さぁ、戦いはこれからだ。
昨夜。土曜日の夜。
今日買ってきたばかりのバリカンで、妻に刈ってもらっている丸坊主の息子たち。
「なんか、上がデコボコしてる」
「わかってるって!これからやるから」
洗面所は騒がしいが、覗いてみると、みな笑顔にあふれている。
***
長男は、高校二年生。
秋の新人戦ではじめてのベンチ入りを目指している。
「ベンチ入り」は50人以上いる部員の中で18人。狭き門。
長男は外野手。外野は、レギュラーがほぼ確定していて、控えポジションを前回背番号9だった選手とあらそっている。
土曜日に二か所で練習試合が行なわれるという。なかなか背番号が発表されない中、Aのメンバーが行うホームグラウンドでの練習試合か、Bのメンバーの『小樽』での練習試合か。
土曜日に、「ホームグラウンドのメンバーに選ばれれば、背番号をもらえる見込みがある」と、長男は見立てを立てていた。
***
金曜日の夜。
長男が帰ってきて、すぐに言った。
「明日、小樽だった」
「えーーー?背番号もらえなかったってこと?」
「いや。小樽なんだけど・・・」
おもむろにバックから出した「17」と書いた背番号。
ニコニコ笑顔の長男。
長男に抱きつく妻。
長男は、背番号、ベンチ入りをついに勝ち取った。
「小樽の練習試合では、Bチームを引っ張れって」
なるほど。ベンチメンバーはそれぞれの試合で主力としてやる、ということのようだ。
***
土曜日の夜。
中学一年生の次男も、翌日の日曜日に新人戦を控えている。
二年生中心の新人戦。背番号は29をもらった。
ベンチ入りは、その試合ごとに25人が選ばれる。
次男は、練習から帰ってきて、すぐに言った。
「明日、ベンチ入り25人に呼ばれた」
一人だけ入れ替えがあり、ベンチ入りになったという。
ニコニコ笑顔の次男。
次男に抱きつく妻。
「よし!バリカン行くよ!」
妻と、息子たちは、ニコニコしながら、洗面所に消えていった。
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