた。そしてしばらく録音をそのまま録音を聞いた。そして音源が終わった後男は再び探偵に言った。

「いや、違うな。これは妻じゃない。妻はもっと高い声で喋るはずだ」

「いや、それも録音の都合ですよ。この肉声は明らかに奥さんの声です。だいたい自分の名字と名前言ってるじゃないですか」

「いや、同じような顔で同じような声をした同じ名前の人間なんていくらでもいる!」

 それから男は立ち上がって何故か探偵に向かってお辞儀をして言った。

「探偵さん、ありがとう!あなたのおかげで私はもう一度妻を信じることが出来る。やっぱり妻を疑うなんてあってはならないことだ。ああ!私はなんてバカだったのだろう!近所の人があなたの奥さん、男を家に連れ込んでいるわよ。なんていうから動揺してつ興信所なんて雇ってしまった。だけど調べた結果ただの勘違いだって分かった。お金は高く付いたが、その代わり僕は妻への愛を確かめることが出来ました。ありがとう!あなたのおかげでもう一度妻を信じることが出来るよ!」

 探偵は男の家を出ると法外な報酬が書かれた小切手をひらひらさせて、呆れたように笑って言った。

「どう見てもあの女アイツの奥さんだよな。なんでアイツ写真を無理やり別人だって言い張ったんだろう」



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