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短編

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2023年1月の記事一覧

雪国慕情 〜雪降る街に芽生えた天かす生姜醤油全部入りうどんの絆

「オラ!酒出さんかい!酒を三回出すんだよ!」 「お客さん、勘違いしないでください。ここは…

17

動かないこと

 動かないことこそ外部から自分を守る最善の方法だ。自分が動けば自然外部と接触する事になる…

15

アレクサンドリア図書館にて

 アレクサンドリア  古代の瞑想  すでに焼き払われた場所  だが想像の中では  永遠に…

18

戦場の歌姫

 戦場で死ぬってことは決して栄誉な事じゃない。ただただ惨めなものでしかない。後方の町で、…

16

ピカソよりも早熟だったある画家の生涯

 オリヴィエラ・ルイスはとんでもなく早熟な画家であった。彼は十歳で絵画の技法をほぼ習得し…

28

託された未来

「君たちの世代がこの世界を変えるんだ。僕らが出来なかった事を君たちが実現してほしい。君た…

16

泣きオーケストラ

 今谷中家で一昨日に亡くなった谷中耕作の葬儀がしめやかに行われていた。僧侶がお経をあげている中、その後ろで手を合わせてた家族は耕作の元気な頃の遺影を見て泣き出した。ああ!痛い抗がん剤をあんな頑張って受けたのに!なんで、なんで死んでしまったの!声を上げて泣く妻の幸子や家族を見て他の参列者も涙を流した。  お経が終わると司会がでは故人と最後のお別れをと言うと家族や参列者たちは花を持って棺桶のそばによった。まだ生きているかのように見える耕作。しかし彼はもうこの世にはいないのだ。長

主人公は遅れてやってくる

 物語のバスに主人公を真っ先に乗せるなんてナンセンスだ。まだメイクも出来ていない彼女をい…

19

昔の味

 とある人気ラーメンの暖簾をくぐったらいきなり怒鳴り声が聞こえてきた。私は何事かと顔を上…

24

高熱大陸『フォルテシモに翔ける 〜カリスマ指揮者大振拓人の現在』

 今夜の高熱大陸は今クラシック界で最も注目されているカリスマ指揮者大振拓人さんを特集しま…

24

最期のエッセイ

 人気エッセイスト柿杉留雄のエッセイが最近急に話題になった。それはエッセイの内容もそうだ…

30

クシャクシャになった紙は二度と元に戻らない

 妻はクシャクシャの離婚届を夫に突きつけて言った。 「こんなことをしても私たちの仲は二度…

18

大阪でかすうどんを食べた。

 大阪。敗残者の巣窟。世のはみ出しものが落ち延びてくる街。徘徊する連中は夢破れた連中ばか…

17

二度と見れない光景を目に焼き付けて

 いよいよお別れの時がきた。この場所ともしばらくお別れね。楽しい時はあっという間。ここで見た景色。ちゃんと目に焼き付けていくよ。同じ景色は二度と見られない。青春が戻ってこないように、次に同じ場所で見る風景は全く別のもの。だから消えないようにこの目に焼き付けていくんだ。  行き交うのは私と同じように元の場所へと戻って行く人たち。今から旅立つ人たち。迎えにきた人たち。様々な人たちがターミナルを歩いている。再会する恋人たち。私の前でキスをする。なんて馬やましいんだろう。私には誰も