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二十三区の孤独

東京の人たちはは地方から出てきた人間には冷たいって聞いたけどここまで冷たいとは思わなかった。僕は23区の全てに住んだがどこも僕を受け入れてくれず、結局僕は東京から追い出されたのである。

足立区

最初は足立区に住んだ。足立区についてはよく知らなかった。ただ漫画の北斗の拳に出てくるような所だと聞いた事があるぐらいだった。僕はそれを聞いてまさかと思った。そんなの漫画だけの世界。実際の足立区には温和な人が住んでるはずと住むことにしたが、住んでみたら漫画よりも酷かった。街にはウェイ系の奴らが溢れていて奴らは僕からカツアゲして服まで奪っていった。僕は泣きながら東の綾子さんの浅瀬の公園のそばにある交番に駆け込んだが、警官が席を外しているようだった。だから僕はそばにあるベルを何度も押しながら叫んだ。今近くでカツアゲされたんです!お巡りさん助けてくださいと。すると奥から裸にタオルを巻いた男女が出てきてこう言うではないか。

「バカヤロ! 今取り込み中なんだ! 見てわかんねえのか! 後にしろ!」

荒川区

足立区からほうほうの体で逃げた僕は荒川区に安住の地を求めた。ここは荒川という地名があり、荒れた河でよく洪水になるところだと恐怖していたが、そんなことはなく、落ち着いたいい街だと思っていた。だがやっぱり二十三区は二十三区だった。僕は荒川区の中でも日暮里というところが気になっていた。その名前は理想郷のように思え、日暮里という所でに昼から暮れまでいるだけでご飯にもタダでありつけると思っていた。だが日暮里は僕を裏切った。僕が日暮里の駅前で立っていても誰もご飯をくれないのだ。田舎だったら近所のおばあちゃんが僕にご飯をおすそ分けしてくれるのにである。なのにここの人たちは僕を無視して立ち去って行くだけだ。僕はたまらず通行人の独りに向かって聞いた。なぜ僕にご飯をくれないのかと。そしたら彼らは一応にこういうではないか。

「あなた、ホームレスですか?」

板橋区

板橋区も酷かった。そこには志村けんも住んでいると誰かが言っているのを聞いたからだ。だけどど志村けんは板橋区に住んでなくて、かわりに志村という地名があるだけだった。僕は志村なんて紛らわしい名前つけるなとバカ殿の格好で区役所に訴えに行ったら門前払いされた。僕は屈辱のあまりその場で泣き崩れ二度とこんなところに来ないとバカ殿のコスプレを投げ捨てその場を去った。

江戸川区

江戸川区も酷かった。僕は江戸川区を目指して板橋区から東へと歩いた。だがいくら歩いても江戸川区は見えてこない。僕は江戸川区はどこですかと人に道を尋ねだが、尋ねられた人達は一応に首を捻ってこんな事を言った。

「江戸川区? それって千葉ですか?」

なんと江戸川区は千葉のくせに二十三区だと嘘をついていたのだ。

大田区

僕は大田区にこそ安住の地があると思った。田の字が田舎者の僕に懐かしさを感じさせたからだ。しかし大田区も僕の期待を裏切った。そこには田んぼなど一つもなく、代わりにあったのは町工場の一群だった。僕は田舎の空気を求めてきたのにこんな煙だらけのところだったなんて。何が大田区だ。この大うそつきがと踵を返してこの場を去ったのだった。

葛飾区

葛飾区もやっぱり酷かった。僕は両親の影響で幼少の頃から寅さんが好きで、いずれここにも来たいと思っていた。だがいざ来てみたら寅さんはいなかった。僕は地元に人に寅さんの居場所を教えて下さいと何度も頼んだ。だがこの映画とは大違いの木の短い住人共はそんな僕にこう言って追い払うだけだった。

「虎だったら上野の動物園に沢山いらあ! さっさと言って虎に食われて来やがれ!」

北区

全くひどいづくしの二十三区だが、一番ひどかったのはこの北区である。僕は北区を求めて飛行機にまで乗ったのだ。北区を求めてひたすら北への旅だ。そしてようやく着いた北区だが、何故かそこは雪の降り積もるところでとても東京とは思えなかった。僕は急に不安になり、通行人にここは東京の北区かと聞いた。すると住人は呆れたようにこう答えた。

「あの、ここ北海道なんだけどあんた正真正銘のバカ?」

僕は北区のせいで大恥を書いてしまった。おまけにとんでもない無駄遣いまでしてしまった。なんて紛らわしい名前をつけるのか。北区なんて名前を見たら誰でも北を目指してしまうではないか。まったくとんでもないところだ。僕は北区なんて紛らわしいから東京都北区に改名すべきだと思う。そうすれば僕のような被害者もいなくなるだろう。





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