川野夏実 オランダのグラフィックノベル翻訳者

オランダのグラフィックノベルを翻訳しています。『ゴッホ最後の3年』『小さなベティと飛べ…

川野夏実 オランダのグラフィックノベル翻訳者

オランダのグラフィックノベルを翻訳しています。『ゴッホ最後の3年』『小さなベティと飛べない白鳥』(ともに花伝社)の訳者。 『ハチクマの帰還』翻訳出版クラファンプロジェクト挑戦中。 http://thousandsofbooks.jp/project/honeybuzzard/

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オランダのグラフィックノベルを日本に広めたい!

はじめまして。 オランダのグラフィックノベルを翻訳している川野夏実です。 願望も込めてグラフィックノベル翻訳者と名乗ってはいますが、訳書は今のところ2冊、そして自分の好みの作品に知識が偏っています。 この機会にオランダ語圏のグラフィックノベルの世界を幅広く勉強してみることにしました。そのアウトプット先としてNOTEでみなさんと情報をシェアし、グラフィックノベルのファンになってくれる方を増やしていけたらいいなと思っています。 どうぞよろしくお願いします。

    • オランダにもあります。マンガで読む〇〇。

      絶賛、クラファン中『ハチクマの帰還』作者エメー・デ・ヨング(Aimée de Jongh)の最新作(2024年9月発売)がイギリスの小説『蝿の王』(ウィリアム・ゴールディング)のグラフィックノベル化作品ということで、オランダでは他にどんな文学作品がグラフィックノベル化されているか、まとめてみました。 オランダにおいて、文学作品のグラフィックノベル化(verstripping)は新しい現象ではなく、1950年代から古典作品のグラフィックのノベル化が行われてきました。 ディッ

      • 6月7月オランダの漫画・アニメイベント

        ハーレムでのコミックフェスティバルが終わったと思ったら、他にもオランダでは漫画関連のイベントが色々あるようなのでご紹介します。 2024年6月7日ー9日。 オランダのアニメ・ゲーム・コスプレファンに向けて行われるアニメコンです。 日本のアニメのイベントとしてはオランダ最大規模で、大使館からもブースが出展するほど。日本からも有名なコスプレーヤーさんがゲストとして参加されます。 2024年6月15日 ユトレヒトの図書館で行われるオランダコミックのマーケット。地元のコミックアー

        • クラファン開始に寄せて。作者エメー・デ・ヨングと緊張の初対面!

          いよいよ今日から『ハチクマの帰還』翻訳出版クラファンがスタートします。 先日、ハーレムのコミックフェスティバルを訪れ、はじめて作者エメー・デ・ヨングに会いました。 日本語版の翻訳出版のための手段としてクラウドファンディングを使うことを、作者がどう思っているかわからないので(もちろん出版社と契約する時点で作者の了承は取れているのですが)、とても緊張しました。 いざ、自分の番が来て、 『ハチクマの帰還』日本語版の翻訳者です。お会いできて嬉しいです。 と震え気味の声で挨拶

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        オランダのグラフィックノベルを日本に広めたい!

          自らの死に直面した彼は最後にマンガで人と繋がることにした。「ソウル・フード・コミックス」

          オランダのグラフィックノベルについてリサーチしていたら、ある出版社のホームページが目に止まりました。 Soul Food Comics(ソウル・フード・コミックス) その出版社の設立者はフース・ファン・ソンスベーク(Guus van Sonsbeek)。彼はマンガ好きの子供でした。しかし、大学に入る頃には、次第にマンガへの興味が薄れ、コンサルタントとして働くようになります。 2014年、彼はガンの告知を受けました。その時、彼は、自分が漫画の世界から離れている間にも素晴ら

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          オランダ最大のコミックフェスティバル、今年開催!

          オランダ語圏最大のコミックフェスティバル、ハーレム・コミック・デイズ(Stripdagen Haarlem)が今年、開催されます。 このコミックイベントは2年に一度、偶数年に行われています。今年は2024年6月1日と2日の2日間に渡って、ハーレム中心市街地の会場に、約60名のオランダを代表するコミックアーティストと出版社、ファンたちが集結します。 1992年に始まったこのイベントは、サイン会、展示会、見本市、講演、コンサート、フィルム上映、子ども向けワークショップ等…無料

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          私は女性であり、母であり、戦場で働く外科医である。ユディット・ファニステンダール『ペネロペ』

          今回は、フランドルを代表するグラフィックノベル作家にユディット・ファニステンダールの作品を紹介します。 彼女はたくさんの素晴らしい作品を発表していますが、その中でも、「この作品を出すまでは諦めらめるわけにはいかない」と思っているのが『ペネロペ』です。 ペネロペはかれこれ10年間、ベルギーと戦争地域を行き来しながら外科医として活動してきました。 物語冒頭、ペネロペがシリアの戦禍で女の子を救おうと奮闘している最中、彼女の13歳の娘はひとり、部屋で初潮を迎えます。不在の母親の

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          世界で最初の女性哲学者ヒッパルキアの物語。バーバラ・ストック『哲学者と犬と結婚と』

          『ゴッホ最後の3年(花伝社・2018年)』の作者バーバラ・ストックの最新作『哲学者と犬と結婚と』も、「これが日本に紹介できるまで諦めるわけにはいかない!」と思っている作品の一つです。 紀元前4世紀のギリシャに生きた、最初の女性哲学者ヒッパルキアの物語で、すでにヨーロッパ・アジア7ヶ国語へ翻訳されています。 紀元前4世紀、アレクサンダー大王の時代。当時、女性は男性の従属物であり、動物は人間よりも価値の低い存在、また奴隷という身分が当たり前に存在していました。 ギリシャ北部

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          桃源郷を求め無人島に移住したドイツ人医師が見たものは…。ミヒャエル・オルブレヒト『ガラパゴス』

          今回は、オランダNRC紙で発表された「2023年グラフィックノベル・ベスト10」という記事からのご紹介です。 このランキングではオランダに限らず、フランスやアメリカのグラフィックノベルも対象になっていますが、オランダ語圏の作品で最もランキング上位に置かれたのが、今回ご紹介するフランドルの作品『ガラパゴス』(第3位)です。 1929 年、ドイツ人医師フリードリヒ・リッターとそのパートナーは、理想の生活を求めて、ガラパゴス諸島の一部である無人島フロレアナ島に移住します。彼らが

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          国際的に活躍する5人のオランダ人グラフィックノベル作家

          フランスやベルギーに比べ、オランダのグラフィックノベル市場はいまだ限られています。補助金なしで、漫画家として生活できている作家はごくわずかです。 それでも、グラフィックノベルの世界で国際的な注目を集めている作家たちがいます。今回はその中から5人の作家の名前をご紹介します。 ミラン・フルシング(Milan Hulsing) エメー・デ・ヨング(Aimée de Jongh) バーバラ・ストック (Barbara Stok) マルグレート・デ・ヘーレ(Margreet

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