見出し画像

その願いを支えにして

 今はこんなにも歩けるようになって、きっとどこへだって行けるようにもなって、それでもどこにも行けずに停滞するこの気持ちは、なんだろう。

 毎日同じ足取りを辿って、昨日の自分を追体験するような時間を過ごし、気がつけば一日は終わりを告げてしまう。

 変わりたい、とも、変えなければ、とも思えずに日々は積み重なり、もやもやした何かが腹の底に溜まっていくものの、一晩も寝ればいつの間にか霧散して、あとは記憶を辿るだけ。

 このままでいいんだろうか。

 このままで、いいのだろう。

 そんな矛盾した言葉が双子のように頭に直接ささやいては、なんでだろう。何も変えるつもりも、変われるつもりもないというのに。今はこんなに、もやもやが吐き出されもせずに、吐息と共に目の前に現れてくる。そうしてまた呼吸すると、体の中に戻って突いてもくる。

 本当に、嫌なものだ。

 それでも、そうそう生活なんて変えられるものではない。いや、変えられるのかもしれない。途方もないほどの暮らしをしている方だっているのだから。想像もつかないような思考で生活をしている人もいるのだから。

 それでも、私には……

 空を見上げれば澄み切った青空で、少しずつ深まっていく季節のエアポケットのように、あまりにも過ごしやすい空気に心地よささえ感じる。

 どこに行ったって、この空は変わらないというのに。わざわざ他のところへ行く必要もない。と、そう思っていたのだけれど。

 この空の下はつながっていて、想いは積み重なっていて、それこそどこでも同じなのだとは思う、けれど。きっと、その場所その場所で見上げる空の色や想いは、その土地に根ざした何か、違う何かを魅せてくれるのかもしれない。そんなふうに思ったのは、いつごろであったであろう。

 そんな景色を見てみたい、と願う。

 願うばかりでは叶わないことは知っている。

 けれど、私の停滞したこの心持ちでは、行動にまで移すことが至難で……ううん。それはきっと、ただの言い訳で。

 今は、ただ、その願いが私を支えてくれている。

 その支えがあるから、こうして生きていられる。

 きっと願いが叶ってしまったら、私は、支えを失って歩いていけはしないだろう。

 そんな私の新しい言い訳は少し様にもなっていて、拙い彩りを見せてもくれている。

 と、信じて、いる。

 はぁ。

 ため息はどこまで昇っていくのだろう。それは、どんな想いを乗せているのだろう。

 明日からもおんなじ。

 同じことの繰り返し。

 それに変わりはない。

 いつまでも停滞して、代わり映えのしない毎日。

 そのまま、どこまで、いつまで、歩いていけるだろう。

 今はとりあえず、こんな願いを支えにして。

 もやもやの煙が天にまで昇るまでは。

 歩いて、行ける、かしら。

 

いつも、ありがとうございます。 何か少しでも、感じるものがありましたら幸いです。