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常識

 そんなに常識がない人だとは思わなかった。

 ラジオから飛びこんできたような言葉が再生されたと思ったら、反射的に反芻してしまったーーたぶんお昼に食べたパスタを飲みこんで、一緒に栄養になったかのようである。

 残念ながら思い出してしまったその言葉はそのまま全身を駆け巡り、すっかり私の一部になってしまった。

 ただ、幸いにも思い出したのはその言葉の袈裟だけで、誰に、どんな場面で言われたのかも思い出せなければ、そのときの私の状態や気持ちもまったく思い出さなかった。

 改めて脳裏に浮かんだその言葉を眺めてみる。なんとも腹立たしい。全然記憶にはないけれど、きっとそのときには何にも言い返せなかったに違いない。忘却の彼方に放り投げたくらいーーだと思われるから。

 そんなもの、押しつけられても困る。常識? そんなふうに相手を不快にさせる言葉を使えるのは常識なの? それとも、あなたが満足することだけが常識? あなたが知っていることが常識って? ふざけるのも大概にしてほしい。

 何とでも、言い返してやるに違いない。今であれば。

 なんで今さらそんな言葉が湧いて出てきたのかわからないけれど、ろくなことではない。常識なんて、それぞれの幻想に違いないというのに。そんなものを押しつけられたくはない。

 はぁ。

 ただ、私が思う常識って、そういえばなんだろう。

 そう考えてみると、意外とわからない。

 常識、というより、私の体感と体験の中で根づいた生活、とでも言うものだろうか。それのほうがしっくりくる。

 社会を常識と呼ぶのなら、たしかに、私は適応していないかもしれない。

 そういう意味では、常識がない、と言われても仕方ないのかしら。

 なんか、納得いかない。

 

いつも、ありがとうございます。 何か少しでも、感じるものがありましたら幸いです。