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浮世絵風コント

「じゃあ俺からシャワー入ろっか?」

 と、言うなり彼は真っ直ぐ浴室へと向かった。私はそんな彼に向かってニコリと微笑んだ。今日は二人で過ごす初めての夜だ。二人でお酒を飲んでいた時彼がそういえば俺たちまだキしたことないよななんて言い出した。今更キスがどうしたとかの話じゃない。私たち結構長く付き合っているよね。普通の恋人だったらもうエッチのしすぎて倦怠期になっているころよ。彼はそんな私の視線に気付いたのかこんな事を言い出した。

「君は本当の俺を知らないんだ。君は多分僕の全てを知ったら幻滅するだろうな。こんなに気持ち悪い生き物見たの初めてよなんて」

「気持ち悪い?私、男の人が度を越したエッチでも全然気にしないよ。むしろ変態的になってむしゃぶりつくように私を愛してほしい。私の体を吸い付くようにしゃぶり尽くしてほしいの。だって私たち恋人同士じゃない。私だって変態になってあなたを激しく責めてあげる。むしゃぶりついてあなたの白い体液を全部飲んであげる」

 と私が彼に言うと彼は顔を赤くして慌てて浴室に向かった。シャワーの音が部屋まで聞こえてくる。そのシャワーの音はどこか卑猥で思わず淫らな事を考えてしまう。突然浴室のドアが開いて彼が出てきた。彼はもう真っ赤っかだ。彼も私と同じように淫らな妄想をしていたのだろうか。私のあんな姿やこんな姿を妄想して激しくいきり勃っていたのだろうか。彼の下半身は腰に巻いたタオルから今にも飛び出しそうだ。彼は目を剥いて私を見た。

「さぁ、早くシャワーを浴びてきなよ。僕はベッドで待ってるから。ベッドで今まで誰にも見せなかった本当の俺を見せてあげる。君の吸い付きたくなるような肌を残らず吸い取ってあげるよ」

 私は彼に向かって微笑んで浴室へと向かった。やっと二人は結ばれる。お互いの全てを曝け出して情熱的に愛し合う二人。そんなシーンを想像していると一人で勝手に果ててしまいそうになる。だけど慌てないで彼がベッドで待ってるじゃない。真っ赤な顔で私に吸い付きたそうな顔をして私を待ち焦がれているじゃない。ダメよダメよ、まだラブジュースを漏らしちゃダメよ。だけど私は我慢が出来なかった。火照りに耐えられなかった私はいきなりシャワーを止めて裸のまま浴室を飛び出した。そしてまっすぐ彼のいるベッドの部屋のドアを開けた。

 私はドアを開けてベッドにいる彼の胸に飛び込むはずだった。しかし彼がいないのである。彼の代わりにベッドにいたのは真っ赤っかなバカでかいタコだった。チクショウ!まさかいざという時になって怖くて逃げだのか童貞め!私は怒り狂ってベッドに乗っかっているタコをぶん回した。するとタコの奴が喋り出したではないか。

「俺だ!俺だよ!さっき言ったじゃないか!ベッドで本当の僕を見せるって!これが僕なんだ!正真正銘の僕なんだ!君も本当の君になれよ!タコの僕を愛するんだから、君は多分イカだろうね。さぁ、君も本当の姿を見せてくれ!タコとイカ。最高のカップルじゃないか!……おい。何してるんだ君。なんだそのボール型の沢山ある鉄板は!それはたこ焼きを作る鉄板じゃないか!おい!包丁なんか持ち出して何してるんだ!やめろぉぉ〜!」

「やかましい!タコのくせに人間口説きやがって!罰としてたこ焼きにして食ってやるわ!」



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