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コドク

たとえば。お蕎麦をすすりながら流れ星のことを考えているとき
自由を感じる。孤独とともに。
流れ星とお蕎麦に引き裂かれて、はじまる孤独
ひとつの時間が二重になって、二つに引き裂かれた瞬間の出会わなさが、自由の可能性

自由の可能性が襲いかかってくるとき
あなたは孤独になる
自分もその可能性の一部にすぎないと思うとき、さらに孤独は深まる
孤独とは出会いだ。ただし出会わずに出会うこと。なぜなら出会いとは隔たりを感じることにほかならないから

お蕎麦を味わいながらこれを流れ星の味だと思ってみると謎がはじまる。この舌の上の感覚とはるか彼方の夜空のあいだに、無限の距離がひらかれる

お蕎麦と流れ星はあなたのなかで出会わない
たとえ二つを結びつけるものが、出会わせてくれそうななにかが、見つかったとしてもそうなのだ
むしろ二つが結びつくほど、募っていく寂しさがある
この出会いは完結しないだろうという予感が、予感のままで、濃くなっていく
この二つの出会いに、あなたが出会うことはないだろう。その出会いには終わりがないから

物語のはじまり
完結しない出会いの、
出会わなさのなかでの、出会いの模索

たとえば、このお蕎麦と流れ星のあいだの無限の距離を埋めたくて、言葉は脳裏を流れていく。言葉たちの織りなしていくその流れは、だけどたどり着きたかった場所を忘れてしまう。

ある物語との別れが名残惜しいとき、それは、もっとそばにいたい、触れていたいから
ということはまだ焦がれているなにかがどこかにあり
それは何だろうと考え、それを感じていることだけ感じとめる
感じているからこそ言葉にならない
忘れられないから、言葉にならない

忘れつつ、かつ忘れないでいようとし、
なにかを忘れているのを忘れないまま
そうやって隔絶して孤独であるとき、自由はそばに感じられた
星空のように無限に遠いそばに

こんなにも近くこんなにも遠い。これが、可能性の触感。自分だけに宛てられた自由と、だからこその孤独を、忘れつづけ思い出しつづける。

忘れられないから思い出せない
忘れたくないから思い出したくない
忘れたい、忘れたくない
もっとキレイな形で出会えることを夢見ている
もっとキレイな形で忘れられるなら
もっとキレイな形で分かり合えないでいたい


ありがとう。


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